酸化物を金属電極で挟んだ単純なコンデンサ構造を用意し、これに大きな電界をかけると絶縁破壊が起こる。過度な電流が流れないようにしてこの絶縁破壊を「ソフト」なものに抑えておくと(これを「フォーミング」と呼ぶ)、ある種の素子の場合、電流--電圧特性に大きな履歴現象、つまり「電気抵抗のスイッチング」現象が出現するようになる。40年以上前から多くの研究がなされてきたが、この数年、この現象を用いた不揮発性抵抗変化メモリー素子の開発機運が高まり、競争が一気に加速して来た。 まず誰もが疑問に思うことは「フォーミングで何が起こっているのか」ということであろう。最近、素子の微細化を進めるとフォーミングが不要になること、ポイントコンタクト的な素子もフォーミングなしに動作することなどが明らかになってきている。つまり電気抵抗スイッチング現象は素子のどこか非常に「小さい部分」で起こっていて、フォーミングというのは大きい素子の中にその「小さい部分」をこしらえる作業なのである。したがってもともと素子が十分に小さければフォーミングは不要になる。そもそもこの「小さい部分」さえあれば素子の残りの部分も不要なのかもしれない。 「小さい部分」を我々はフォセットと呼ぶことにした。水道の蛇口である。フォセットはどうやら電極と酸化物の界面に形成されることもわかってきた。フォセットが開いているとき、つまり抵抗が低い状態の時、そこには電流が集中する。電流が過度に集中すると、(1)温度が急上昇する、(2)酸素やカチオンの移動が起こる(エレクトロマイグレーション)、そして、(3)非平衡状態になる。そのような状況下に陥ると実際に何が起こるのか断定するのは難しいが、それによってフォセットが閉じる(絶縁体になる、あるいは消失する)のは確かである。 講演では、我々の作製している素子について、酸化物と金属電極の組み合わせで電気抵抗スイッチングの振る舞いがどう変化するかを紹介し、フォセットの開閉について考えられるメカニズムを取り上げて議論してみたい。 本研究は、産総研、東大、シャープ、アルバック、阪大、パリ南大、アルゼンチンCABの共同研究によってなされました。 |