講演題目

CdTe多結晶薄膜太陽電池

講師

木更津高専
岡本 保

要旨

 CdTe太陽電池は、CdTe光吸収層が約1.5 eVと太陽電池として最適な禁制帯幅を有しており、簡単なプロセスで高速に作製できることから、低コストで高効率な薄膜太陽電池として有望である。Cdの毒性のために日本では製造・販売されていないが、欧米では低コストな太陽電池として実用化され、最近急速に生産量を伸ばして注目を集めている。本講演では、CdTe太陽電池の構造、作製プロセスおよび現状、課題について述べる。
 CdTe太陽電池は、ガラス基板/透明導電膜/n形CdS窓層/p形CdTe光吸収層/裏面電極というスーパーストレート型の構造を有している。CdTe太陽電池の小面積セルでの世界最高の変換効率は、現在のところNRELによる16.7%である。この太陽電池のCdTe光吸収層は近接昇華法(CSS法)と呼ばれる方法で作製されている。本講演ではまず、CSS法による作製プロセスについて述べる。CSS法とは、高温に保った化合物のソースと、低温の基板を2 mm程度の間隔で近接して向かい合わせに配置し、ソースを昇華させて基板上に堆積させる方法である。CSS法は、比較的簡単な操作によって結晶膜を高速で堆積できる(数μm/min)ため、低コスト化が図れることが利点としてあげられる。また、この手法では基板温度が600℃程度と他の手法に比べて比較的高温で製膜を行うため、大粒径で高品質のCdTe多結晶膜が得られる。
 次に、ファースト・ソーラー社でのCdTe太陽電池の製法について述べる。同社での製法は不明な点が多いが、VTD (Vapor Transport Deposition)法という方法で製膜しているようである。この方法では、キャリアガスとともに供給された原料粉末をヒータで加熱して蒸気にしている。コンベアで運搬されてきた基板の表面に、この蒸気をスリット状の開口部から供給して製膜する。同社の製造プロセスでは、薄膜堆積時間が15秒以下であり、ガラス基板投入後約2.5時間でモジュールが完成するといわれている。製品レベルでの変換効率は10%程度である。このプロセスで、生産コストが1ドル/W以下に達しており、2009年生産量は1 GWを越え、世界第1位となった。CdTe太陽電池は、Te資源量の問題などが指摘されているが、低価格を強みに今後も生産量を伸ばしていくと思われる。