春期・秋期講演会における分科会企画の講演

チュートリアル講演

●2012春(早稲田大)
橘 邦英(大阪電通大)
「マイクロプラズマの基礎と応用」

大気圧下の気体や液体中で生成されるmm以下の大きさのマイクロプラズマは,従来の低圧気体中で生成されるマクロスケールのプラズマとは違ったプラズマパラメータや,微小空間に起因する外部パラメータで特徴づけられる.そのような特性をプラズマ本来の反応性,発光性,導電・誘電性と組み合わせることによって,ナノ材料の合成,微量化学分析,フォトニックデバイス,さらには環境・バイオ・医療技術などの新しい応用技術への展開が進められている.本講義では,マイクロプラズマの特性を分析した上で,現在の各種マイクロプラズマ源とその応用技術の基礎について解説し,将来への発展性について展望する.

●2012秋(愛媛大・松山大)
杤久保 文嘉(首都大)
「シミュレーションでみる反応性プラズマ〜大気圧から低気圧まで〜」

非平衡プラズマのシミュレーションは,プラズマ中で起こる種々の現象を物理・化学に則って数式で記述し(モデル化),これを数値計算することで実現される.非平衡プラズマのシミュレーションは,実験では計測が困難な現象,例えば,荷電粒子やラジカル,電磁界等の時空間挙動,化学反応過程などを容易に解析することができるので,現象や考え方の理解にとても有用である.昨今,非平衡プラズマの生成は低気圧から大気圧,更には液中へと広がり,その利用も材料プロセスから環境,バイオ・医療応用へと展開している.本講義では,放電物理の基礎,非平衡プラズマのモデリング・シミュレーション手法を概説した後,シミュレーションを通じて理解される各種プラズマの特徴を,応用事例を含めながら解説する.気圧や生成法の違いによるプラズマの共通点,相違点についても議論する.

●2013春(神奈川工科大)
辰巳 哲也(ソニー)
「プラズマの基礎とその微細加工技術への応用」

最先端のLSI製造等にはプラズマを用いたプロセス技術が数多く用いられています. プラズマの反応はその生成から材料表面での物理・化学反応の制御に至るまで複数の非常に複雑な過程を経て起こっているため, ブラックボックスとして扱われることも多いのが現状です. 本講義ではドライエッチングと呼ばれる微細加工技術を中心に, プラズマ生成の原理や活性種の制御, 及びこれを用いた加工特性制御の基礎について最新の話題を交えてわかり易くお話ししたいと思います.

●2014春(北大)
霜垣 幸浩(東大)
「プラズマプロセス速度論解析の基礎とCVD/ALDへの展開」

 1) CVD/ALD法の基礎知識と応用用途
 2) CVD/ALD薄膜形成の速度論入門〜製膜速度の温度・濃度依存性〜
 3) 速度論から見たALDプロセスの理想特性と実際
 4) プラズマプロセスの速度論解析の基礎と応用
   〜プラズマによるラジカル生成とCVD/ALD薄膜形成への応用〜

●2015春(東海大)
「発光分光計測法によるプロセスプラズマの実践的計測の基礎と応用」

赤塚 洋(東工大)
第1部・基礎「電子温度・密度、ガス温度、ラジカル密度の測定」
第1部では衝突輻射モデルに基づいて、発光分光計測結果から電子温度・密度を導出するための基礎・方法を述べ、次に分子性気体放電のバンドスペクトル分光解析結果からガス温度の近似値としての回転温度を求める方法を述べ、最後にアクチノメトリー法を用いた分子気体放電プラズマ中の原子状ラジカルの測定方法を説明する。

布村 正太(産総研)
第2部・応用「プロセスモニタリングへの適用」
第2部では、プロセスプラズマへの適用例を紹介する。太陽電池用途のプラズマプロセスを取り上げ、発光分光計測に基づくプロセスモニタリングとプロセスの最適化手法について解説する。

●2016春(東工大)
高木 浩一 (岩手大)
「大気圧プラズマの基礎と農業への応用
〜超格安電源づくりから農作物生産や鮮度保持への活用まで〜」

 適切な高電圧電源を選ぶために
  1.1 はじめに
  1.2 直流高電圧電源の種類と用途
  1.3 交流高電圧電源の種類と用途
  1.4 パルス高電圧電源の種類と用途
  1.5 おわりに
 高電圧・プラズマの農業への利用
  2.1 はじめに
  2.2 発芽・生育促進への利用
  2.3 結実・キノコ収量改善への利用
  2.4 混載輸送への利用
  2.5 評価・制御手法;SPAD、PCR、ECモニタリング、養液の自動制御
  2.6 おわりに
 高電圧・プラズマの水産・食品分野への利用
  3.1 はじめに
  3.2 水産物の鮮度保持
  3.3 食品の機能性発現
  3.4 液状食品の有用成分抽出
  3.5 発酵食品のプロセス改善
  3.6 評価・制御手法;K値、SDS-PAGE、トリプシン酵素活用など
  3.7 おわりに

