SiCはIV-IV族唯一の化合物半導体である。本講演では、SiCの基礎的物性を下記の視点・観点からSi、GaNなどと比較しながら述べる。
(1)SiCは軽元素Cを構成元素とする「軽元素系半導体」である。軽元素は正四面体配位半径が小さいことから、一般に軽元素を含む結晶は格子定数が小さい。このことから結合エネルギーが大きく、その結果大きいバンドギャップ、絶縁破壊電界、熱伝導度を持つなどの共通した物性を有する。
(2)SiとCは共にIV族元素であるが、Si とC原子の電気陰性度の違いによってSi-C結合は約18%のイオン性を持つ。このため、SiCは組成1:1の「化合物半導体」である。多くの点でSiCはSiに類似の物性を持つが、SiあるいはSiGe混晶系とは違った化合物特有の性質を持つ。
(3)SiCの結晶構造上の特徴は数多くの「ポリタイプ」が存在することである。その原因は基本的にはSiC bi-layerが積層するとき、立方晶的積層と六方晶的積層のエネルギー差が極めて小さいことである。ポリタイプは積層周期の違いによるもので、一種の「自然超格子」である。ポリタイプによって物性が異なるため、結晶成長では一定のポリタイプが保たれるようポリタイプ制御が必要である。積層欠陥はポリタイプの乱れとも言える。
(4)半導体の物性はその応用と深く結びついており、物性値から計算される様々な
figure of meritが提案されている。低損失パワーデバイス、小型・高密度デバイス、高速デバイス、耐環境性デバイスなどの応用の見地からSiCの物性を考える。
(5)半導体の物性は半導体素子の作製プロセスに深く関わっている。原子間結合が強いことから熱的・化学的に安定であり、このことからあらゆるデバイスプロセスが高温を要し、また化学的エッチングが困難、不純物の熱拡散が困難、といったプロセス上の困難さをもたらしている。
(5)SiCの半導体材料としての利点はSi と同様の熱酸化によりSi C上に酸化絶縁膜を形成することができることである。このため、MOS構造を形成することができ、Si と同様にMOSFETが作製可能である。しかし、現状SiC-MOS特性はSiのそれに比べて劣っており、その解決にはSiCの酸化膜界面構造やそれと深く関係すると考えられる酸化機構の解明が待たれている。
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