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幹事長挨拶

幹事長就任のご挨拶

東京農工大学 大学院工学研究院 応用化学部門 熊谷 義直

 この度、結晶工学分科会幹事長を務めさせていただくこととなりました。私は、2014年1月に本分科会員となり、右も左もわからないうちに同年4月に幹事に就任しました。毎年夏に開催されている「結晶工学スクール(後述)」で新たに講師を務めることが直前に決まり、「これは使い勝手が良さそう…」、との理由で幹事に選出されたように思います。今年で幹事歴10年、ようやく分科会の事が少し分かってきたところで幹事長を務めることとなりました。自分の力に不安もありますが、とても名誉なことと感じております。本分科会の伝統を継承すると共に、激変の時代に対応するための改善、新しい提案等に取り組んでいきたいと考えています。これから 2年間、会員の皆様にはご理解とご協力いただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私が「結晶工学」という分野に触れたのは大学4年生の卒論の時です。もちろんそれ以前にも石拾いや食塩水から岩塩結晶を作ったりしたことはありましたが、数学・化学・物理学をベースとして結晶の工業生産を実現し、我々の社会を豊かにして持続性を持たせるという結晶工学に魅力を感じました。それ以降、大学院生、会社の研究員、大学教員と立場は変わってきましたが、取り扱う結晶、結晶成長方法が変わるのみで、結晶工学という軸はぶれていないように思います。気が付けば33年間も結晶工学を楽しませていただきました。大学に着任後は、少ない研究費を節約し、また学問として気相成長を解き明かすことをやってみようと一念発起し物理化学の勉強をやり直しました。また小型の気相成長装置を手作りで完成させ、熱力学解析と成長実験を両輪として装置構造・結晶成長条件を追求しました。それが極めて困難とされていた窒化アルミニウム(AlN)結晶の高速気相成長技術の実現に繋がりました。最近では、本手法で作製されたAlNからウェハが作製され、ウイルス不活性化用途の深紫外線発光素子量産で使用されるようになっており、少しは貢献できたのではないかと思っております。最近は、同じく熱力学解析をベースにパワーデバイス用途の酸化ガリウム結晶の気相成長に取り組んでいます。ガリウムの塩化物ガスを用いるハライド気相成長(HVPE)法や有機金属化合物を用いる有機金属気相成長(MOCVD)法による高純度結晶の高速成長を達成できました。特に後者は有機金属化合物と酸素を反応させるため、反応制御が難しいのでは?といった懸念や、結晶を成長できても炭素不純物が高濃度に取り込まれるのでは?とか、高速成長は難しいでしょう…といった意見も多くありましたが、熱力学解析と質量分析器を用いた分子種解析で一つ一つ課題を解決することで目的を達成できました。その過程では、多岐にわたる結晶成長に携わっている本分科会の幹事の方々や、本分科会が主催する研究会でお招きした講師の先生方との意見交換や問題解決のための取り組み方のディスカッションが非常に役に立ちました。結晶成長を学問で裏付けることは新規結晶の成長をアートからテクノロジーに昇華させるためには不可欠と再認識しました。
 さて、結晶工学分科会では、4月と6月に開催される研究会と、夏に開催される結晶工学スクール、11.12月に開催される若手研究者向けのポスター発表会&特別講演会、セミナーを毎年開催しております。コロナ禍もようやく落ち着きを見せ、昨年度より徐々に現地対面開催を基調とした会合スタイルに戻ってきております。研究会では、特定の分野の結晶成長・成長方法、結晶評価手法、デバイス応用等の中からテーマを選び、第一線で活躍されている研究者の方々にご講演をいただき、到達点、課題等を紹介いただくことで大変好評をいただいております。また、結晶工学スクールは、大学院生および企業の研究開発に新たに参加される方々を対象とし、(1)結晶成長、(2)構造解析、(3)電子・光物性について基礎的内容から実践に至るまでを3日間かけて学ぶことができる機会を提供しております。幹事会では今後もより良い企画を提供すべく議論を進めていきたいと考えております。何卒、宜しくお願い申し上げます。
2024年4月
 

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