基礎講座:3Dプリンター技術の基礎と今後の発展 -薄膜・表面物理技術で拡がる可能性-

第43回 薄膜・表面物理 基礎講座(2014)

案内(PDF:446KB)

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概要

共賛

国立大学法人 筑波大学

協賛

日本物理学会、日本化学会、日本金属学会、日本表面科学会、電子情報通信学会、電気学会、日本真空学会、日本顕微鏡学会、 ナノテクノロジービジネス推進協議会、日本材料学会、日本セラミックス協会、粉体粉末冶金協会

概要

3D造形技術は半導体造形から金型作製まで、多くの産業のさまざまな分野での活用が広がり始めています。現在は積層造形技術を支える熱源として電子ビームやレーザーの技術に注目が集まっています。しかし、今後必要となる材料の範囲が大きく拡がることから、造形物の組成や力学的特性評価技術に加えて、界面制御技術・流体物理学など表面科学に基礎をおく幅広い要素技術の研究開発が不可欠になります。そこで本基礎講座では3D造形技術の基礎をなす積層技術の進展を紹介したのち、これら技術の今後の発展において解決すべき課題、さらに期待される薄膜・表面物理分野の貢献について解説します。またナノ構造を有する電子材料構築技術として注目を集めているナノ構造作製技術に関しても解説します。

本基礎講座は、積層造形技術の研究において第一線で活躍されている先生方に、ご講演を頂くとともに、参加皆様と総合討論を実施し、薄膜・表面物理技術の貢献分野を探索したいと思います。皆様の多くのご参加をお待ちしております。

日時

2014年11月17日(月) 10:00-17:00

場所

筑波大学 東京キャンパス文京校舎
(東京都文京区大塚3-29-1、TEL:03-3942-6805)
https://www.tsukuba.ac.jp/access/bunkyo_access.html(キャンパスアクセスマップ)
(地下鉄丸ノ内線茗荷谷(みょうがだに)駅下車「出口1」徒歩2分程度)
https://www.tsukuba.ac.jp/access/bunkyo_campus.html(キャンパスマップ)

 

プログラム

時間 講演題目 講師
10:00-11:00 3Dプリンターってなあに? 早野 誠治((株)アスペクト)
11:00-12:00 積層造形で何を作るか? 量産技術としての検討 中野 禅(産総研)
12:00-13:00 昼休憩
13:00-14:00 電子ビーム積層造形技術による金属系構造部材の創製 千葉 晶彦(東北大)
14:00-15:00 三次元光造形法と微粒子焼成法を用いた機能性セラミックス構造体の創製 桐原 聡秀(大阪大)
15:00-15:20 休憩
15:20-16:20 電子ビーム描画によるナノ金型の作製と極微細形状転写技術 海野 徳幸(東京理科大)
16:20-17:00 総合討論 講演講師

 

参加費

テキスト代、消費税含む

薄膜・表面物理分科会会員 * 応用物理学会会員 **
協賛学協会会員
学生*** その他
10,000円 15,000円 3,000円 20,000円

*薄膜・表面物理分科会賛助会社の方は分科会会員扱いといたします.

**応用物理学会賛助会社の方は,応用物理学会会員扱いといたします.
現在非会員の方でも,参加登録時に薄膜・表面物理分科会(年会費A会員:3,000円,B会員:2,200円)にご入会いただければ,本セミナーより会員扱いとさせていただきます.

http://www.jsap.or.jp/ より入会登録を行い,仮会員番号を取得後,本セミナーにお申込み下さい.

入会決定後,年会費請求書をお送りいたします. (年会費を基礎講座参加費と同時にお振込なさらないで下さい)

定員

120名(満員になり次第締め切ります)

参加申込締切

2014年11月10日(月)

参加申込方法

下記分科会ホームページ内の登録フォームにて参加登録してください.
https://annex.jsap.or.jp/limesurvey/index.php/557698/lang-ja
参加登録完了後,下記銀行口座に参加費をご連絡いただいた期日までにお振込ください.
原則として参加費の払い戻し,請求書の発行は致しません.
領収書は当日会場にてお渡しいたします.

