セミナー:半導体GaNの基礎と応用 ― パワーデバイス開発のための合成・分析・構造設計技術 ―

第47回 薄膜・表面物理セミナー (2019)

詳細PDF:第47回薄膜表面物理セミナーポスター

参加登録サイトはこちら

III-V族半導体の一種であるGaNは、高温動作、飽和電子速度、最大電界強度に関してSiより優れた特性を有し、電圧変換や整流を担うパワーデバイスへの応用研究が産官学で進められています。GaNやSiCといったワイドバンドギャップ半導体は、電力損失の大幅低減や電力変換器の小型化を実現する「省エネルギーの切り札」とも言われています。製品化の観点ではSiCがやや先行しており、第40回薄膜・表面物理セミナーでは「半導体SiCの基礎と応用」というテーマを扱いました。今、GaNは青色発光ダイオードの材料として一躍脚光を浴び、結晶合成技術・評価技術ともに急速な進歩を遂げています。また、GaNはSiCよりも飽和電子速度が大きいことから、GaNデバイスは高周波通信分野へ展開され、5Gネットワークの本格的普及による世界的な市場拡大も見込まれています。本セミナーでは、この魅力的な材料であるGaNについて、第一線でご活躍されている講師の方々に最新の成果をご紹介頂きます。最新の研究動向を知りたい皆様や次世代を担う若手の皆様など多くの方々のご参加をお待ちしております。

日時:2019年7月26日(金) 10:00-17:30 (9:30 受付開始)

場所:東京理科大学 森戸記念館 第一フォーラム

(新宿区神楽坂4-2-2 ℡03-5225-1033)
アクセスマッップhttps://www.tus.ac.jp/tlo/new/pdf/event_20121030_map.pdf

プログラム

日時 講演テーマ(仮題) 講師(敬称略)

26

(金)

10:00-10:10 オープニング
10:10-11:00 WBGパワーデバイスの現状ならびに事業展開への課題
岩室 憲幸
(筑波大)
11:00-11:50 GaNの薄膜低温結晶成長技術とデバイス応用 藤岡 洋
(東大)
昼休憩 (70 分)
13:00-13:50 GaN-MOSFETにおける絶縁膜/GaN界面特性およびチャネル移動度の面方位依存性 出来 真斗
(名古屋大)
13:50-14:40 GaN結晶の転位検出と評価の現状と課題 石川 由加里
(JFCC)
休憩 (20 分)
15:00-15:50 GaN HEMTの高周波・高出力デバイスへの応用 吉田 成輝
(住友電工)
15:50-16:40 窒化物半導体の時間空間分解カソードルミネッセンス評価 秩父 重英
(東北大)
16:40-17:30 Naフラックス法とOVPE法によるGaNバルク結晶育成技術の新展開 森 勇介
(大阪大)

参加費,テキスト代,消費税を含む.

薄膜・表面物理
分科会会員*
応用物理学会会員**
協賛学協会会員
学生 その他
10,000円 15,000円 3,000円 25,000円

* 薄膜・表面物理分科会賛助会社の方は分科会会員扱いといたします.

** 応用物理学会賛助会社の方は,応用物理学会会員扱いといたします.

現在非会員の方でも,参加登録時に薄膜・表面物理分科会(年会費:正会員:2,200円(学生・院生:500円),準会員:3,000円(学生・院生:500円))にご入会いただければ,本セミナーより会員扱いとさせていただきます.

http://www.jsap.or.jp/join/index.html

より入会登録を行い,仮会員番号を取得後,本セミナーにお申込みください.(年会費をセミナー参加費と同時にお振込なさらないでください.)

定員:

100名 (満員になり次第締め切ります.)

参加申込期間:

2019年4月5日(金)~7月4日(木)

参加申込方法:

本ページ上部にある登録フォームから参加登録をお願いします.
参加登録完了後,ご連絡いただいた期日までに,下記銀行口座に参加費をお振込みください.
原則として参加費の払い戻し,請求書の発行はいたしません.
領収書は当日会場にてお渡しいたします.

