講演題目 |
ITO膜の成長メカニズムの解明とその制御 |
講師 | 重里有三(青山学院大学大学院 理工学研究科 機能物質創成コース) |
要旨 | 多結晶ITO (Sn doped In2O3)およびアモルファスIZO (In2O3-ZnO)薄膜に関して、分光エリプソメトリ、X線光電子分光(XPS)、透過型電子顕微鏡(TEM)等による薄膜成長メカニズムの解析例を解説する。近年、透明導電膜を含む多層膜の光学特性に対して、極めて高レベルのものが要求されている。このために薄膜の成長方向に対する光学定数の分布も含めて、精密に光学特性を解析することは、様々な光エレクトロニクスデバイスの光学設計を行う上で必要不可欠である。今回は、分光エリプソメトリの測定データをベースとし、透明導電膜へ適用する場合にベストだと考えられる複数の関数を組みわせた光学モデルを用いたシミュレーションにより、薄膜成長過程における光学定数の変化に関する解析例を解説する。ターゲットにはそれぞれITO焼結体ターゲット(10wt.% : SnO2)、IZO焼結体ターゲット(10.7wt.% : ZnO)を用い、DCマグネトロンスパッタ法によって様々な膜厚で合成石英ガラス基板上に成膜した。作製したITO薄膜およびIZO薄膜に関して、光学モデル構造として単層モデル(IZO薄膜)とGradientモデル(ITO薄膜)を用いて光学特性の精密解析を行った。Gradientモデルは基板の膜厚成長方向に対して屈折率および消衰係数が指数関数的な変化があると仮定し、薄膜の上層と下層をそれぞれTop層とBottom層とし、異なる分散式を用いて定義した。またそれぞれ表面粗さを考慮して表面近傍ではTop層とVoid層を50%ずつ設定した。ITO薄膜ではTop層とBottom層に差異が出たのに対し、IZO薄膜では単層での解析ができたことからIZO薄膜の膜厚方向の均一性はITO薄膜よりもきわめて大きいということが判明した。さらに断面のTEM像との対応、不純物の表面偏析が薄膜成長によってどのように生じるのかに関するXPSの解析例も紹介し、表面の仕事関数と電気特性並びに光吸収スペクトルの相関に関しても議論する。これらを通して、多結晶とアモルファスの透明導電膜の成長メカニズムを考察する。 |