参加費振込期限

2014年11月11日(火)

参加費振込先

三井住友銀行 本店営業部(本店も可)
普通預金 9474715
(社)応用物理学会 薄膜・表面物理分科会
(シャ)オウヨウブツリガッカイハクマク・ヒョウメンブツリブンカカイ

企画に関する問合せ先

筑波大学 数理物質系 佐々木 正洋
TEL: 029-853-5331
FAX: 029-853-5305
E-mail: sasaki@bk.tsukuba.ac.jp

日本電子㈱ 経営戦略室 飯島 善時
TEL: 042‐542‐2105
FAX: 042‐546-9732
E-mail: iijima@jeol.co.jp

参加登録問合せ先

応用物理学会事務局 分科会担当
小田 康代
Tel: 03-5802-0863
Fax: 03-5802-6250
E-mail: oda@jsap.or.jp

講演詳細

講演題目

3Dプリンターってなあに?

講師

早野 誠治((株)アスペクト)

米国オバマ大統領の2013年の「3Dプリンターによるモノづくり大国復権宣言」、またニール・カーシェンフェルド氏の「Fab」(ものづくり革命)やクリス・アンダーソン氏の「Makers」が出版されたことが、3Dプリンターの知名度を上げることになった。更に、マスコミも当該技術を3Dプリンターとして報道したことで、Additive Manufacturing (AM、3Dプリンター、付加製造)技術は3Dプリンターとして広く認識されることになったが、3DプリンターはAM技術の単なる愛称である。

さて、1980年の小玉秀男氏による特許出願から始まったAM技術は、人類の加工技術としての第三番目の加工法として発明された。第一の加工法である除去加工がマイナス加工、第二の加工法である成形加工を変形加工というのであれば、AM技術はプラス加工と言い換えることができるだろう。

AM技術は、日本国内では光造形法や積層造形法と呼ばれていたが、欧米ではもっぱらRapid Prototypingと呼ばれていた。しかし、2009年1月にフィラデルフィアで開催されたASTM国際会議に於いて、当該技術の呼称はAdditive Manufacturing (AM)技術に統一された。そして、AM技術の定義もプラス加工法を用いてコンピュータ上のモデルから立体を作るプロセスであることが規定された。また、その後に開催された会議で、AM技術は以下の7つの分類に分けられることも規定された。

◆ 液槽光重合: Vat Photo-polymerization
槽の中の光硬化性樹脂をUVレーザー等で選択的に硬化することで付加する方法
◆ シート積層造形法: Sheet Lamination
紙などのシート材料を積層して切削する方法
◆ 結合剤噴射: Binder Jetting
槽の中の粉末材料に糊を選択的にインクジェットで塗布することで付加積層する方法
◆ 材料押出: Material Extrusion
溶融させた材料を押出ノズルから選択的に付加堆積させる方法
◆ 材料噴射: Material Jetting
液化させた材料をインクジェットで選択的に付加堆積させる方法
◆ 粉末床溶融結合: Powder Bed Fusion
槽の中の粉末材料をレーザーや電子ビームで選択的に溶融させ付加積層する方法
◆ 指向性エネルギー堆積: Directed Energy Deposition
粉末材料をレーザーで溶融させながら選択的に付加堆積させる方法

本講座では、上述の各AM(3Dプリンター)技術とその最新動向に関して以下の項目に関して解説する。
•3Dプリンターって何?
•AM技術の応用と用途
•AM技術と装置の動向
•AM技術の市場動向
•AM技術を整理してみると
•日本のAM技術

講演題目

積層造形で何を作るか? 量産技術としての検討

講師

中野 禅(産総研)

1.本講演の目的

3Dプリンタ・Additive Manufacturing(AM)として知られている3次元の形状作製技術は、時に簡単に「なんでもつくれる」様な意味合いを持たれている。しかしながら特徴を理解し利用のための開発を進めなければ産業への貢献は得られない。この技術の特徴の一つである積層型・積み上げ型の形状作製を理解し、量産技術へと展開を目指す。現状で何を作るのが良さそうか、検討してみる。

