幹事長就任にあたって

 

名城大学 平松美根男

 


この4月より2年間、プラズマエレクトロニクス分科会の幹事長を務めさせていただきます名城大学の平松です。本分科会会員は500名を超え、2020年には本分科会発足30周年を迎えます。この30年間でプラズマエレクトロニクスの扱う対象も産業界からの要請も随分様変わりしました。設立当時のプラズマエレクトロニクスの理念を踏襲しつつ、時代の要請にも応え、若手研究者も伸び伸び活躍できる環境作りを心掛け、本分科会の発展に向けて精一杯努めさせていただきます。

 

プラズマエレクトロニクス分科会の前身であるプラズマエレクトロニクス研究会は1985年に発足し、それと同時に、応用物理学会講演会の「放電・プラズマ・核融合」分科を発展的に解消して、「プラズマエレクトロニクス」分科が設けられました。歴代委員長(堤井信力先生、後藤俊夫先生、加藤勇先生)の御尽力により、応用物理学会講演会における分科会シンポジウムや総合講演をはじめ、プラズマプロセシング研究会(SPP)や光源物性とその応用研究会を通して現在の分科会に移行すべく十分な地盤が構築されました。当初数十名であった会員数も5年間で300名に迫り、プラズマエレクトロニクスが包含する分野の広がり、会員数の増加、および活動の拡大に対応すべく、1990年よりプラズマエレクトロニクス分科会に改組されました。設立発起人は、前述の歴代研究会委員長と橘邦英先生(分科会設立準備委員長・初代分科会幹事長)です。分科会昇格後は、人材育成も重要視し、若手研究者やこの分野に新しく参入した研究者を対象に、プラズマエレクトロニクスの基礎や現状について実習を含めて研修して貰うことを目的とした講習会が企画され、現在のプラズマエレクトロニクス講習会やインキュベーションホールへと引き継がれています。さらに、異分野の研究者を交えた討論を行い、新学術領域の創成を目指すべく新領域研究会が2008年より継続的に実施されています。

 

LED照明の台頭により光源物性とその応用研究会は一旦その役割は終えましたが、1984年に始まったプラズマプロセシング研究会(SPP)は現在も続いています。次のSPP36(実行委員長:高知工科大学・八田章光先生)は20191月に四国・高知市で開催されます。SPPはほぼ3年毎に反応性プラズマ国際会議:International Conference on Reactive Plasmas (ICRP)として国際化され、Gaseous Electronic Conference (GEC)Europhysics Conference on Atomic and Molecular Physics of Ionized Gases (ESCAMPIG)との共催で、ハワイやパリなど海外で開催されたこともあります。今度はInternational Conference on Phenomena in Ionized Gases (ICPIG) が日本にやってきて、20197月に札幌市でICPIG-34/ICRP-10ICRP組織委員長:白谷正治先生、現地実行委員長:佐々木浩一先生)が開催されます。

 

本分科会設立時の「プラズマエレクトロニクス」が包含する分野は、(1)気体放電現象、プラズマ中の電子原子分子過程、光過程やそれらの診断技術、(2)光・プラズマプロセス、気体レーザ、光源、その他のプラズマの応用技術の基礎などでした。現在は、研究対象も随分様変わりし、大気圧プラズマを使った研究が盛んになるなど、応用範囲もエネルギー・環境・医療・農業へと拡がっています。一方で、分科会設立時の目的「プラズマエレクトロニクスに関する研究の推進および技術の向上をはかること」は普遍であり、より広く応用物理学会会員の参加を得て、組織的な体制の下に先見的な活動を展開し、かつきめ細かく会員の要望に応えうる会の運営を行っていくという設立時の趣旨を踏襲し、分科会発足30周年に繋げて行きます。