デバイスをはじめ、新規材料開発において新たな機能発現の場として界面に対する期待は近年益々高まっている。しかし、界面における物性発現機構の解明、あるいは界面の制御などの問題は現代の科学技術が取り組むべき重要課題であっても、その困難さのために多くの問題が未解決のままになっている。その一つが埋もれた界面における物性の非破壊評価である。しかし、従来から用いられている界面評価法は、破壊評価であったり、物性を評価しにくいなどの欠点がある。軟X線発光(蛍光)分光による埋もれた界面の評価は、軟X線の侵入深さ(脱出長さ)が数10 nmから数100 nmであるのと、発光スペクトルが価電子帯の部分状態密度を直接与えてくれる特徴を利用したものである。特に後者は、同じ原子でも化学結合状態によって敏感に変化するので、いわば物質の指紋の役目をする。また、光電子分光と異なり、荷電の問題を回避できるので、扱う材料に制限を受けないという利点もある。一方、かつては軟X線発光の量子効率は低いという難点もあったが、最近の高輝度放射光技術の発展により解消された。Fe/Si磁性多層膜は次世代の反強磁性結合素子として有望であるが、相互拡散の著しい系でもある。我々は、軟X線発光分光を用いて反強磁性層間結合が最も強いFe(3.0nm)/Si(1.3nm)多層膜の界面を解析した結果、はじめのSi層は相互拡散によって消費され、厚さが約0.7nmのFeSi2を0.5nmのFe3Siが挟む構造になっていることを明らかにした。また、これよりFeSi2が量子波干渉によって強い磁性層間結合を媒介していることを示した。このように、軟X線発光分光によってバルクに埋もれた、厚さがサブnmの界面の電子状態を非破壊的に評価できることを実証した。また、試料の多層構造を利用することにより、Bragg反射の近傍で多層膜中に軟X線定在波を励起し、界面からの情報を強調して取り出すことも試みている。 |