基礎講座:薄膜の成長過程の解明と制御:薄膜のナノ構造を自由に制御するために

第42回 薄膜・表面物理 基礎講座(2013)

News Letter 開催報告

案内(PDF:98.8KB)

概要

協賛

日本物理学会,日本化学会,電子情報通信学会,電気学会,日本表面科学会,日本真空学会,日本顕微鏡学会,日本分析化学会,日本質量分析学会,日本金属学会,触媒学会,電気化学会,表面技術協会,高分子学会,精密工学会,日本結晶学会,日本結晶成長学会,日本磁気学会,日本セラミックス協会(依頼中)

概要

薄膜プロセスは,LSIからパワーエレクトロニクスまで,ナノ構造を制御して高性能・高機能デバイスを作製する際の要であり,電子物性やデバイス応用にあわせてさまざまな手法が用いられております.しかしながら,昨今開発スピードが重視され,創製やその評価にかかわる研究に重点がおかれ,薄膜プロセスのメカニズムの解明やその知見を元にした制御手法の研究についてはやや手薄になっている感があります.そこで,薄膜の成長過程の解明を切り口に成膜プロセスの制御について,横断的かつ系統的に議論を深めることで,基礎から応用まで,また,無機材料から半導体まで,成膜メカニズム解明における種々の知見から見い出される新たな制御手法やアイディアの創出をはかり,ひいては,薄膜開発のスピ−ドアップや新規薄膜の開発に資するべく,今回企画しました.
本基礎講座では,薄膜成長の研究において第一線でご活躍されております先生方に,まず,膜成長の基礎に関して2件,さらに,応用に関して4件(ITO膜、量子ドット,ナノカーボン,SiC膜等)展望していただきます.皆様の多数のご参加をお待ちしております.

日時

2013年11月25日(月) 10:00-17:20(受付開始 9:30)

場所

東工大蔵前会館ロイアルブルーホール
東京都目黒区大岡山2-12-1
TEL:03-5734-3737
東急大井町線・目黒線大岡山駅下車徒歩1分
http://www.somuka.titech.ac.jp/ttf/access/ (アクセスマップ)

 

プログラム

時間 講演題目 講師
10:00-11:00 薄膜作製展望:成膜過程における核生成過程の解明と制御の展開/総論 矢口 裕之(埼玉大学)
11:00-12:00 3次元ナノ構造の作成とその物性解析 田中 秀和(大阪大学)
12:00-13:00 昼休憩
13:00-14:00 ITO膜の成長メカニズムの解明やその制御 重里 有三
(青山学院大学)
14:00-15:00 量子ドットの創製プロセスの解明とその制御 荒川 泰彦(東京大学)
15:00-15:20 休憩
15:20-16:20 ナノカーボン(グラフェン、カーボンナノチューブ)の成長機構とその制御 吾郷 浩樹(九州大学)
16:20-17:20 SiCのエピタキシャル成長機構と欠陥低減化技術 土田 秀一(電力中研)

 

参加費

テキスト代、消費税含む

薄膜・表面物理分科会会員 * 応用物理学会会員 **
協賛学協会会員
学生*** その他
10,000円 15,000円 3,000円 20,000円

*薄膜・表面物理分科会賛助会社の方は,分科会会員扱いと致します.

**応用物理学会賛助会社の方は,応用物理学会会員扱いと致します.

***現在非会員の方でも,参加登録時に薄膜・表面物理分科会(年会費A会員:3,000円,B会員:2,200円)にご入会いただければ,本基礎講座より会員扱いとさせて頂きます.
http://www.jsap.or.jp/join/kojin.html より入会登録を行い,仮会員番号を取得後,本基礎講座にお申込み下さい.
入会決定後,年会費請求書をお送りいたします.(年会費を基礎講座参加費と同時にお振込なさらないで下さい)

定員

80名
受講費支払い順に受付け,満員になり次第締め切ります

参加申込締切

2013年11月18日(月)

参加申込方法

下記分科会ホームページ内の登録フォームにて参加登録してください.
https://annex.jsap.or.jp/phpESP/public/survey.php?name=HakuhyouKisokouza42

参加登録完了後,ご連絡いただいた期日までに,下記銀行口座に参加費をお振込みください.
原則として参加費の払い戻し,請求書の発行は致しません.
領収書は当日会場にてお渡し致します.

