講演題目

薄膜作製展望:成膜過程における核生成過程の解明と制御の展開/総論

講師

矢口 裕之(埼玉大学)

要旨

 薄膜形成過程の基礎に対する理解を踏まえて,薄膜作製をナノスケールで自由に制御する手法について検討する場を設けることを趣旨として総論的な観点から講演を行なう。したがって,講演題目中にある「核生成」については成膜における重要な過程の一つとしてとりあげるが,それだけに限定されることなく,薄膜作製に関する話題を展開していくことにしたい。本講演では,最初,表面への原子あるいは分子の吸着,表面からの脱離,表面拡散,核生成などの薄膜形成過程の基礎について概観する。次に,ナノスケールの薄膜作製を行う上で重要となる,表面の平坦性,界面の急峻性,結晶性,組成制御,歪みの影響などの事項について検討を行なう。さらに,我々がこれまでに行ってきた,IV族混晶半導体SiGe,希釈窒化物半導体GaPN,GaAsN,窒化物半導体GaN,InNなどのエピタキシャル成長を中心として,歪み系ヘテロ構造のコヒーレント成長,サーファクタントを用いた成長,成長中断にともなう組成制御への影響,基板の選択や作製条件の制御による準安定結晶構造薄膜の作製など,主に結晶系薄膜の作製を制御する手法の具体的な例について,薄膜形成過程の基礎を踏まえながら紹介する。