講演題目

HAXPESの実用表面分析への応用
– 「より内部」や「埋もれた界面」の非破壊分析 –

講師

株式会社東レリサーチセンター
小川 慎吾

要旨

 固体物質表面の組成および化学状態を調べることができるX 線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy: XPS)は、実験室系の分析装置が開発されて以来50 年以上の 長い歴史の中で技術が確立され、いまや実用表面分析の中で欠くことのできない分析手法 になった。しかしながら実験室系で最も一般的なXPS 装置であるAl-Kα線源(hν= 1486.6 eV)のXPS は検出深さが数nm と浅いため、表面汚染や変質層の影響を強く反映し目的の 情報を得ることができない場合がある。一方、近年急速に実用化が進んだSPring-8 などの 放射光光源を利用した硬X 線光電子分光法(Hard x-ray photoelectron spectroscopy: HAXPES)では、例えば放射光光源(hν= 7940.0 eV)を利用した場合の検出深さは材料に より異なるがおよそ30 nm 程度であり、検出深さ数nm の実験室系Al-Kα線源のXPS より 深く、バルク分析より表面敏感であるため、これまでに見ることができなかった情報を引 き出すことができる分析手法として注目されている。本講演では、半導体材料や有機EL 素 子などの積層薄膜にHAXPES を適用し「埋もれた界面」を評価した事例を紹介する。 HAXPES を適用することで表面に電極として金属薄膜などを数nm~20 nm 程度形成した 試料においても、電極とその下の膜との界面の反応状態などを電極越しに非破壊で評価す ることができる。また、より実用的な材料への適用事例拡大を目指した弊社の取り組みと して、酸化物粉末にHAXPES を適用した事例や絶縁材料に対する帯電中和測定の試みを、 実験室系のXPS 測定結果と対比させながら紹介する。