本委員会は、令和3年(2021年)4月1日に発足いたしました。
産学連携委員会設立の目的
電子ビームやイオンビームに代表される粒子線は、学術的に長い歴史を持つのみならず、工業的にも幅広い応用分野を有している。一例を挙げるならば、電子ビーム技術は電子顕微鏡の基盤をなすものであり、様々な学術分野で必須の技術であるのみならず、半導体の微細化のためにも必要不可欠な技術である。イオンビーム技術は、質量分析、表面分析、微細加工、イオン注入に代表される材料改質など、学術的・工業的に必要不可欠なツールとなっている。これらの技術は、幅広い分野で応用されていることから、すでに既存のものと考えられがちであるが、基盤となるビーム技術の学術的進展は近年においても注視すべきものが多い。例えば電子ビーム技術においては、新たな収差補正理論の発展により、個々の原子に直接アクセスした材料開発が可能になっており、クライオ電顕に代表されるように電子顕微鏡技術の進展も著しい。イオンビーム技術においても、クラスターを用いた超低エネルギービーム技術、GeV級高エネルギービームを用いた癌治療など、学術的・技術的進展はとどまるところがない。
このような現状に鑑み、本研究会では電子・イオンを中心とした粒子線技術の新規な学術的進展を図るとともに、これらの基盤技術を応用物理学関連分野に情報発信をすることにより、さまざまな分野との学術的交流を持ち、応用分野としての発展にも寄与することを目的とする。
研究テーマ
(1) 新しい電子ビーム制御技術に関する研究
ナノ寸法ビーム光学系、マルチビーム光学系など、従来検討されてこなかった新たなビーム光学系が、特にビーム描画装置の領域を中心に要請されている。これらの問題に対して、理論的、実験的な検討を図り、次世代ビーム技術の進展に資する。
(2) 次世代イオンビーム制御技術の研究
イオンビームをエネルギー源とする、新しい加熱・加工技術の開発と物理・化学境界分野の開拓を行う。また、負イオン、多原子分子イオン、クラスターイオンなど、新規なイオンによる生体適合性材料の開発や超浅接合の形成などの研究の推進を通じて、次世代のイオンビーム応用の可能性について追求する。
(3) 次世代顕微観察及びナノ分析に関する研究
新たな電子光学に基づく超高分解能電子顕微鏡、ビーム制御に基づく原子レベルの電荷・スピン観察、イオン顕微鏡による超解像度観察など、従来技術では不可能であったような新たな観察技術を探求するとともに、その新規材料開発への応用開拓について追及する。併せて、画像データの三次元化やAIによる画像解析などの新技術を検討する。
(4) 荷電粒子ビームと固体の相互作用及びナノ加工への応用に関する研究
荷電粒子ビームは粒子種及びエネルギーに応じて固体表面と様々な物理的及び化学的相互作用を、高い制御性を持って生じさせることができる。このような素過程の学術的探索を行うとともに、光露光に代わるリソグラフィ技術、ナノ加工・原子オーダーの加工技術、金属材料や半導体材料の三次元加工技術、ナノインプリント技術など、ナノテクノロジー分野の進展に資する。
(5) 人材育成並びに国際交流に資する活動
本委員会活動を通じて、ビーム技術を継承する若い人材の育成を行うと同時に、国際シンポジウム開催などを通じてビーム技術に関する国際交流を図る。特に「ナノ荷電粒子ビーム基礎講座」を開催し、当該分野の若手人材育成に貢献する。
委員長:西 竜治 (福井工業大学)
副委員長:谷口 淳 (東京理科大学)