参加費振込期限

2013年11月22日(木)

参加費振込先

三井住友銀行 本店営業部(本店も可)
普通預金 9474715
(社)応用物理学会 薄膜・表面物理分科会
(シャ)オウヨウブツリガッカイハクマク・ヒョウメンブツリブンカカイ

企画に関する問合せ先

物質・材料研究機構 土佐 正弘
Tel: 029-851-3354 ex.6532
Fax: 029-859-2501
E-mail: tosa.masahiro@nims.go.jp

金沢大学 徳田 規夫
Tel: 076-234-4875
Fax: 076-234-4870
E-mail: tokuda@ec.t.kanazawa-u.ac.jp

参加登録に関する問い合わせ先

応用物理学会事務局 分科会担当
上村 さつき
Tel: 03-5802-0863
Fax: 03-5802-6250
E-mail: kamimura@jsap.or.jp

講演詳細

講演題目

薄膜作製展望:成膜過程における核生成過程の解明と制御の展開/総論

講師

矢口 裕之(埼玉大学)

薄膜形成過程の基礎に対する理解を踏まえて,薄膜作製をナノスケールで自由に制御する手法について検討する場を設けることを趣旨として総論的な観点から講演を行なう。したがって,講演題目中にある「核生成」については成膜における重要な過程の一つとしてとりあげるが,それだけに限定されることなく,薄膜作製に関する話題を展開していくことにしたい。本講演では,最初,表面への原子あるいは分子の吸着,表面からの脱離,表面拡散,核生成などの薄膜形成過程の基礎について概観する。次に,ナノスケールの薄膜作製を行う上で重要となる,表面の平坦性,界面の急峻性,結晶性,組成制御,歪みの影響などの事項について検討を行なう。さらに,我々がこれまでに行ってきた,IV族混晶半導体SiGe,希釈窒化物半導体GaPN,GaAsN,窒化物半導体GaN,InNなどのエピタキシャル成長を中心として,歪み系ヘテロ構造のコヒーレント成長,サーファクタントを用いた成長,成長中断にともなう組成制御への影響,基板の選択や作製条件の制御による準安定結晶構造薄膜の作製など,主に結晶系薄膜の作製を制御する手法の具体的な例について,薄膜形成過程の基礎を踏まえながら紹介する。

講演題目

3次元ナノ構造の作成とその物性解析

講師

田中 秀和(大阪大学 産業科学研究所)

金属酸化物は強磁性、強/高誘電性、超伝導、半導体機能など多彩な物性・機能を持つ興味深い物質群であり、不揮発性メモリやセンサーなど様々な用途への応用が期待されている。例えばFe3O4などは、スピン偏極率が大きく室温における高いトンネル磁気抵抗効果が期待され、NiO、TiOxなどでは抵抗性メモリ(ReRAM) デバイス応用が期待されている。酸化物ナノ構造の形成は、これらデバイスの将来の極微細・超高集積化デバイスへの展開に加え、ナノスケールのドメインを利 用した新規巨大物性探索・新規デバイス開発への期待も大きい。近年の酸化物薄膜・ヘテロ界面作製技術は、物質群を原子・分子層レベルで組み合わせ、多彩な 物性を制御し新機能材料を創出できるようになってきた。この薄膜成長方向への制御に加え、ナノリソグラフィーにより作成されたナノテンプレートと、パルズ レーザ蒸着法、スパッタ蒸着法を用いたサイドウオール薄膜結晶成長、自己組織化相分離現象等を融合することにより、位置・形状が任意に規定された3次元ナノ構造体(ナノウオール/ワイヤ、ヘテロナノウオール、ナノリング、ナノドット、ナノボックス、コア・シェルナノドット)が創製可能である。機能性酸化物3次元ナノ構造体の作製プロセスとそのナノ機能物性を紹介し、将来の展望について解説する。

講演題目

ITO膜の成長メカニズムの解明とその制御

講師

重里 有三(青山学院大学大学院 理工学研究科 機能物質創成コース)

