結晶工学分科会について

1)本会の目的

本会は結晶工学に関する知識および技術の向上・発展に寄与し、会員相互の連絡をはかることを目的としています。

2)本会の主な事業

① 年間行事

結晶工学分科会では、結晶工学の最新の話題を広く討論する「結晶工学分科会研究会」、 初心者に結晶工学の基礎知識をやさしく提供する「結晶工学スクール」 、ややアドバンスな内容をじっくりと学ぶ「結晶工学セミナー」 、若手啓発的な講演会と分科会会員によるポスター発表会とを組み合わせた「結晶工学ⅹISYSE合同研究会」 などのイベントを開催し会員の要望に応えています。毎回、充実し、かつ、タイムリーな企画であると大好評で、テキストも重宝されています。

② 刊行物「クリスタルレターズ」

分科会からのお知らせの他、結晶工学に関する学術論文の投稿、話題の解説、実験上のちょっとしたアイデア、書評、国際会議報告など盛りだくさんの内容を読みやすく提供する本会の定期学術刊行物(年3回発行)です。もとは、「結晶工学ニュース」と称していましたが、1994年にクリスタルレターズと改題しました。

幹事長就任のご挨拶

結晶工学分科会 幹事長

東京農工大学
大学院工学研究院 応用化学部門
熊谷 義直

 この度、結晶工学分科会幹事長を務めさせていただくこととなりました。私は、2014年1月に本分科会員となり、右も左もわからないうちに同年4月に幹事に就任しました。毎年夏に開催されている「結晶工学スクール(後述)」で新たに講師を務めることが直前に決まり、「これは使い勝手が良さそう…」、との理由で幹事に選出されたように思います。今年で幹事歴10年、ようやく分科会の事が少し分かってきたところで幹事長を務めることとなりました。自分の力に不安もありますが、とても名誉なことと感じております。本分科会の伝統を継承すると共に、激変の時代に対応するための改善、新しい提案等に取り組んでいきたいと考えています。これから 2年間、会員の皆様にはご理解とご協力いただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私が「結晶工学」という分野に触れたのは大学4年生の卒論の時です。もちろんそれ以前にも石拾いや食塩水から岩塩結晶を作ったりしたことはありましたが、数学・化学・物理学をベースとして結晶の工業生産を実現し、我々の社会を豊かにして持続性を持たせるという結晶工学に魅力を感じました。それ以降、大学院生、会社の研究員、大学教員と立場は変わってきましたが、取り扱う結晶、結晶成長方法が変わるのみで、結晶工学という軸はぶれていないように思います。気が付けば33年間も結晶工学を楽しませていただきました。
 大学に着任後は、少ない研究費を節約し、また学問として気相成長を解き明かすことをやってみようと一念発起し物理化学の勉強をやり直しました。また小型の気相成長装置を手作りで完成させ、熱力学解析と成長実験を両輪として装置構造・結晶成長条件を追求しました。それが極めて困難とされていた窒化アルミニウム(AlN)結晶の高速気相成長技術の実現に繋がりました。最近では、本手法で作製されたAlNからウェハが作製され、ウイルス不活性化用途の深紫外線発光素子量産で使用されるようになっており、少しは貢献できたのではないかと思っております。
 最近は、同じく熱力学解析をベースにパワーデバイス用途の酸化ガリウム結晶の気相成長に取り組んでいます。ガリウムの塩化物ガスを用いるハライド気相成長(HVPE)法や有機金属化合物を用いる有機金属気相成長(MOCVD)法による高純度結晶の高速成長を達成できました。特に後者は有機金属化合物と酸素を反応させるため、反応制御が難しいのでは?といった懸念や、結晶を成長できても炭素不純物が高濃度に取り込まれるのでは?とか、高速成長は難しいでしょう…といった意見も多くありましたが、熱力学解析と質量分析器を用いた分子種解析で一つ一つ課題を解決することで目的を達成できました。その過程では、多岐にわたる結晶成長に携わっている本分科会の幹事の方々や、本分科会が主催する研究会でお招きした講師の先生方との意見交換や問題解決のための取り組み方のディスカッションが非常に役に立ちました。結晶成長を学問で裏付けることは新規結晶の成長をアートからテクノロジーに昇華させるためには不可欠と再認識しました。

