Monthly Archives: 1月 2007

表面・ナノ科学シンポジウム2007

2007年1月23~26日、ホテル安比グランド

更新:2007/1/23

9th International Conference on Atomically Controlled Surfaces, Interfaces and Nanostructures (ACSIN-9)

詳細

9th International Conference on Atomically Controlled Surfaces, Interfaces and Nanostructures (ACSIN-9)

2007年 11月11~15日、東京大学 駒場リサーチキャンパス コンベンションホール

更新:2007/1/1

平成19年秋季講演会シンポジウム

ナノスケール構造制御技術の最前線

日時:2007年9月6日
場所:北海道工業大学

更新:2007/1/1

基礎講座:量子構造の基礎から応用まで

第36回 薄膜・表面物理 基礎講座(2007)


協賛

日本物理学会、日本化学会、日本金属学会、日本表面科学会、電子情報通信学会、電気学会、触媒学会、日本真空協会、電気化学会、表面技術協会、日本顕微鏡学会、高分子学会、精密工学会、日本結晶学会、日本結晶成長学会、日本応用磁気学会、日本セラミックス協会、日本放射光学会(依頼中)

概要

ナノテクノロジーの進展とともに、ナノ~量子構造を利用した新しいデバイスの提案・開発が急速に進んでいます。本講座では、大学院学生、企業等の研究者を対象とし、量子構造の物理(電子閉じ込め効果など)、作成法、及び評価法に関して基礎から説明します。さらに、それらを利用した各種デバイスの原理、及びその現状と将来展望について学んでいきます。特に、量子構造のさまざまな形態(ドット、ワイア、ウェル、3Dナノ構造)が、どのようにデバイスに適用されるかを基礎から理解することを目的とします。講師として、第一線でご活躍の著名な研究者を招き、斬新で活発な議論を行っていきたいと考えています。皆様方のご参加を心よりお待ちしております。

日時

平成19年 11月 8日 (木) 10:00 – 17:00
9日 (金) 9:00 – 16:45

場所

東京理科大学(神楽坂キャンパス/森戸記念館・第二フォーラム)
東京都新宿区神楽坂 4-2-2 TEL: 03-5228-8110 (内線 1697 )
http://www.tus.ac.jp/info/setubi/morito.html
JR 総武線、地下鉄有楽町線、東西線、南北線飯田橋駅下車 徒歩5分

 

プログラム(題目をクリックすると要旨がご覧になれます)

11月8日(木)
日時 講演題目 講師
10:00~11:15 総論・量子構造の基礎:電子構造 樽茶清悟(東京大学)
11:15~12:30 総論・単分散ナノ粒子の合成とその物性 瀬戸章文(金沢大学)
12:30~13:30 昼食
13:30~14:30 単一単層カーボンナノチューブの基礎物性評価 村越 敬(北海道大)
14:30~15:30 カーボンナノチューブ合成・評価法の現状と課題 本間芳和(東京理科大)
15:30~16:30 休憩
16:30~17:00 FinFETとシリコンナノワイヤトランジスタ 平本俊郎(東京大学)

 

11月9日(金)
日時 講演題目 講師
9:00~10:00 半導体量子ナノ構造の光検出器・発光素子応用 榊 裕之(豊田工大)
10:00~11:00 有機ナノデバイスとSPM評価 橋詰富博(日立 基礎研)
11:00~12:00 フォトニック結晶による光制御の現状と展望 野田 進(京都大学)
12:00~13:10 休憩
13:10~14:10 強相関スピントンネル接合の界面制御 赤穂博司(産総研)
14:10~15:10 分子およびナノ磁性体の化学構築とその展開 阿波賀邦夫(名古屋大学)
15:10~15:30 休憩
15:30~16:45 総論・グラフェンの物理と最近の発展 安藤恒也(東工大)

 

 

参加費

テキスト代、消費税含む

薄膜・表面物理分科会会員 * 応用物理学会会員 **
協賛学協会会員
学生 その他
15,000円 20,000円 3,000円 25,000円

* 薄膜・表面物理分科会賛助会社の方は、分科会会員扱いといたします。
** 応用物理学会賛助会社の方は、応用物理学会会員扱いといたします。

定員

100名

現在非会員の方でも 参加申込時に薄・表分科会 (年会費 A:3,000円,B:2,200円)にご入会いただければ、本講座より会員扱いとさせて頂きます。 下記応物ホームページより入会登録を行い、仮会員番号取得後、本講座 に参加お申し込み下さい。 入会決定後、年会費請求書をお送りいたします。本講座参加費と同時にお振込なさらないで下さい。
http://www.jsap.or.jp/