2.概要

3Dプリンタは特に個人向けに廉価の装置も生み出され、個人ベースでの生産活動の方策や、新しいビジネス、またRapid prototype (RP), Rapid manufacturing (RM)として、迅速な生産提供のツールとして、そして新規の製品を生み出すような技術として考えられる。このように自在性が高い加工方法ではあるが、本当の意味で一つの技術ですべてをまかなえる手法と言えるのか?という議論は置き去りにされている。Additive Manufacturing (AM)装置は現状で7種に分類され、素材の状態も液体、線材、紛体、薄膜、と別れ、使える材料も、作れる形状も異なっている。技術の分化が既に始まっている。先述の多様な使い方をカバーするのは一つの技術ではなく、これからそれぞれに特化し開発される必要がある。
我々は、この技術を生産、とくに量産現場で利用することを考えている。今まで作れなかった製品を生み出す事に展開する技術として加工の仕組みが違い、新しい加工技術の拡がり、選択肢の増加として捉える。この時には、「積み上げる」という最大の特徴を活かすことが重要である。過去の切削は大きな塊から材料を減らし削り新しい表面形状を生み出していた減の加工法であり、成型系の加工法は型の隙間に材料を充填もしくは挟み込み、型の表面形状を転写していく体積変化の少ない零の加工法である。AMは積み上げる。何もなかったところに一つづつ積み上げて最後の一部分までを付け加えて形状を作る加の加工である。既存の加工は形状と共に表面を加工していたが、AMでは積み上げる素材の大きさの影響を受けながら表面が作られる。積み上げることにより、全体をとにかく積まないと形にならない。加工性を向上するには加工単位の削減、すなわち積み上げる体積を削減することが重要である。(実際の造形体積)/(見かけの製品体積)を小さくするのが良い。すなわち、バルクの塊より、シェル状や、内部に空間を持った構造、しかしながら強度等機能を生み出すラティス構造やポーラス構造を作ることがより有効と考えられる。既存加工法が3次元の表面を作っていたのと比較し、空間を作る技術として認知するとわかりやすい。空間・表面を高い付加価値のある新しい機能として利用するためには、表面の利用技術を含め、材料や加工法等の開発が求められている。

講演題目

電子ビーム積層造形技術による金属系構造部材の創製

講師

千葉 晶彦(東北大)

はじめに

電子ビーム積層(EBM)造形法は、三次元CADデータに基づく電子ビーム(EB)走査により、金属粉末を選択的に溶融・凝固させた層を繰り返し積層させて三次元構造体を製作する新たなネットシェイプ加工技術として期待されている。高出力のEBを高速で走査するため高速な造形が可能である。また敷き詰めた粉末床を深さ方向に効率良く溶融させることができ、2,000℃を超える高融点材料でも高密度に造形が可能である。さらに、高真空中で造形するため、酸化および窒化の影響がなく、高品質な金属製品の造形に適している。
本講演では、電子ビーム積層造形技術の概要について説明し、実際の応用例として、生体用Co-Cr-Mo合金、IN-718合金、汎用チタン合金のEBM造形についての話題を取り上げる。これらの合金のEBM造形後の力学特性、EBM造形で得られる特徴的な金属組織とその力学特性について解説する。

微細析出物形成と一方向結晶成長

EBM積層造形法がネットシェイプ加工技術にとどまらない可能性を有していると考える根拠として、造形後に形成される特徴的な微細組織がその一つに挙げられる。生体用Co-Cr-Mo(CCM)合金のEBM造形ままの組織(SEM像でおよびEBSD観察(講演にて示す)の結果を合わせると、組織は方向に成長した径1μm以下に形成するセル組織から構成されており、セル界面には微細なM23C6系炭化物(1μm以下の間隔でM23C6系炭化物が均一に分散析出)が形成している。通常の鋳造法で形成されるCCM合金の組織は、粗大なデンドライト組織であり、不均一に晶析出した粗大な炭化物からなっている。

