要旨 |
X 線吸収分光(XAFS)法は、内殻からの空状態への電子遷移に伴う吸収を利用しているため、 元素選択性があり、しかもそれぞれの化学種に特有のスペクトルを得ることができる。し たがって、化学種の種類と量を定量的に見積もることが可能である。しかしながら、通常 のXAFS 測定では、分光器で一点一点X 線のエネルギーを変えながら測定するため、1 つの スペクトルを得るのに数分程度の時間を要し、化学反応をリアルタイム追跡することは困 難である。そこで最近では、分光器を連続的に掃引しながらスペクトルを測定するquick XAFS 法や、異なるエネルギー(波長)のX 線を同時に照射してスペクトルを一度に得る波長 分散型XAFS 法が用いられるようになってきた。本講演では特に、化学反応において極めて 重要な炭素、酸素といった元素を観察するのに適した、軟X 線領域における波長分散XAFS 法を紹介する。
軟X 線波長分散XAFS 法は、回折格子と集光光学系を用いることによって、位置によって波 長の異なる(波長分散した)軟X 線を試料に照射し、それぞれの位置において軟X 線の吸収 強度に比例して放出されるAuger 電子を、位置分解型の電子エネルギー分析器で取り込む ものである。現在、表面における化学反応を33 ms ごとに連続測定することが可能になっ ており、CO の酸化反応をリアルタイム追跡した結果が報告されている[1]。さらに、XAFS 法を表面吸着分子に対して適用すると、s 偏光とp 偏光の違いを利用して分子の配向を決定 することができる。したがって、波長分散XAFS と偏光スイッチングを組み合わせることに よって、分子の配向変化をリアルタイムに追跡することが可能となり、実際、NO およびN2O の吸着過程の配向変化の観察が報告されている[2]。
当日は、軟X 線波長分散XAFS 法の原理を解説するとともに、化学反応のリアルタイム追跡 への応用例と最近の進展を紹介する。
[1] K. Amemiya et al., Appl. Phys. Lett. 99 (2011) 074104.
[2] K. Amemiya et al., Appl. Phys. Lett. 101 (2012) 161601. |