参加費振込期限:

2019年7月18日(木)まで

参加費振込先:

三井住友銀行 本店営業部(本店でも可)
普通預金 口座番号:9474715
公益社団法人 応用物理学会 薄膜・表面物理分科会
シャ) オウヨウブツリガッカイ ハクマクヒョウメンブツリブンカカイ

企画に関する問合せ先:

物質・材料研究機構 永村 直佳
E-Mail: NAGAMURA.Naoka@nims.go.jp
滋賀医科大学 目良 裕
E-Mail: mera@belle.shiga-med.ac.jp

参加登録問合せ先:

応用物理学会 事務局 分科会担当 五十嵐 周
TEL: 03-3828-7723  FAX: 03-3823-1810
e-mail: igarashi@jsap.or.jp

講演詳細

講演題目

WBGパワーデバイスの現状ならびに事業展開への課題

講師

岩室 憲幸(筑波大)

 パワーエレクトロニクス(パワエレ)装置の性能向上のひとつに、装置の小型・軽量化が挙げられる。パワエレ装置の内部を見てみると、意外にも、部品がなにもない“空間”、さらには冷却フィンや送風ファンに代表される冷却器が装置体積の多くを占めていることがわかる。つまり現在のパワエレ装置は、パワーデバイスを冷やすために全装置体積のかなりの部分を費やしているのである。パワエレ装置を設計する上で重要なパラメーターが、パワーデバイス接合温度Tj(ジャンクション温度)である。このジャンクション温度Tjが、シリコン(Si)デバイスの場合、一般的に150℃~175℃を超えると半導体素子が熱暴走して破壊してしまう可能性が大きいため、絶対にジャンクション温度Tjが上記温度を超えないように設計する必要がある。このようにパワエレ装置の小型・軽量化を実現するには、“空間”を含めた冷却器の小型化が絶対条件であり、そのために熱発生源であるパワーデバイスの損失を低減しTjの上昇を抑える、なおかつ200℃以上の高いTjでも熱暴走しないことが必要である。そしてこの低損失化、高Tj化を実現する次世代パワーデバイスとして、ワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を用いたパワーデバイスの登場が期待されているのである。WBG半導体にはいくつかの種類があるが、パワーデバイス向けの材料として注目されているのは、4H-SiC(炭化珪素:以下SiCと略す)、GaN(窒化ガリウム)、Ga2O3(酸化ガリウム)、そしてC(ダイアモンド)であろう。これらの材料は、バンドギャップEgと、それに伴う破壊電界強度EcがSiに比べて桁違いに大きいのが特徴である。その中でも、最近SiCならびにGaNデバイスがパワエレ製品に搭載されるなど、その実用化が始まっている。しかしながら現状では、性能、信頼性、さらには価格の面で市場の要求に十分応えられているとは言えない。ある調査会社の調査結果によると、2017年のパワーデバイス市場は99%がSiデバイスで占められており、また2030年においてもSiパワーデバイスの比率は依然として約90%を占める、と予想されている。本稿では特に最近のSiCならびにGaNパワーデバイスについて取り上げ、その最新技術や解決すべき課題について述べる。

講演題目

GaNの薄膜低温結晶成長技術とデバイス応用

講師

藤岡 洋(東大)

 GaNパワーデバイスの開発は通常MOCVD法を用いて行われているが、有機金属原料からの炭素汚染など多くの解決すべき問題点が報告されている。最近、有機原料を用いないスパッタリングをベースとするPSD(Pulsed Sputtering Deposition)法が開発され、極めて品質の高いGaN結晶が低温で実現できることがわわかってきた。PSD法を用いて作成した無添加のGaN中の浅いドナーとなる酸素やSiの濃度は5×1015 cm-3以下であり、PSD結晶は極めて高純度であることがわかった。また、2 × 1016 cm−3 までSiのドーピングをおこなった試料は1240 cm2V−1s−1という高い移動度を示した。さらに高濃度までドーピングを行うと5 × 1020 cm−3まで安定に再現性よくSiのドーピングができ、1.6 × 10-4 Ωcmというこれまで報告されたことがない低い抵抗率が実現された。また、p型GaNやn型AlNに関しても高い移動度を持つ高品質材料が実現でき、PSD法が高純度窒化物薄膜の低温成長に適した手法であることがわかった。これまでにダイオードやトランジスタなど各種デバイスを用いてPSDの素子応用へのポテンシャルが確認されている。高い成長速度を維持したまま、高純度の窒化物エピタキシャル膜を安価に低温成長できるというPSDの特徴はパワーデバイス作製プロセスにとって有用であり、今後、素子応用面での開発が期待される。

