講演題目

表面・界面制御によるシリコン太陽電池の高効率化

講師

大阪大学・産業科学研究所
小林 光

要旨

 本講演では、シリコンダングリングボンド等の欠陥準位を消滅させると同時に金属汚染を除去することのできる欠陥消滅型半導体洗浄法、及び高性能な極薄酸化膜(SiO2)/Si構造を120℃以下の低温で形成できる硝酸酸化法によるSi太陽電池の高性能化について解説する。
 欠陥消滅型洗浄法では、多結晶シリコン等のシリコン材料を極低濃度のHCNを含む水溶液に室温で浸漬するだけで、金属汚染が除去されると共に欠陥準位が消滅される。例えば、銅で強制汚染したシリコンを濃度0.027%の欠陥消滅型洗浄液に室温で10秒浸漬するだけで、銅汚染が完全に(検出限界である~3×109原子/cm2以下に)除去される。また、鉄、ニッケル、クロム、亜鉛等の典型的な金属汚染がすべて除去できることがわかっている。極低濃度(例えば3ppm)の欠陥消滅型洗浄液を用いても、数分間の洗浄で金属汚染が除去できる。
 欠陥消滅型半導体洗浄法では、洗浄液中のシアン化物イオン(CN-)がシリコンダングリングボンド等の欠陥準位に選択的に吸着してSi-CN結合を形成する結果、欠陥準位が消滅する。Si-CN結合は、Si-H結合の結合エネルギーよりも1eV以上大きな4.5eVの結合エネルギーを持つ強固な結合であり、800℃での加熱処理や可視・紫外光照射によって切断されないため、加熱や紫外線照射に対して安定であることがわかっている。したがって、欠陥消滅型洗浄法をシリコン太陽電池に適用すれば、欠陥消滅効果と金属汚染除去効果によって、太陽電池特性が向上する。
 LSI及びTFTのゲート酸化膜への応用を目指して、SiO2/Si構造を低温で形成できる硝酸酸化法を開発した。硝酸濃度の増加に伴いSiO2膜を流れるリーク電流密度は減少し、濃度98%の硝酸で形成したMOSダイオードでは、同換算膜厚(1.5nm)のシリコンオキシナイトライド膜よりも低いリーク電流密度を持つ。低いリーク電流密度の原因は、1)低い界面準位密度、2)高い原子密度、3)低いサブオキサイド濃度、4)均一な酸化膜厚によることがわかっている。
 硝酸酸化膜をシリコン太陽電池に応用した場合、効果的にシリコン表面のパッシベーションが行われる結果、高効率化が達成できる。例えば、多結晶シリコンpn接合太陽電池に硝酸酸化法を適用した結果、エネルギー変換効率は1割程度向上した。海外でも硝酸酸化法をシリコン太陽電池に適用する研究が行われており、硝酸酸化膜をシリコン基板と反射防止膜であるシリコン窒化膜の間に挿入した場合、単結晶シリコンpn接合シリコン太陽電池の変換効率が16%から18%に向上することが報告されている。