参加申込方法

下記分科会ホームページ内の登録フォームにて参加登録してください。
https://annex.jsap.or.jp/phpESP/public/survey.php?%20name=HakuhyouKisokouza36
参加登録完了後、下記銀行口座に参加費をご連絡いただいた期日までにお振込ください。原則として参加費の払い戻し,請求書の発行は致しません。
*領収書は当日受付にてお渡しいたします。

参加費振込先

三井住友銀行 本店営業部(本店も可)
普通預金  9474715
(社)応用物理学会 薄膜・表面物理分科会
(シャ)オウヨウブツリガッカイハクマク・ヒョウメンブツリブンカカイ

参加申込締切

2007年11月5日(月)

内容問合せ先

吉村雅満(豊田工業大学)
TEL:052-809-1851
FAX:052-809-1851
E-mail:yoshi@toyota-ti.ac.jp

笹川 薫(コベルコ科研)
TEL:078-992-6081
FAX:078-992-6314
E-mail:sasakawak@kobelcokaken.co.jp

参加問合せ先

〒 102-0073 東京都千代田区九段北 1-12-3
井門九段北ビル 5F
応用物理学会 分科会担当 伊丹
TEL:03-3238-1043
FAX:03-3221-6245
E-mail:divisions@jsap.or.jp

講演詳細

講演題目

総論・量子構造の基礎:電子構造

講師

樽茶清悟(東京大学)

量子構造は、それ自体低次元系(0-2次元系)の物性やその中に閉じ込められた電子の相互作用などの研究対象として興味深いが、最近では、量子ドット構造の特徴を巧みに利用して、電荷、軌道、スピンなどの量子力学的自由度を自在に制御することも可能になってきた。その結果、とくにスピン自由度は極めて安定で環境の影響を受けにくいこと、スピンを利用してスピンフィルターや電子整流などのデバイス的動作が可能であることなどが分かってきた。さらには、スピンのコヒーレンスを情報に応用することによって、量子力学を直接利用した情報処理(固体量子情報処理)も考えられている。本講演では、このような量子ドット構造の物理と技術を中心として、様々な素材や方法で作られている量子ドットの特徴、量子情報処理への応用などについて紹介する。

講演題目

総論・単分散ナノ粒子の合成とその物性

講師

瀬戸章文(金沢大学)

量ナノテクノロジーの進歩により、ナノ材料の構成要素(building blocks)として用いられる、直径が約20nm以下のナノ粒子が注目されている。これらのナノ粒子においては、電子状態の変化に伴う特異な電磁気的効果(量子効果)の発現や、表面原子が占める割合の増大(表面効果)などによって、バルク素材には無い優れた特性を持つことが知られている。これらのナノ粒子の合成法として、固相法や粉砕法などのいわゆるブレークダウンでは、得られるナノ粒子のサイズに限界があり、原子・分子からナノ粒子を形成するビルドアップ法の適用が必要となる。また、得られるナノ粒子のハンドリング技術としても、平均粒径の制御だけでなく、分散性、球形化、二次凝集の抑制や表面修飾など、粒子の形態制御に関する新たな技術の開発が重要となっている。ここでは、種々のプロセスによる単分散ナノ粒子の合成とその物性(光学・磁気・化学特性)に関して、最近の研究例を中心に紹介する。

講演題目

単一単層カーボンナノチューブの基礎物性評価

講師

村越 敬(北海道大)

単層カーボンナノチューブの電子構造は、理想的な1次元量子細線としての特徴を有し、それらがチューブの直径とカイラリティによって敏感に変化することが知られている。将来のナノデバイス構築には、この構造敏感な特性の把握・利用が必須となってくる。最近になって、炭素原子数個レベルでの構造の差が、予想よりも大きなエネルギーレベルの差異となってくることがわかってきた。孤立分散させた単一ナノチューブのラマン散乱強度をチューブの電子密度を制御しながら測定し、そのカイラリティ依存性を検討した結果、直径の逆数に比例してチューブの仕事関数が大きく減少することが示された。この物性の差を利用することにより、チューブを高い精度をもって分離することが可能となる。さらに金属ナノ構造と単一チューブを組み合わせることにより興味深い光物性が発現することもわかってきた。

講演題目

カーボンナノチューブ合成・評価法の現状と課題

講師

本間芳和(東京理科大)

