講演題目

XAFS を用いた固体酸化物形燃料電池材料・反応のin situ 解析

講師

東北大学多元物質科学研究所
雨澤 浩史

要旨

水素に代表される燃料の燃焼反応による化学エネルギー変化を電気エネルギーに直接変 換する燃料電池は,次世代の環境調和型発電デバイスとして期待されている。なかでもイ オン導電性のセラミックスを電解質として使用する固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell, SOFC)は,700~1000℃という高い動作温度を活かし,エネルギー変換効率が高い, 燃料適応性に優れる,高品位の排熱を利用したコンバインドサイクルやコジェネレーショ ンシステムの構築が可能である,といった多くの長所を有している。このような背景から, 現在,SOFC の研究・開発は世界中で活発に行われており,わが国でも2011 年秋より0.7 kW 家庭用SOFC コジェネレーションシステム(新型エネファーム)の市販が開始された。 今後SOFC を本格的に普及させていくには,SOFC スタック・セル・部材のさらなる高性 能化,高耐久性化,長寿命化が要求されている。これには,構成部材である電解質,電極 などの,作動下における化学・物理状態を正確に把握することが必要不可欠である。しか しながら,高温,特殊雰囲気(酸素,水素雰囲気),通電というSOFC の作動条件は,汎用 の分析手法にとっては苛酷な条件である。そのため,これまで,SOFC 作動時の各構成材料 の化学・物理状態を精密に評価できる手法は非常に限定されていた。これに対し,我々の 研究グループは,測定に真空や極低温といった特殊環境を要しない硬X 線吸収分光法に着 目し,京都大学,高輝度光科学研究センター(JASRI)との共同研究を通し,高温,制御雰 囲気,通電状態における測定が可能な,その場XAFS 測定法の可能性について検討してき た。その結果,高温,制御雰囲気,通電状態において,nm~μm の位置分解能あるいはmsec の時間分解能を有するその場XAFS 測定法の開発に成功し,SOFC 各種材料の物理・化学状 態やSOFC 電極反応の直接評価にこれらを適用してきた。さらに最近では,高温,制御雰 囲気における軟X 線吸収分光測定による,SOFC 材料の電子状態評価も可能となっている。 本講演では,これらその場XAFS 測定法と得られた成果のいくつかを紹介する。