●2017春(パシフィコ横浜)
浜口智志 (大阪大)
「プラズマプロセス制御のためのプラズマシミュレーション基礎 〜表面反応の理解を中心に〜」

近年の半導体チップにおける3次元構造や新規材料等の導入により、その製造工程にも、従来技術の延長ではない新規プロセスの導入が求められている。 特に、新規の材料に対して原子スケールの精度での膜堆積や加工が求められる際には、プラズマに接する物質表面上の化学反応に関する深い理解が、新規のプロセス技術開発にも重要な役割を果たす。 本チュートリアルでは、プラズマから照射される各種粒子と物質表面との相互作用を解析するツールとしての分子動力学シミュレーションと第一原子(量子力学)シミュレーションについて概説し、対応する実験結果との比較の議論も含め、シミュレーション結果を実際のプロセス開発にどのように応用できるか、その方法論を詳細に議論する。 また、よりマクロなスケールを対象とした各種シミュレーション(形状シミュレーションからプラズマシミュレーション)についても、マルチスケール物理の観点から、その概要と相互関係について議論する。

●2018春(早稲田大学西早稲田キャンパス)
栗原 優 (株式会社日立製作所)
「プラズマ微細加工技術の基礎と応用 〜エッチング基礎から原子層エッチングまで〜」

プラズマエッチングは、三次元NAND型フラッシュメモリ等の半導体集積回路を開発、製造する際に必要不可欠な技術である。モノのインターネット(IoT)の普及により、データ処理を担う半導体集積回路の微細化/三次元化は益々進んでおり、最小加工寸法が10ナノメートルを切る今後の半導体製造プロセスには、原子層レベルの制御性でエッチングする技術が求められている。本講座では、プラズマエッチング技術について、エッチング反応の原理からエッチング装置、微細加工技術のトレンド、そして最先端の原子層エッチング開発事例までを解説する。

●2019春(東京工業大学大岡山キャンパス)
白藤 立 (大阪市立大学)
「気相からの薄膜形成の基礎 〜プラズマ屋の視点から〜」

気相からの薄膜形成(成膜と)技術は,機械部品のコーティング,集積回路の配線,ガスバリア膜などの様々な分野で活用されている.その際に遭遇するのが,「膜がこんな物性や構造になるのはなぜか」,「こんな膜を作りたいが,成膜条件はどう変えたらいいのか」という疑問だと思われる.こうした疑問に対して,正解に向けた取り組みをする際には,成膜プロセスに関する基本的な描像を原子・分子のレベルで持つことが必要と思われる.特に,プロセスの操作パラメータが多くなるプラズマプロセスの場合には,ある程度の知識を持たなければ,何を操作したら何に反映されるのかという見通しをたてるのが困難となる.そこで,本講義では,将来のプロセス設計に役立ててもらうために,成膜プロセスにおいて気相と表面で起こっている現象を,操作可能なパラメータ(圧力,流量,基板温度,パワーなど)と関連付けて,なるべくイメージとして身に付けていただけるように説明する.

●2021春(オンライン)
守屋 剛,狐塚正樹 (東京エレクトロン(株))
「半導体製造プロセスにおけるAI技術適用と機械学習の基礎」

近年のAI技術の発展は目覚ましく、様々な産業における応用がなされるようになり、我々の生活の中でも活用されるようになってきました。本講演では、特に、製造業におけるAI技術の適用にフォーカスし、事例紹介とともに、基本的な機械学習の理論についての解説を行います。

●2022春(青山学院大学相模原キャンパス+オンライン)
酒井 道 (滋賀県立大)
「プラズマプロセスと情報工学の融合」

プラズマプロセスにおいては、プラズマ生成のための電力投入量・気体種類・圧力・流量等のプロセスパラメータだけでなく、プラズマの反応容器形状やその内壁表面の付着物に至るまで、実に多くの外部パラメータが影響を与える。また、それらに起因して生じる電子密度・電子温度のパラメータ要因は複雑で、発生する分子性活性種の種類・密度も数10種類に達するため、その全体像を理解して制御することには多くの経験や知識が必要であるとされてきた。そのような課題に対して、近年大きく進展している機械学習等の情報学的手法を、プラズマプロセスにも適用しようという報告が最近出てきている。本リュートリアルでは、機械学習の手法の背景にある考え方やごく初歩的な手法の理解から始めて、プラズマプロセスに対して情報学的手法をいかに活用するか、その内容と留意点を講義する。合わせて、プラズマプロセス研究と情報工学研究の融合における研究成果を紹介するとともに、同様に複雑なプラズマプロセス以外の現象の理解にも資する内容を提供する。


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