近年、ナノスケールの薄膜・界面の電子構造, 化学結合状態, 化学反応, 相互拡散などを調べる手段の必要性が益々高くなってきている.Si-LSIにおけるゲートスタックを例に取って考えると, 絶縁膜厚はSiO2を使う限りにおいてはすでに1 nm近くまで薄くなり, 絶縁材料としての限界に近づいていている.このため, 酸窒化物膜から, さらにはHfO2などの高誘電率膜, いわゆるhigh-kへと移行しつつある. high-k膜を使った場合, 絶縁膜の厚さは3~4 nm程度であり, その中にバリアー層などの複数の層が含まれる. またゲート電極と絶縁膜界面をしらべる場合にも, ゲート電極の厚さを少なくとも5~10 nm程度にしないと現実的なデバイスの構造に対応した情報は得られない. ソース, ドレインの高濃度ドーピング領域もやはり深さが5 nm程度で, 不純物の活性化率、深さ方向のプロファイルなどを知る必要がある. このようなナノスケールの薄膜およびその界面を調べる必要性はSi-LSIに止まらず, 磁気ヘッド, 固体電池, EL表示素子の電極界面, ハードディスクの潤滑剤と基盤との界面, DVDなどの実用レベルのデバイスの中でますます高くなっている. また, スピンエレクトロニクス材料, 金属ナノクラスター, 有機-無機薄膜材料など様々な新しいナノ材料が研究されるようになってきている. オージエ電子分光や、真空紫外から軟X線領域の光電子分光法などの従来の分光的手段ではこのようなナノスケールの薄膜、多層膜の解析には役に立たない. ここではナノ薄膜およびその界面の分光法における最近の進歩, 特に最近著しい展開の見られる硬X線光電子分光法を紹介する. |