今回の特集は、LSI配線技術において現在精力的に研究開発のすすめられているCu/Low-k integrationについて特にプロセスサイドからの最新の話題を取り上げた。今回の研究会は、電子情報通信学会シリコン材料デバイス研究会(最上徹:NEC)、応用物理学会応用電子物性分科会、シリコンテクノロジー分科会の共催で開催したものである。研究会企画は、最上徹委員長ならびに上野和良幹事(共にNEC)のご尽力によるものである。
さて、研究会では配線技術のオーバービューとして、広島大の吉川教授が"ULSI多層配線技術の課題"と題して講演した。縮小化に伴って、配線のスケーリング則が変わらざるを得ないことや、配線遅延限界を打破するために伝送線路技術を用いた高速配線技術開発の必要性や、感光性樹脂を用いた低コストプロセスが報告された。質問ではクロックスキューに関する議論等があった。
NECの林氏による"低誘電率有機膜を用いたCuダマシン多層配線プロセス設計とその実証"と題した講演では、有機低誘電率膜SiLKを用いたデュアルハードマスクプロセス、エッチングプロセス、インテグレーションが報告された。質問として、配線溝深さの制御性等があった。
NTTの斎藤氏による"感光性樹脂を用いたCuダマシンプロセスによるオンチップ厚膜配線"では、LSIチップ上に厚膜の感光性樹脂をはさんで厚膜Cu配線パターン(インダクタ素子など)を形成する技術が報告された。高周波数化に伴う損失低減にも応用できる技術であり、損失低減効果の樹脂膜厚依存性などの質問があった。
富士通研究所のA.Hobbs氏の「Cu配線におけるグレイン及び微小ボイドの発生」と題した講演では、熱処理によるCu配線の粒径変化が、線幅に近い0.2μmを境に、(111)などの低い面指数からなる大きいグレインと高次の面指数の小さなグレインに変化すること、ボイドが再分布することが報告された。グレインサイズと面方位についての成長メカニズムに対する質問やCu配線の信頼性に関しての質問があった。
日立中研の武田氏からの「ダマシンCu配線における絶縁劣化現象」と題した講演ではCu/PTEOS/PsiN/Cu構造のTDDB寿命に対して、水素アニールで効果がなく、水素プラズマやアンモニアプラズマで効果があることが報告され、この理由などの関連する質問があった。
広島大学の尾田氏からは「低誘電率層間絶縁膜中のリン添加効果によるCuイオンドリフト抑制効果」と題した講演では吸湿性、リンの膜中への入り方やB-T処理に関するドリフトと拡散についての解釈の質問がなされた。
アネルバ・プロセス研究所、関口氏の「CVD法によるCuめっき用下地膜の真空一貫Barrier/Cu Seed積層製膜」と題した講演では、CVD法を用いたCu積層に関してのNH3添加による段差被覆特性の向上やプラズマ処理によるCu Seed膜の密着性向上についての報告があり真空一貫の有効性について質問があった。
ASETの福田氏からの「Low-k材用の誘電率の理論的導出-k<1.5の配線プロセスを目指して-」と題した講演ではLow-k材用に対して電子分極、イオン分極、配向分極を考慮した複素誘電率の導出と実測についての報告がなされ、測定値の理論的解釈についての質問があった。
ダウ・ケミカルの井田氏からは「半導体用SiLK誘電体樹脂のインテグレーションプロセスへの適応について」と題して、開発中の有機芳香族系樹脂について種々の硬化条件に対する材料特性についての報告がなされ、酸素濃度裕度、電気特性についての質問があった。
日本真空技術の山田和弘氏は「新型Low-kシリカ膜〜高規則性を有した空孔構造」と題して、直径3nm程度の空孔配列を有するSiO2薄膜のLow-k材料としての吸湿・温度特性についての報告がなされ、空孔の構造、作製・評価についての質問があった。