講演題目

積層造形で何を作るか? 量産技術としての検討

講師

中野 禅(産総研)

要旨

1.本講演の目的

3Dプリンタ・Additive Manufacturing(AM)として知られている3次元の形状作製技術は、時に簡単に「なんでもつくれる」様な意味合いを持たれている。しかしながら特徴を理解し利用のための開発を進めなければ産業への貢献は得られない。この技術の特徴の一つである積層型・積み上げ型の形状作製を理解し、量産技術へと展開を目指す。現状で何を作るのが良さそうか、検討してみる。

2.概要

3Dプリンタは特に個人向けに廉価の装置も生み出され、個人ベースでの生産活動の方策や、新しいビジネス、またRapid prototype (RP), Rapid manufacturing (RM)として、迅速な生産提供のツールとして、そして新規の製品を生み出すような技術として考えられる。このように自在性が高い加工方法ではあるが、本当の意味で一つの技術ですべてをまかなえる手法と言えるのか?という議論は置き去りにされている。Additive Manufacturing (AM)装置は現状で7種に分類され、素材の状態も液体、線材、紛体、薄膜、と別れ、使える材料も、作れる形状も異なっている。技術の分化が既に始まっている。先述の多様な使い方をカバーするのは一つの技術ではなく、これからそれぞれに特化し開発される必要がある。
我々は、この技術を生産、とくに量産現場で利用することを考えている。今まで作れなかった製品を生み出す事に展開する技術として加工の仕組みが違い、新しい加工技術の拡がり、選択肢の増加として捉える。この時には、「積み上げる」という最大の特徴を活かすことが重要である。過去の切削は大きな塊から材料を減らし削り新しい表面形状を生み出していた減の加工法であり、成型系の加工法は型の隙間に材料を充填もしくは挟み込み、型の表面形状を転写していく体積変化の少ない零の加工法である。AMは積み上げる。何もなかったところに一つづつ積み上げて最後の一部分までを付け加えて形状を作る加の加工である。既存の加工は形状と共に表面を加工していたが、AMでは積み上げる素材の大きさの影響を受けながら表面が作られる。積み上げることにより、全体をとにかく積まないと形にならない。加工性を向上するには加工単位の削減、すなわち積み上げる体積を削減することが重要である。(実際の造形体積)/(見かけの製品体積)を小さくするのが良い。すなわち、バルクの塊より、シェル状や、内部に空間を持った構造、しかしながら強度等機能を生み出すラティス構造やポーラス構造を作ることがより有効と考えられる。既存加工法が3次元の表面を作っていたのと比較し、空間を作る技術として認知するとわかりやすい。空間・表面を高い付加価値のある新しい機能として利用するためには、表面の利用技術を含め、材料や加工法等の開発が求められている。