講演題目

GaN-MOSFETにおける絶縁膜/GaN界面特性およびチャネル移動度の面方位依存性

講師

出来 真斗(名古屋大)

 近年,GaN-MOSFETの実現に向けた研究が盛んに行われている。しかし、極性面であるc面が多く研究されている反面、非極性面や半極性面を用いた報告は少ない。4H-SiCではMOS構造の界面準位密度やMOSFETのチャネル移動度に対して面方位依存性が詳細に調査されており、GaNにおいてもこれらを調査することは縦型MOSFETの高性能化に向けて必要不可欠である。我々はm面GaN基板のオフ角によりエピ層の不純物濃度を制御できることを報告しており、本報告ではm面およびc面に作製した横型MISFETのチャネル移動度について報告する。m面(c軸方向−5°オフ)およびc面(a軸方向0.4°オフ)低抵抗GaN基板上にMOVPE法により意図的なドーピングをしないGaNを5µm成長した。Siをイオン注入しソース・ドレイン領域を形成し、ゲート絶縁膜として熱ALD法により基板温度260℃にてTMA、H2O を用いてAl2O3を50nm堆積した。ソース・ドレイン領域にTi/Al、ゲート電極としてNi/Auを堆積し、蓄積型横MISFETを作製した。金属の堆積には全てEB蒸着装置を用いた。
MISFETと同条件にてn-GaN(Si:4×1016 cm−3)上にAl2O3を製膜し、作製したMISキャパシタの界面準位密度分布を評価した結果、コンダクタンス法よりEc-0.4eV付近ではm面で1011eV-1cm-2未満とc面と比較して低く見積もられた。またTerman法よりEc近傍ではどちらも1012 eV-1cm-2程度分布していることが確認された。MISFETの伝達特性よりm面の閾値電圧VTHはc面と比較して1V程度高く、これはMISキャパシタのフラットバンド電圧の差とほぼ一致しており、絶縁膜の正の固定電荷密度がm面において低いと考えられる。ドレインコンダクタンスから求めた実効チャネル移動度μEFFの表面電子密度(Ns)依存性を評価した結果、μFEと同様にμEFFの最大値はm面で高い値であるものの、低Ns(<2×1012 cm−2)領域においてはc面の方が高いことが明らかになった。この領域ではクーロン散乱が支配的であり、散乱中心密度がc面で低いと考えられる。MISキャパシタにおいては、界面準位密度および固定電荷密度がm面で低いのに対して、FETのサブスレッショルドスウィングはc面で低い値を示しており、FETのプロセス中に導入された欠陥密度がm面で高く、散乱に寄与していると考えられる。一方、NSの高い領域ではフォノンあるいは表面ラフネスによる散乱が支配的であり、この領域における移動度はm面で高く、これらの散乱の影響がc面と比較して小さいことが示唆された。

講演題目

GaN結晶の転位検出と評価の現状と課題

講師

石川 由加里(JFCC)

