多くの謎を秘めた生命現象の解明のために,DNA,タンパク,細胞などに対する新しい高性能バイオセンシング技術の開発が強く望まれている。特に、多くの生体分子や細胞は溶液中あるいは培養液中でその機能を発現するために,それらの機能を解析するためには,「その場」で,すなわち溶液中で生体を分析できる解析技術が必要不可欠である。本講演では,そのような計測技術の一つである赤外分析法について,最近の研究動向も含めて簡単に解説し,さらに,我々が活用している多重内部反射型赤外分光法の原理と利点を紹介する。この分光法では、赤外線を多数回内部反射(全反射)させながら半導体結晶中を透過させ、赤外線が全反射する際に表面付近にできるエバネッセント場を利用して表面付近の化学状態を分析する。生体物質や細胞が含まれる溶液を半導体結晶表面に接すれば,半導体表面付近の溶液中の生体の状態が「その場」でかつ高感度で分析できる。また,表面に生体分子や細胞を固定化させれば,生体分子間相互作用や細胞間相互作用を効率的に検出・分析できる。本講演では,溶液中のDNAの挙動(相補対形成や熱変性など)や細胞の変化(細胞死や細胞分化)の「その場」解析を中心に,多重内部反射型赤外分光法を用いた最近の研究の成果を紹介し,この手法を使うことにより多様な生体センシングが可能になることを示す。