- 応用電子物性分科会幹事長就任にあたって -

            徳島大学 大学院ソシオテクノサイエンス研究部  井須 俊郎

 この度2010年3月から応用電子物性分科会の幹事長を務めさせて頂くことになりました。伝統ある本分科会の幹事長として非常に光栄に思うとともに、その重大な責任を感じています。本分科会の発展に精一杯尽くさせていただく所存ですので、会員の皆様方のご指導、ご協力のほどよろしくお願いいたします。幹事長就任にあたって分科会活動をふり返りながら今後の分科会活動についての考えを述べたいと思います。

 応用電子物性分科会(通称「応電」)の活動の中心は年5回開催の研究例会です。研究例会の開催に合わせて、分科会会誌の発行を行っています。もうひとつの活動の柱は応用物理学会講演会におけるシンポジウムの開催です。春、秋の講演会のどちらかで年1回行っています。さらに春の応物講演会開催時には「会員の集い」として講演会を行っています。その他に不定期ですが、スクールの開催も行っています。これら研究例会などのテーマは、年3〜4回行っている幹事会において、会員の皆様にとって有意義で興味深いものは何か、今すぐ役立つもの、また将来的テーマとなるもの、異分野との境界領域や新分野も視野に入れ、熱心な議論によって決めています。

 さて、本分科会の歴史をふり返りますと、電子放射研究会(1942年に設立)に始まり、1960年に応用物理学会の分科会となり、1963年に応用物理学会応用電子物性分科会と改称して現在に至っています。その間、日本の電子デバイス研究を牽引し、固体素子材料コンファレンスの設立の母体になるなど、エレクトロニクスの発展とその歩みをともにし、数々の応用電子物性の分野の発展に寄与してきました。応用電子物性という概念も多彩な領域に広がって多くの専門分野が誕生し、新たな他の分科会や研究会も産まれています。

 本分科会の伝統的なテーマは、半導体の電子デバイス、光デバイス、太陽電池などに関するものですが、例えば昨年では、メタマテリアル、グラフェンなどのトピックス的なテーマを取り上げています。また、テーマの取り上げ方も、有極性・非極性面上の窒化物半導体光デバイスといった専門に特化したテーマや、フレキシブルデバイス、次世代照明デバイスといったように、材料で区分けせず半導体や有機材料からなる様々なデバイスを含めた技術展望、あるいは、ナノ加工技術や、エネルギーハーベスト技術といったように技術面から見た切り口で取り上げたテーマなど、いろいろな観点でテーマを企画してきています。

 テーマの企画にあたっては、(1)基礎となる原理原則(物理)があること、(2)出口イメージ(応用分野)が明確であること、(3)実現方法(手段)の議論ができること、の3点を満足するよう心がけています。これは、歴代の幹事長の先生から引き継いできているものですが、本分科会の特徴を示すものであると思います。また、本分科会は応用物理学会講演会における固有のセッションを持たないという特徴があります。このことは、幅広い分野にわたって様々な角度から研究テーマを取り上げる自由度をもつものですが、一方で、専門分野として見えにくく、応用物理学会の会員からみて分科会としての存在が分かりづらくなっているかとも思います。

  応用物理学会は一層充実した活動をおこなうため新公益法人に移行しようとしており、分科会もまた、それぞれの役割を明確にして活動することが求められていると思います。伝統ある本分科会の特徴を大切にして、応用電子物性に関わる研究を深化、発展させるととともに、境界領域や新しい学際領域を開拓する役割をも担うよう、上記のテーマ企画の3つの要素に基づいた分科会活動を行っていきたいと思っています。このため、これまでも比較的関係の深い結晶工学、薄膜・表面物理、シリコンテクノロジー、有機分子・バイオエレクトロニクスなどの分科会を始め、他の分科会や研究会との協力をさらに深め、講演会セッションや国際会議などの企画などにも貢献していきたいと考えています。はじめに述べた「会員の集い」では、いわゆる研究報告ではなく、日頃は聞けないような体験談も交えて紹介していただく講演会を企画しています。これまで、産学連携プロジェクトや大学発ベンチャー起業や、MOCVD技術の開発の歴史、エレクトロルミネッセンスによる太陽電池の評価技術などに関する講演会を行ってきました。通常の学術講演とは少し違った内容の情報提供をする場として、このような活動も非常に重要であると思っています。会員の皆様にとって興味深く有意義である「会員の集い」も分科会活動の魅力的特徴として育てていきたいと思っています。

 多くの応用物理学会の会員に本分科会の活動を知っていただくことは重要です。上に述べたテーマ企画の3つの要素は応用電子物性という分野に限らず、広く、応用物理学の理念そのものであるようにも思います。分科会の活動の発展には、若い人とともに、いろいろな分野の会員の加入も欠かせないと思います。研究例会やシンポジウム企画などを通じて、本分科会の魅力を知っていただき、多くの方に会員となっていただきたいと考えています。

 より魅力的で有意義な分科会活動のために、会員の皆様のご意見、ご提案を取り入れていきたく思いますので、幹事長あるいはお近くの幹事やホームページを通じてお知らせいただきたく思います。

 会員の皆様、幹事の皆様のご支援ご協力のほど、どうぞよろしくお願いします。

2010年4月


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