ナノメートルスケールの導電性微小粒子を、薄いトンネル抵抗で挟んだ構造を、単電子トンネルを扱う分野では「二重接合」と言います。このような二重接合構造を浮遊ゲート型メモリ素子のトンネル膜に応用することで、通常のトンネル酸化膜よりも優れた特性を実現することができます。浮遊ゲート型メモリ素子のトンネル膜部に、薄いシリコン酸化膜に挟まれたSiナノ微結晶膜を有する構造を作製すると、情報電子は、Siナノ微結晶を介した二重接合トンネルにより電荷蓄積部とチャネルの間を出入りします。この時Siナノ微結晶での量子閉じ込め効果とクーロンブロッケイド効果によりエネルギーバリアが形成されるため、記憶保持時の情報電荷リークが抑制されます。また一方、適切な書込消去電圧印加により、エネルギーバリアの影響を無くした、薄いトンネル酸化膜のみを介する高速書込消去が可能になります。このように二重接合トンネル膜は、長時間記憶保持と高速書込消去の両立させるに当たって極めて有利なものになります。我々はこれまで様々な二重接合トンネル膜を有する浮遊ゲート型メモリ素子を作製し、実測してきました。これらを紹介しつつ、トンネル膜中のSi微結晶のナノサイズ効果により、記憶保持と書込消去のトレードオフの優位性が実現できることを実証します。またバルク・プラーナ構造のメモリ素子において、最短25nmの微細ゲート長でも良好なメモリ素子特性が実現できることも示します。