「新材料が拓くフロンティアデバイス

基盤材料、プロセス、からプロトデバイスまで」

奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 冬木 隆

 

 去る平成11年7月7日(水曜日)、奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科において、応用電子物性分科会研究会7月例会が開催された。関西で開催される研究例会であるということで、内容に関して幹事会で検討され、シリコンカーバイドやダイヤモンド薄膜などワイドバンドギャップ半導体を中心とする新しい材料系に焦点をあてることになった。担当幹事(中川 格(電総研)、藤田 忍(東芝)、冬木 隆(奈良先端科学技術大学院大学))が協議し、下記のように基盤材料からプロセス、デバイスの話まで総合的に現在の研究の進展状況についての講演を頂くことになった。材料系は異なるものの、材料開発からデバイス応用までを目的とした研究指針は同じである。研究分野の枠を超えた議論がなされたことが大きな特長であり、興味深い例会となった。参加者は一般26名学生19名と、講演者の4名の方を含めると49名に上った。とくに、一般の内19名は非会員であり、関西地区での応用電子物性分科会の活動をさらに広く展開させる上でも有意義であった。

 講演はいずれも次世代の新機能デバイスを目指して、材料開発、プロセス技術展開、さらにはプロトデバイス、と各研究分野での最前線で活躍しておられる第一人者に講演をいただいた。プログラムは下記の通りである。

「新材料が拓くフロンティアデバイス ――― 基盤材料、プロセス、からプロトデバイスまで」

 

  1. 「高品位ダイヤモンド薄膜の作製」
    • 塩見 弘 (京都工芸繊維大学)
  2. 「ワイドギャップ半導体SiC − デバイス作製プロセスの現状と課題」
    • 杉本 博司 (三菱電機)
  3. 「高品位ダイヤモンド薄膜と高移動度p型ドーピング」
    • 大串 秀世 (電総研)
  4. 「Siナノクリスタルを用いた新機能デバイス − 物性評価と新機能発現」
    • 金光 義彦 (奈良先端科学技術大学院大学)

まず、究極のワイドギャップ半導体として注目されているダイヤモンド薄膜に関して、1.でホモエピタキシャル成長に長年にわたって研究成果を挙げている塩見氏より、結晶成長過程の解析と結晶性の関係に関して理論的な解析まで含めた講演があった。さらに、得られた高品位膜を用いたプロトデバイスの紹介もあった。さらに3.の大串氏によるダイヤモンド薄膜の詳細な物性解析とデバイス展開へ向けての電子物性制御の先進的な成果とあいまって、ダイヤモンドを用いたデバイスの急進展が期待される。2.における杉本氏によるシリコンカーバイドのデバイスプロセスの講演は、実用化間近い現在の技術課題とその解決の展望について重要なポイントを明快に示した。4.では、金光氏が、現在最も広く使用されている半導体Siの新規物性の発現と従来にない機能デバイスに向けた研究進展について講演した。ナノメータオーダの制御性の良い結晶作製が鍵となるが、従来の物理的限界を超えた新物性は注目される。現在、多くの人材を割き活発に行われている研究分野から少し離れ、新材料探索や新機能デバイスの開発を目指す研究はある意味では地道ではあるが次世紀に向けた重要な研究テーマであると考えられ、長期的展望に立った継続した研究が望まれる。

 なお、今回は大学で開催されるという事情もあり、在学生に対する特別講義として関心のある学生の聴講を認めた。後日、簡単なレポートを提出させたが、普段の授業では聞けない最先端の研究発表に大きな刺激を受けたようである。幹事長を始め便宜を図っていただいた関係者に感謝する。