有機デバイスが実用化され、さらに高性能化へ向けた研究開発が行われている。有機薄膜とその界面の電子構造はこれらデバイス機能の中心的役割を演じ、その配向・界面電子状態解析が広く求められてきた。その結果、柴外光電子分光法(UPS)はこれら有機デバイス中の電気的性質、電荷ダイナミックスの解明に不可欠であるだけでなく実デバイスの設計にも不可欠になっている。実デバイスの開発においてもUPSによる情報が不可欠になっている点は、有機薄膜デバイスの大きな特徴であるが、一方ではその界面での電子準位接続問題に関連する基本的な問題や、得られたUPSデータをどのように「解読する」かという問題も多く残されてきた。前者は分子集合構造とも密接に関連し、分子集合構造自体のダイナミックレンジの広い空間的かつ時間的変動と無関係ではなく、また後者は巨大な有機分子の光イオン化をどのように取り扱うかという理論的問題をも含んでいる。これらの問題は、バンド幅が極端に狭い有機薄膜中のフェルミ準位の位置、弱相互作用界面での電荷交換、ドーピング現象、局在フォノンとホールとの結合など、基礎科学的に見ても重要な課題と関連し、多くの研究者を悩ませてきた問題であり、分子間相互作用が弱い有機薄膜が持つ特有の性質の結果である。これらをどのように統一的にとらえうるか、いったい何が生じているかといった点に視点を置き、有機半導体薄膜及びその界面の電子状態について特に電気的性質との関連に注意してその特徴を以下の項目について解説する。(1)弱い相互作用系である有機薄膜・界面電子状態の特徴、(2)UPSバンド幅の原因、(3)界面双極子ナノテクノロジーによる電子準位制御と電子準位接続の本質、(4)UPS強度の定量的解析による分子配向情報、さらに(5)光電子顕微鏡(PEEM)や超高準度UPSによる研究展開(ギャップ状態、埋もれた界面へのアプローチ)等についても時間の許す限り言及する予定である。