 SiC、GaN等のワイドバンドギャップ半導体は、次世代パワーデバイス用半導体として期待されている。しかし、転位がないことが前提のSi結晶とは異なり、SiCやGaN結晶には転位が高密度に内在している。高品質な種結晶の供給や安定した結晶成長が難しいことに加え、結晶本来の物性に由来した欠陥の発生もその原因となる。SiCでは、数多くの結晶形があるが、その生成エネルギー差が小さいために多形が生じ易い、基底面転位が容易に拡張して積層欠陥を生成するといった問題がある。一方、GaNでは、不純物の取り込みにより格子定数が大きく変化するためホモ成長であってもミスフィット転位が生じやすい。このことから、SiCやGaN結晶の転位密度を0にするには長い時間を要することが自明なため、結晶の0転位化を待ってデバイスの市場投入をするのではなく、デバイス性能や寿命に問題を引き起こす転位(キラー転位)を削減して市場投入することが現実解として認められている。キラー転位の削減は、キラー転位の同定および結晶成長条件とキラー転位発生の相関の解析等がなされた上で可能となる。SiC結晶の場合、市販結晶の成長法が昇華法に限られているため品質のばらつきが小さい上に、パワーデバイス用途の開発の歴史が長いため,、キラー欠陥の同定→削減のサイクルは繰り返されており、現在は基底面転位の拡張による積層欠陥の発生の抑制が課題となっている。一方、GaN結晶は成長法が多岐に渡るうえ、異種結晶上に成長することも多く成長中の転位の反応・合成が高確率で起きており、複雑なバーガースベクトルを持った転位の発生や様々な伸展方向の転位の存在などSiC結晶に比べ転位種のバリエーションが遥かに大きい。加えて、成長法毎に結晶に含まれる転位の種類(バーガースベクトル・転位線伸展方向)や種別割合が異なり、その検出と評価は容易ではない。
本講演では、SiCにおける転位の検出と分類法と比較しながら、GaNウエハ全域の転位を検出し分類できるエッチピット法、転位構造の評価法として透過型電子顕微鏡を用いた解析を中心に紹介するとともに、非破壊評価法であるCLや多光子PLとの整合性についても触れる。また、転位の分類の精度に影響を及ぼすパラメータを明らかにし、GaN結晶中の転位分類との評価法の今後の課題について述べる。

講演題目

GaN HEMTの高周波・高出力デバイスへの応用

講師

吉田 成輝(住友電工)

 現在、急増し続ける通信トラフィックへ対応するために第五世代移動通信、5Gの開発が進められている。5Gの本格運用に向けて様々な技術の検討が進められているが、中でも基地局向け増幅器は5Gシステムの根幹を担う技術である。5Gではこれまでよりも高い周波数で動作することが求められており、当社では基地局向け増幅器のさらなる高周波・高出力化に取り組んでいる。
基地局向け増幅器には、これまでSi LDMOSやGaAs HEMTが数多く使用されてきたが、GaN HEMTがその材料特性から注目されている。GaNは破壊電界が高く、飽和電子速度が速いことから、SiやGaAsよりも高周波・高出力化に有利である。当社では,他社に先駆けGaN HEMTを商品化し、GaN HEMTの市場を開拓してきた。現在、基地局向け増幅器に占めるGaN HEMTの割合は増加しており、5Gの普及とともに今後も増加していくと予想される。
本講演では、基地局向けGaN HEMTの構造と特徴、課題について紹介する。GaN HEMTの課題の一つに電流コラプスによる出力低下がある。電流コラプスは、GaN HEMTと表面保護膜の界面に電荷が捕獲されることが原因と考えられている。当社では電流コラプス低減のためにGaN HEMTの表面保護膜の開発に取り組んでおり、現在までの結果を報告する。

講演題目

窒化物半導体の時間空間分解カソードルミネッセンス評価

講師

秩父 重英(東北大)

