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幹事長挨拶

進歩と調和

渡辺 正信
(産業技術総合研究所)

渡辺幹事長写真
 人類の進歩と調和。1970年、高度成長期後半の大阪万博で、高尚なテーマが掲げられ、日本はその後も順調に経済成長をとげた…。
 昨年は激動の年だった。1年ほど前の2011年3月11日、未曾有の大地震とそれによる津波、原発危機が東北地方を襲った。現場の状況が映像としてリアルタイムに日本中、世界中に伝えられ、多くの人々に現状を実感させた。そのことが救援・支援、その後の復興等の着手を迅速に企画・実施するための欠かせない基盤となったと思う。この作用には、映像の技術、放送を含めた高度な情報通信技術が欠かせない。鮮明な映像が、それもプロだけでなく多くの人々が撮った鮮明な映像が、伝えられた。これによって私たちは現場の様子を臨場感を持って感じることができ、何かせねばとの気持ちにすぐになれるとともに、的確な対策を立てることができ、ボランティア活動の迅速な立ち上がり等にも大きく役だったと想像する。ここに必要であった撮像・表示・情報伝送の技術に光技術は大きく役だってきた。
 他の大きな問題としてユーロ危機があった。その前のサブプライムローンに端を発する経済バブルと崩壊。経済がグローバル化し、情報通信技術の発達により、それがさらに助長されてますます活発になった。一方で、それが崩壊する時のスピードもこれまた驚異的に早く、それが止められなかった原因の一つに見える。
 情報通信技術、映像(ディスプレイ、カメラ)の技術は、光技術が作り出し、発展させてきた大きな技術の一つである。これらのみでなく、科学技術の多くは昨年の例にあるように、大きな貢献とともに、大きな問題も引き起こす。もちろん、科学や技術の両面性は、大昔からあった。しかしながら、科学技術のメリットが巨大化、グローバル化、影響伝播の高速化が進むとともに、負の面も大きく、広く、高速になり、それが手に負えない、あるいはフィードバックが間に合わない場合が出てきたのが近年の状況のように感じる。この先は、技術の立ち上がり時期はともかく、社会への普及段階では、常に制御手段を並行して作りこんでいくことがますます重要になると思う。それでこそ持続的な発展が可能になる。
 成長神話の言葉で表されるように、長らく進歩の方に社会の視線が向いていた。これからは調和への比重を高めねばと思う。そうでなければ、更なる成長も難しくなる。多くの人が同様の意識と思うが、どのように実現し、新しい時代を作っていくかはこれからである。科学・技術の世界だけで前進できる問題ではないが、常にその意識を持ち続けて事にあたれば道は開ける。
 人類の進歩と調和…。ますます世の中への影響を強めている科学・技術の担い手として、これが実現されるように邁進したいものである。

(2012年4月就任)