表面や界面など局所領域の原子配列を観測することは、ナノテクノロジーを発展させる上で重要なテーマの一つである。現在、既に原子配列の情報が得られる幾つかの方法がある。STMやLEED、 RHEEDなどがその例である。しかしながら、これらの手法のみでは、原子配列の決定は不可能で、他の手法と組み合わせる必要がある。光電子ホログラフィーは新たな原子配列の決定法として研究されてきた。光電子ホログラムの測定方法は非常に単純で、サンプルに光を当て、内殻準位から、光電子を励起する。光電子の強度の二次元角度分布(極角、方位角)がホログラムになる。このホログラムには、光電子を放出した原子の周囲の原子配列が記録されている。このホログラムから実空間像を得るには、再構成計算が必要である。今までに開発された計算法は、複数のエネルギーで測定したホログラムを利用しなれけばならなかった。これではエネルギー可変の光源(放射光など)が必要で、長時間の測定が必要である。それでも、第一近接の原子までしか原子配列が得られず、実用的ではない。我々は、近年、単一のエネルギーの光電子ホログラムから、20~100個程度の原子の配列を求められる新たな計算法を開発した。この計算法は、電子が原子によって散乱される過程を正確に取り込み、最大エントロピー法を使った収束計算を用いているため、従来より精度が良い。さらに、単一のエネルギーホログラムで良いため、ホログラムの測定には、放射光だけでなく、実験室光源(X線管等)を光源として用いることが可能となった。光電子ホログラフィーは、光電子とその散乱を利用するため、サイト選択性や、表面に感度があり、原子核の位置情報が得られるという特徴を持つ。さらに、結晶中の不純物や表面吸着子など、結晶性を持たない場合も測定可能である。さらに、オージェ電子も利用可能となり、電子線なども励起源として使える。SEMなどと組み合わせれば、ミクロンスケールの構造体の中の原子配列も測定可能と考ている。したがって、実験室レベルで手軽に、不純物や表面や界面の原子配列を求める方法として、発展していく可能性がある。講演では、光電子ホログラフィーの原理だけでなく、最先端の測定法、再構成理論、応用研究の可能性について解説を行う予定である。 |