講演題目

三次元光造形法と微粒子焼成法を用いた機能性セラミックス構造体の創製

講師

桐原 聡秀(大阪大)

要旨

現在までに自動制御の加工機械を用いた金属やセラミックス材料の3次元成型法が数多く考案されてきた。特に近年におけるコンピューター制御技術の発展に伴い、CAD/CAM/CAE(Computer Aided Design /Manufacturing/Evaluation)プロセスの高精度化が図られ、様々なナノ・マイクロレベルでの加工装置が実現するに至っている。その一つである光造形法は高分子製の3次元構造を高速作製する手法である。従来は工業製品の試作モデルの成型に用いられてきたが、著者らの研究グループでは高分子媒質にセラミック微粒子を分散させることで、誘電体の3次元構造を自在に造形する技術として確立した。本講演では誘電体の3次元構造により電磁波を空間的に制御するという発想をベースに、新しい電磁波制御材料として期待されているフォトニック結晶の開発について紹介する。フォトニック結晶は誘電体の周期的なパターンを有し、ブラッグ回折により電磁波を完全反射する機能材料である。意図的な構造欠陥の導入により、特定の波長を強く共振させることが可能であることが、これまでの研究で明らかになった。光や高周波の電磁波を効率よく制御できると考えられており、国内外において活発な研究が進められてきた。著者らは光造形法を活用した最近の研究において、マイクロメーターオーダーの誘電体周期構造を有するセラミック製フォトニック結晶の作製に成功し、次世代の電磁波として高い関心を集めるテラヘルツ波の制御に取り組んでいる。本講演では、光造形法の基本原理や材料作製の過程について解説するとともに、フォトニック結晶によるテラヘルツ波の制御についても詳細を述べる。さらに、本講演では光造形法を用いた、セラミックスや金属構造体の精密成型に関する一連の研究成果の中から、固体酸化物燃料電池の電極構造や、医療用人工骨の多孔構造を開発した事例についても紹介したい。