 さて、結晶工学分科会では、4月と6月に開催される研究会と、夏に開催される結晶工学スクール、11.12月に開催される若手研究者向けのポスター発表会&特別講演会、セミナーを毎年開催しております。コロナ禍もようやく落ち着きを見せ、昨年度より徐々に現地対面開催を基調とした会合スタイルに戻ってきております。  研究会では、特定の分野の結晶成長・成長方法、結晶評価手法、デバイス応用等の中からテーマを選び、第一線で活躍されている研究者の方々にご講演をいただき、到達点、課題等を紹介いただくことで大変好評をいただいております。
 また、結晶工学スクールは、大学院生および企業の研究開発に新たに参加される方々を対象とし、(1)結晶成長、(2)構造解析、(3)電子・光物性について基礎的内容から実践に至るまでを3日間かけて学ぶことができる機会を提供しております。
 幹事会では今後もより良い企画を提供すべく議論を進めていきたいと考えております。何卒、宜しくお願い申し上げます。

2024年4月

2024年10月1日現在

結晶工学分科会幹事名簿 (2024年9月現在)

事務局

TEL:03-3828-7723(分科会直通) 
e-mail:divisions@jsap.or.jp

  • 幹事長

    熊谷 義直

    東京農工大学大学院 工学研究院

  • 副幹事長

    反保 衆志

    産業技術総合研究所

  • 会計・広告(代議員)

    出浦 桃子

    早稲田大学

  • 庶務・広報

    沓掛 健太朗

    名古屋大学 未来材料・システム研究所

  • 庶務・広報(プログラム編集)

    横田 有為

    東北大学 金属材料研究所

  • 編集長・企画

    川村 史朗

    物質・材料研究機構

  • 編集・企画

    今西 正幸

    大阪大学大学院 工学研究科

  • 編集・企画

    佐藤 隆

    住友化学株式会社

  • 企画・インターネット

    内山 裕士

    高輝度光科学研究センター

  • 企画・インターネット(プログラム編集)

    谷川 智之

    大阪大学

  • 企画(プログラム編集)

    澤野 憲太郎

    東京都市大学

  • 企画(代議員)

    杉山 弘樹

    日本電信電話株式会社

  • 企画

    杉山 正和

    東京大学先端科学技術研究センター

  • 企画

    須田 淳

    名古屋大学大学院 工学研究科

  • 企画(プログラム編集)

    鳥越 和尚

    ㈱SUMCO

  • 企画(代議員)

    西尾 譲司

    ㈱東芝 研究開発センター

  • 企画

    船戸 充

    京都大学 工学研究科

  • 企画

    飯村 壮史

    物質・材料研究機構

  • 企画

    安藤 敬

    ㈱Reseablic

  • 企画

    荒木 努

    立命館大学 理工学部 電気電子工学科

  • 企画

    富樫 理恵

    上智大学 理工学部 機能創造理工学科

  • 企画

    塚田 佳紀

    STR Japan 株式会社

  • 顧問

    尾沼 猛儀

    工学院大学 先進工学部応用物理学科

歴代幹事長

初代
筒井 俊正
(1970)
2代
高木 豊
(70.?-73.3)
3代
新関 暢一
(73.4-75.3)
4代
小川 智哉
(75.4-76.3)
5代
千川 純一
(76.4-78.3)
6代
飯塚 隆 
(78.4-80.3)
7代
高須 新一郎
(80.4-81.12)
8代
芦田 佐吉
(82.1-84.3)
9代
宮沢 靖人
(84.4-86.3)
10代
松井 純爾
(86.4-88.3)
11代
春日 正伸
(88.4-90.3)
12代
宮澤 信太郎
(90.4-92.3)
13代
藤本 勲
(92.4-94.3)
14代
佐藤 勝昭
(94.4-96.3)
15代
久保寺 憲一
(96.4-98.3)
16代
朝日 一
(98.4-00.3)
17代
松本 俊
(00.4-02.3)
18代
竹田 美和
(02.4-04.3)
19代
藤崎 芳久
(04.4-06.3)
20代
和田 隆博
(06.4-08.3)
21代
小野 春彦
(08.4-10.3)
22代
三宅 秀人
(10.4-12.3)
23代
酒井 朗
(12.4-14.3)
24代
土屋 朋信
(14.4-16.3)
25代
鍋谷 暢一
(16.4-18.3)
26代
大島 祐一
(18.4-20.3)
27代
田渕 雅夫
(20.4-22.3)
28代
尾沼 猛儀
(22.4-24.3)
29代
熊谷 義直
(24.3-)