選考委員長:分科会幹事長
金藤敬一
今回、論文賞8件、奨励4件の応募がありました。沢山のご応募を頂き有難うございました。厳正な審議と選考の結果、下記の方々が論文賞および奨励賞を受賞することになりました。受賞者へ栄誉を称えますと共に、残念ながら受賞の対象にならなかった方々に感謝します。
今回は例年になく多くの応募者があり、いずれも優れた論文で先駆的で質の高い研究成果として高い評価を受けました。しかし、特に論文賞では8件の応募に対して1件の受賞で、厳しい選考結果になりました。これは研究のオリジナリティーと有機分子・バイオエレクトロニクス分野への貢献の実績が評価された結果であります。また、奨励賞では、4件の応募者に対して2名の受賞者があり、特に研究の新規性と独創性が評価された結果と考えています。
来年も多数の果敢な応募をお待ちしております。
1.有機分子・バイオエレクトロニクス分科会論文賞 1件
石井久夫 (いしい ひさお)(千葉大学先進科学研究教育センター教授)
著者: Hisao Ishii, Kiyoshi Sugiyama, Eisuke Ito, and Kazuhiko Seki
論文:“Energy Level Alignment and Interfacial Electronic Structures at Organic/Metal and Organic/Organic Interfaces”,
Advanced Materials, 11, (1999) 605-625.
主な受賞理由:
本論文は、有機半導体の界面電子構造についてまとめた優れた総説論文であり、世界的に大きなインパクトを与えてきた。初期の研究成果であるが、現在では常識ともなっている有機/金属界面の電気二重層の存在を明らかにしたものであり、昨今の有機デバイスの発展に大きく貢献した。
2.有機分子・バイオエレクトロニクス分科会奨励賞 2件
(1) 間中 孝彰 (まなか たかあき) (東京工業大学大学院理工学研究科 助教 )
著者 :Takaaki Manaka, Eunju Lim, Ryousuke Tamura, and Mitsumasa Iwamoto
論文:Direct imaging of carrier motion in organic transistors by optical secondharmonic generation,
Nature Photonics 1, 581-584 (2007) Published online: 1 October 2007.
主な受賞理由:
有機トランジスタ中のキャリアの動きを可視化した世界で始めての論文である。キャリアのつくる局所的な電界分布に起因する光第二次高調波(SHG)に着目し、その分布と時間的変化から、素子中のキャリア移動を直接観測した。これらの成果は、有機デバイスの動作特性の解明や性能向上に大きく貢献すると考えられる。
(2) 酒井 正俊 (さかい まさとし)(千葉千葉大学大学院工学研究科 助教)
著者: Masatoshi Sakai, Masakazu Nakamura, and Kazuhiro Kudo,
論文: “Organic nanochannel field-effect transistor with organic conductive wires”
Applied Physics Letters, 90, 062101 (2007).
主な受賞理由:
TTF-TCNQの導電性を有する電荷移動型錯体をナノ配線として用い、ナノワイヤの先端に存在するTCNQ半導体の電子特性を明らかにした興味深い論文である。これらの有機半導体/有機導電体の界面および接合は、今後の有機エレクトロニクスの発展に大きく寄与すると考えられる。
以上
|