7月12日(木)、機会振興会館にて、掲題の応用電子物性分科会定例研究会が開催された。本研究会では事前予約の段階で50名を越え、朝から30度を越える真夏日にもかかわらず、110名の方に御参加頂いた。(予想を越える人数で、追加の椅子で対応せざるを得ず、一部の方に不自由をおかけしました事をこの場にて御詫び申し上げます。)
今回は、テーマが広範囲であることと、国内外で関心が高くなっているテーマであることを考慮し、新しい試みとして技術的な報告だけでなく、国内外の研究機関の取組みや、国家レベルのナノテクノロジー科学政策の話題も取り上げた。この試み自身について、聴講者の関心事の違いにより、賛否両論あったようであるが、概ね有意義であったと思う。
初めに企画者から、ナノテクノロジー全体像の概論に続いて、重点領域を形成しつつあるナノテクノロジーが、その分野、研究対象、目標、可能性等の全体像が必ずしも理解されていないとの、問題提起を行った。
これを受ける形で、富士通研の横山 直樹氏より、ナノテクノロジー概論について、ITに関わる半導体やストレージのナノテクノロジーを中心に、日米の国家レベルの取組みと、富士通研の取組みを御紹介頂いた。富士通研では、量子通信、カーボンナノチューブ、ナノバイオを重点としている。続いて、ナノテクノロジーの国際動向について、三菱総研の安田英典氏に講演頂いた。背景となる各国の科学行政にも触れながら、国家戦略の比較を紹介していただいた。20年という長期的な取組みで人材教育に力を入れる米国と、5〜10年程度の短期間で経済効果をもたらそうとする日本では、かなり大きな違いがあると指摘されていた。
午後には、大阪大学大学院の青野 正和先生から、走査プローブ励起による有機材料自己組織化を利用したナノ金属ワイヤーの作製と、多重端子走査プローブで実測したナノワイヤーの電気特性について紹介頂いた。このインパクトある研究成果は、走査プローブ顕微鏡がもはや構造を観察するだけの道具ではなくなったことを意味すると思う。
続いて、姫路工大の松井真二先生から、リソグラフィーを中心とするナノ構造形成技術の動向と、最近注目されているナノインプリント技術と、イオンビームによる3次元ナノ立体構造作製技術を御紹介頂いた。後者は、CADデザインした任意の立体構造を短時間に作り上げる先進の技術である。
続いて、三重大の斎藤弥八先生から、カーボンナノチューブの基礎と応用と題して、御自身が取り組まれてきた電子放出源に加えて、半導体ナノエレクトロニクス、ナノメカニクス、水素貯蔵応用の研究動向を分かりやすく御紹介頂いた。いずれも研究者人口が多い分野であり、研究開発も日進月歩である。実用化される時も近いようだ。
続いて、都立大学の益田秀樹先生から、アルミナのアノードプロセスによるナノ構造形成について詳しく紹介頂いた。これは無機材料の代表的なナノ構造自己組織化反応であるが、これまで問題であった自己組織化に付随するディスオーダー化をうまく制御して、ほぼ完全な周期構造を得る事に成功された。そのままでフォトニッククリスタルとなることも示されており、今後の応用が期待される。
最後に本研究会の企画者の一人、東大生研の荒川泰彦先生から、情報テクノロジーとしてのナノデバイスへについて、拡大化し続ける情報ネットワークに対して、中核となる部分に新たなナノデバイス開発が必須であること、ナノデバイス実現に向けブレークスルーが必要なことと、それに向けた産官学が行うべき取組みを紹介頂いた。最後の話題について、講演後様々な質疑応答があった。
今後、国家レベルのプロジェクトも実働開始となり、各分野の研究がより加速されると思われる。海外でも研究の進歩が著しい。今回取り上げられなかったバイオ、環境、エネルギー分野などでも、新たなトピックスが現れてくることが期待される。その際には本研究会の続編を再度企画提案してみたいと思う。