EBM造形物の力学特性

CCM合金、純チタン、およびTi-6Al-4V合金のEBM造形まま材の力学特性を、引張り試験、疲労試験により評価を行った。その結果、いずれの合金においても、それぞれの合金の鋳造材および鍛造材としての応用に必要な規格値を超えた力学特性を示す。EBM造形後にそれぞれの合金に現れる固相変態を利用した組織微細化熱処理を施すことにより、結晶異方性が改善され、等方的で、高強度・高延性な力学特性に改善される。以上のように、EBM造形物の力学特性は、これまでの鋳造材を超え、鍛造材に匹敵すると言える。

講演題目

三次元光造形法と微粒子焼成法を用いた機能性セラミックス構造体の創製

講師

桐原 聡秀(大阪大)

現在までに自動制御の加工機械を用いた金属やセラミックス材料の3次元成型法が数多く考案されてきた。特に近年におけるコンピューター制御技術の発展に伴い、CAD/CAM/CAE(Computer Aided Design /Manufacturing/Evaluation)プロセスの高精度化が図られ、様々なナノ・マイクロレベルでの加工装置が実現するに至っている。その一つである光造形法は高分子製の3次元構造を高速作製する手法である。従来は工業製品の試作モデルの成型に用いられてきたが、著者らの研究グループでは高分子媒質にセラミック微粒子を分散させることで、誘電体の3次元構造を自在に造形する技術として確立した。本講演では誘電体の3次元構造により電磁波を空間的に制御するという発想をベースに、新しい電磁波制御材料として期待されているフォトニック結晶の開発について紹介する。フォトニック結晶は誘電体の周期的なパターンを有し、ブラッグ回折により電磁波を完全反射する機能材料である。意図的な構造欠陥の導入により、特定の波長を強く共振させることが可能であることが、これまでの研究で明らかになった。光や高周波の電磁波を効率よく制御できると考えられており、国内外において活発な研究が進められてきた。著者らは光造形法を活用した最近の研究において、マイクロメーターオーダーの誘電体周期構造を有するセラミック製フォトニック結晶の作製に成功し、次世代の電磁波として高い関心を集めるテラヘルツ波の制御に取り組んでいる。本講演では、光造形法の基本原理や材料作製の過程について解説するとともに、フォトニック結晶によるテラヘルツ波の制御についても詳細を述べる。さらに、本講演では光造形法を用いた、セラミックスや金属構造体の精密成型に関する一連の研究成果の中から、固体酸化物燃料電池の電極構造や、医療用人工骨の多孔構造を開発した事例についても紹介したい。

講演題目

電子ビーム描画によるナノ金型の作製と極微細形状転写技術

講師

海野 徳幸(東京理科大)

三次元形状(深さ階調)を有する金属ナノ構造体を用いた次世代デバイスに注目が集まっている。半導体デバイスはもちろん、プラズモンカラーフィルタなどの光学素子、あるいは生化学向けの表面増強ラマン散乱(SERS)センサーなど分野を問わず様々な場面での応用が期待されている。一方で、プラスチック基板上に電子デバイスを形成するプリンティッドエレクトロニクス(PE)と呼ばれる分野も低コスト・低環境負荷という点から、フレキシブルディスプレイや薄膜有機太陽電池などの需要の高まりと共に盛んに研究が進んでいる。従来、金属ナノ構造体を作製する手法は半導体プロセス(特にリソグラフィ及びリフトオフ技術)の応用が主であった。しかし、三次元形状を有する金属ナノ構造体の作製には幾度も同プロセスを繰り返す必要がある。これは、リフトオフ技術が1回で1レイヤー分(1段の高さ)の形成しかできないからである。そのため、パターンの重ね合わせ機構が必要になり、さらにスループットの低下を招いていた。また、従来の半導体プロセスはシリコンウェハを基板として用いることを想定しているため、プラスチック基板の熱的・化学的制約のためPE向けパターニング手法として適用が難しかった。これらの課題を解決しうる技術として本講演では、ナノインプリントリソグラフィ及びナノトランスファープリンティングを応用した極微細形状転写技術を紹介する。講演は次の3つの主題より構成される。
(1) 電子ビームリソグラフィによる三次元ナノ形状金型作製技術
(2) 酸化金属離型膜を用いたプラスチック基板上への新規金属パターニング技術
(3) 高スループット化のためのシームレスなロールナノ金型の作製技術とその応用。

更新:2014/1/1