電子の持つ「電荷」と「スピン」の自由度を同時に利用した新しいナノデバイスとして、スピントロニクスが注目されている。特に、電子のスピンを反映した伝導現象として、スピントンネル効果による磁気抵抗TMRがあり、活発に研究開発が進められている。一方、ナノレベルでの微細な構造が制御されたナノ材料として、強相関電子系物質がある。強相関物質は、多数の電子が電荷だけでなく、スピンや軌道の自由度を含めて強く相互作用し、臨界的な量子相を形成している。この競合する複数の量子相は、ボトムアップ的にナノ構造を自己形成し、巨大応答の要因となっている。このような強相関電子系物質の一つとしてペロブスカイト型Mn酸化物があり、この中には、スピン完全偏極の強磁性体もあり、これを用いたスピントンネル素子では、巨大なTMR効果を示すことが期待される。この強相関スピントンネル素子を実現するには、ヘテロ構造が不可欠であり、原子スケールで制御するというトップダウンのナノ構造界面制御が必要となる。ここでは、強相関遷移金属酸化物のスピン完全偏極強磁性に焦点をあて、スピントンネル素子の構築に必要不可欠な界面磁性の直接観察と制御技術(界面エンジニアリング)について述べるとともに、強相関スピントンネル接合の作製と特性を紹介する。 |