多結晶ITO (Sn doped In2O3)およびアモルファスIZO (In2O3-ZnO)薄膜に関して、分光エリプソメトリ、X線光電子分光(XPS)、透過型電子顕微鏡(TEM)等による薄膜成長メカニズムの解析例を解説する。近年、透明導電膜を含む多層膜の光学特性に対して、極めて高レベルのものが要求されている。このために薄膜の成長方向に対する光学定数の分布も含めて、精密に光学特性を解析することは、様々な光エレクトロニクスデバイスの光学設計を行う上で必要不可欠である。今回は、分光エリプソメトリの測定データをベースとし、透明導電膜へ適用する場合にベストだと考えられる複数の関数を組みわせた光学モデルを用いたシミュレーションにより、薄膜成長過程における光学定数の変化に関する解析例を解説する。ターゲットにはそれぞれITO焼結体ターゲット(10wt.% : SnO2)、IZO焼結体ターゲット(10.7wt.% : ZnO)を用い、DCマグネトロンスパッタ法によって様々な膜厚で合成石英ガラス基板上に成膜した。作製したITO薄膜およびIZO薄膜に関して、光学モデル構造として単層モデル(IZO薄膜)とGradientモデル(ITO薄膜)を用いて光学特性の精密解析を行った。Gradientモデルは基板の膜厚成長方向に対して屈折率および消衰係数が指数関数的な変化があると仮定し、薄膜の上層と下層をそれぞれTop層とBottom層とし、異なる分散式を用いて定義した。またそれぞれ表面粗さを考慮して表面近傍ではTop層とVoid層を50%ずつ設定した。ITO薄膜ではTop層とBottom層に差異が出たのに対し、IZO薄膜では単層での解析ができたことからIZO薄膜の膜厚方向の均一性はITO薄膜よりもきわめて大きいということが判明した。さらに断面のTEM像との対応、不純物の表面偏析が薄膜成長によってどのように生じるのかに関するXPSの解析例も紹介し、表面の仕事関数と電気特性並びに光吸収スペクトルの相関に関しても議論する。これらを通して、多結晶とアモルファスの透明導電膜の成長メカニズムを考察する。

講演題目

ナノカーボン(グラフェン、カーボンナノチューブ)の成長機構とその制御

講師

吾郷 浩樹(九州大学先導物質化学研究所)

グラフェンやカーボンナノチューブに代表されるナノカーボンは、特徴的な低次元構造とそれを反映したユニークな物性から、大きな注目を集めている。グラフェンは、シリコンの100倍以上も高いキャリア移動度を示し、光透過性や機械的柔軟性を有するため、フレキシブルエレクトロニクスなどへの応用が期待されている。グラフェンの優れた特性を引き出し、応用へと発展させるためには、高結晶性で大面積のグラフェン膜が必要である。いくつかあるグラフェン合成法の中でも、高温下での触媒反応を用いる化学気相成長(CVD)法が、コスト、均一性、大面積化などの利点から最近の主流となりつつある。CVD成長では炭素固溶度の低い銅(Cu)が単層グラフェンの成長に適した触媒として広く用いられている。しかし、一般的な銅薄膜や銅ホイルは多結晶であるため、その上に成長するグラフェンも多結晶となってしまう。実際、暗視野TEM観察において1 mm程度の小さなドメインが多数集まってグラフェンシートを形成していることが明らかにされている。グラフェンのドメインバンダリーは、キャリア移動度を低下させるとともに、機械的強度の低下につながることが報告されており、バンダリーのない単結晶グラフェンのCVD成長法の実現が強く望まれている。我々は、サファイアや酸化マグネシウム基板上にエピタキシャル成長させた銅を触媒として、大気圧の熱CVDを行い、六員環の方位が揃った高品質の単層グラフェンの成長に成功した。触媒である銅の結晶面に依存して、グラフェンのドメイン構造が変化することも明らかにした。さらに、高温下における銅触媒上でのグラフェン成長のダイナミックスについても議論する。また、カーボンナノチューブに関しては、電子構造に大きな影響を与えるカイラリティや直径の制御を目指したナノチューブのCVD成長法について概説する。特に、我々が行ってきたサファイア上での単層カーボンナノチューブの水平配向成長とその展開について紹介する。

講演題目

SiCのエピタキシャル成長機構と欠陥低減化技術

講師

土田 秀一(電力中央研究所)

4H-SiC パワー半導体素子の開発において、素子活性層を形成するために、SiC基板に対してエピタキシャル成長を行うことが要求される。エピタキシャル膜の高品質化やドーピング密度制御のためにCVDが実質的に唯一の方法となっているが、SiCパワー半導体技術の広範囲での実用化に向けてSiCエピタキシャルウェハの低コスト化や高品質化が大きな技術課題として残されており、大口径基板に対してエピタキシャル膜を高い均一度で、高速かつ低欠陥密度で形成するための技術開発が望まれている。本講演では、4H-SiCエピタキシャル成長の基礎と現状として、一般的なSiCエピタキシャル成長方法を解説するとともに、高い成長速度を得るための原料ガス種や結晶成長条件、ならびに大口径基板に対する膜厚やドーピング密度の高均一化技術を議論する。また、結晶欠陥評価の基礎と欠陥低減技術の現状として、放射光X線トポグラフィ、フォトルミネッセンスイメージング、DLTSによる結晶欠陥評価、ならびに4H-SiCエピタキシャル膜に含まれる結晶欠陥の構造、分類、起源を解説するとともに、エピタキシャル成長や後プロセスにおける各種結晶欠陥の低減手法を議論する。合わせて、結晶欠陥評価技術の最近の進展を紹介する。

更新:2013/1/1