 パワーデバイス開発のための合成・分析・構造設計技術の一環として、局所発光ダイナミクス計測の必要性について少数キャリア寿命の観点から説明し、時間空間分解カソードルミネッセンス(STRCL)法および装置について紹介する。そして、GaNやAlGaN、InGaN混晶の計測により得られる物理情報の意味と、そこから考えられる、基板の持つ僅かなモザイクや結晶表面の構造が、成長薄膜に及ぼす影響について議論する。
半導体薄膜や量子ナノ構造における局所的な発光ダイナミクスを把握することは、結晶、薄膜やナノ構造の構成元素や不純物の不均一取り込みに因る、混晶組成の不均一性や膜厚の不均一性、電荷分布の不均一性、またそれらのデバイス特性への影響を明らかにする上で重要である。
近年、GaNパワーデバイス研究開発の進展が著しく、転位や積層欠陥のような構造欠陥だけでなく、電子および光デバイスの特性を究極的に司る、点欠陥起因のShockley-Read-Hall (SRH) 型非輻射再結合中心(NRC)の起源や分布を知る事が重要なテーマとなってきている。
我々は、励起対象半導体のバンドギャップに制限が無いこと、電子線の集束技術には定評があること等から、ワイドバンドギャップ半導体の局所励起には集束電子線が適していると考え、モード同期チタンサファイヤレーザの第3高調波により金属を光励起してパルス電子線を得る「フェムト秒レーザ励起パルス光電子銃」を開発し、それを走査型電子顕微鏡/カソードルミネッセンス複合装置に組み込む事によってSTRCL計測装置を構築し、ワイドバンドギャップ半導体の評価を行ってきた。
本セミナーでは、パワーデバイス用途を重視した、GaNのSTRCL計測例を紹介する。例えば、貫通転位密度を低く抑えたGaNにおいて、クラックや転位ループ近傍において非輻射再結合が顕著な場合の発光イメージングや局所ダイナミクス、積層欠陥(WZ-GaNとZB-GaNの界面)近傍でのエネルギー移送を含む発光ダイナミクスに関するデータを紹介する。また、表面構造に敏感なAlGaN混晶、InGaN混晶の成長時に起きる組成変調やNRC濃度の変化について紹介する。

講演題目

Naフラックス法とOVPE法によるGaNバルク結晶育成技術の新展開

講師

森 勇介(大阪大)

 GaNウエハ作製用のバルクGaN単結晶として重要な要件は、歪等が少なく高品質であること、大口径であること、そして低コストであることが挙げられる。現在、実用化されている基板ウエハ用GaN結晶育成法としては、気相成長法であるHVPE法が主流である。HVPE法では成長速度が速いという特徴があるものの、異種基板を用いているため、結晶性の向上には限界があり、現状技術の延長では高品質・大口径・低コスト化の実現は困難とされている。一方,液相法であるアモノサーマル法やNaフラックス法は、気相法よりも成長速度が遅いが、原理的に成長環境が平衡状態に近いことから、何れの方法においても、HVPE法よりも結晶の高品質化が実現されている。そこで大阪大学ではNaフラックス法で作製した高品質GaN結晶を気相成長法の種結晶として用い、OVPE法によりバルクGaN結晶を成長することで、高品質GaNウエハの実用化を実現しようと研究開発を行っている。
大阪大学では、独立した複数のポイントシードからNaフラックス法によりGaN結晶を成長・合体・単一化させ、ポイントシードが形成されているサファイア基板からの剥離で低歪化するという全く新しい技術により、大口径・高品質GaN種結晶育成技術を研究開発している。気相成長法によるバルクGaN結晶成長のためのGaN種結晶開発においては、種結晶となるGaN結晶の格子定数を制御・均一化する必要がある。そのために、ポイントシード法でGaN結晶を成長させる際に横方向成長を促進することで、結晶内で格子定数が均一なGaN結晶の作製に成功している。多波回折を用いた高精度X線トポグラフィによる評価から、転位密度は概ね103~105 cm-2程度であることが明らかになった。また、ダイオードを作製してのI-V特性評価やC-AFMによる評価結果から、横方向成長の促進はリーク電流を低減できることが明らかになってきた。
大阪大学で研究開発されているOVPE法は実用化されているHVPE法と比較して、反応後の副生成物が水であるため装置内で堆積せず、1200℃以上の高温成長が可能になるなどの特長を有する。一方で、成長中に多結晶が生成するという課題があった。最近、CH4添加によりこの多結晶生成が抑制でき、2インチ化に成功している。また、結晶性を維持したまま高い酸素濃度添加(~1021 atoms/cm3)が可能で、その結果、低抵抗化(10-4 Ω・cm台)が実現されている。

更新:2019/3/25