講演題目

電子ビーム積層造形技術による金属系構造部材の創製

講師

千葉 晶彦(東北大)

要旨

はじめに:
 電子ビーム積層(EBM)造形法は、三次元CADデータに基づく電子ビーム(EB)走査により、金属粉末を選択的に溶融・凝固させた層を繰り返し積層させて三次元構造体を製作する新たなネットシェイプ加工技術として期待されている。高出力のEBを高速で走査するため高速な造形が可能である。また敷き詰めた粉末床を深さ方向に効率良く溶融させることができ、2,000℃を超える高融点材料でも高密度に造形が可能である。さらに、高真空中で造形するため、酸化および窒化の影響がなく、高品質な金属製品の造形に適している。
 本講演では、電子ビーム積層造形技術の概要について説明し、実際の応用例として、生体用Co-Cr-Mo合金、IN-718合金、汎用チタン合金のEBM造形についての話題を取り上げる。これらの合金のEBM造形後の力学特性、EBM造形で得られる特徴的な金属組織とその力学特性について解説する。

微細析出物形成と一方向結晶成長:
 EBM積層造形法がネットシェイプ加工技術にとどまらない可能性を有していると考える根拠として、造形後に形成される特徴的な微細組織がその一つに挙げられる。生体用Co-Cr-Mo(CCM)合金のEBM造形ままの組織(SEM像でおよびEBSD観察(講演にて示す)の結果を合わせると、組織は<001>方向に成長した径1μm以下に形成するセル組織から構成されており、セル界面には微細なM23C6系炭化物(1μm以下の間隔でM23C6系炭化物が均一に分散析出)が形成している。通常の鋳造法で形成されるCCM合金の組織は、粗大なデンドライト組織であり、不均一に晶析出した粗大な炭化物からなっている。

EBM造形物の力学特性:
CCM合金、純チタン、およびTi-6Al-4V合金のEBM造形まま材の力学特性を、引張り試験、疲労試験により評価を行った。その結果、いずれの合金においても、それぞれの合金の鋳造材および鍛造材としての応用に必要な規格値を超えた力学特性を示す。EBM造形後にそれぞれの合金に現れる固相変態を利用した組織微細化熱処理を施すことにより、結晶異方性が改善され、等方的で、高強度・高延性な力学特性に改善される。以上のように、EBM造形物の力学特性は、これまでの鋳造材を超え、鍛造材に匹敵すると言える。