カーボンナノチューブ(CNT)はそれを構成するグラファイトシートの巻き方(キラリティ)によって、金属にも半導体にもなるという特異な性質を持つ物質である。さらに、ナノメータの極微細な直径でありながら、長さはミクロンからミリメータになる擬一次元のナノ構造体であり、リソグラフィ(トップダウンテクノロジー)を用いて微細デバイスを形成することができる。このため、微細デバイスのビルディングブロックとして、ボトムアップ・トップダウンテクノロジーの融合を実現する材料として期待されている。しかし、その実現にはCNTの高度な合成制御技術の確立が不可欠である。本講演では、デバイス応用に向けた基板上でのCNT合成技術と、それを支える計測・評価技術に焦点を絞り、最近の研究の進展を概観する。また、合成制御の基礎となるCNTの成長機構に関して、ナノ触媒研究の進展に基づいた最新の理解を紹介する。

講演題目

FinFETとシリコンナノワイヤトランジスタ

講師

平本俊郎(東京大学)

大規模集積回路(VLSI)を構成するMOSトランジスタは,性能向上のため急激に微細化が進んでおり,現在ではゲート長約35nmのMOSトランジスタが量産されている.さらなる微細化を進めるためには,従来のプレーナ構造トランジスタを単に微細化するだけでは性能は向上せず,FinFETのような三次元構造デバイスからさらにはナノワイヤトランジスタへと構造が進化していくものと考えられている.FinFETあるいはナノワイヤチャネルの線幅が10nmを下回る領域にはいると,室温においても各種量子効果等が発現し,デバイス特性に大きな影響を与える.すなわち,将来のVLSIデバイスを設計するためにはナノデバイス物理の理解が必須であり,これらを積極的に利用した高性能デバイスの実現が望まれる.本講演では,シリコンナノデバイス中の物理現象について述べるとともに,VLSI向けトランジスタの将来動向について概説する.

講演題目

半導体量子ナノ構造の光検出器・発光素子応用

講師

榊 裕之(豊田工大)

量子井戸・量子細線・量子ドットなど、半導体ナノ構造の光検出器や発光素子への応用に関し、動作原理と開発状況を中心に、将来展望も含めて概説する。特に、バンド間の光学励起を用いた検出器、レーザ、単一光子の検出器や発生器、サブバンド間の励起を用いた赤外領域の検出器やレーザや波長変換素子に関し、特色と課題について述べる。また、超高速のトランジスタや共鳴トンネル素子などのサブミリ波領域への展開にも触れ、光と電波の境界がどのように埋められてきたかを、考察する。

講演題目

有機ナノデバイスとSPM評価

講師

橋詰富博(日立 基礎研)

有機分子、有機ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン、有機ナノ薄膜など、有機材料を用いた有機ナノデバイスが最近再注目を浴びている。有機デバイスへの期待は、有機材料の持つ多様性と自由度に起因した革新的な特性を持つデバイスが生み出される可能性にあると考えられる。これらの有機ナノデバイスでこれまでに得られている特性の概略を述べるとともに、特に、有機薄膜トランジスタ応用に必要な技術課題とその解決に向けた理論研究、SPM(走査プローブ顕微鏡)による評価研究の一環を紹介する。

講演題目

フォトニック結晶による光制御の現状と展望

講師

野田 進(京都大学)

フォトニック結晶は、光を自在に制御可能な光ナノ構造として大きな可能性をもつ。本講演では、フォトニック結晶の現状と将来展望について紹介する。特に重要な話題としては、(i)光を一瞬の間、止めておく、あるいは蓄積することを目指した高Q値ナノ共振器の進展に関すること。現在では、Q値200万が実現。(ii)従来はその制御が、極めて困難であった自然放出の制御が、フォトニック結晶の進展によって可能になってきたこと。特に、不要な発光を禁止し、そのエネルギーを真に必要な発光に使うことは極めて重要。(iii)全く新しいフォトニック結晶レーザの進展。大面積で、単一縦・横モードの動作が可能なレーザが実現されつつあること。以上を例に、フォトニック結晶の進展と将来展望を紹介したい。

講演題目

強相関スピントンネル接合の界面制御

講師

赤穂博司(産総研)

電子の持つ「電荷」と「スピン」の自由度を同時に利用した新しいナノデバイスとして、スピントロニクスが注目されている。特に、電子のスピンを反映した伝導現象として、スピントンネル効果による磁気抵抗TMRがあり、活発に研究開発が進められている。一方、ナノレベルでの微細な構造が制御されたナノ材料として、強相関電子系物質がある。強相関物質は、多数の電子が電荷だけでなく、スピンや軌道の自由度を含めて強く相互作用し、臨界的な量子相を形成している。この競合する複数の量子相は、ボトムアップ的にナノ構造を自己形成し、巨大応答の要因となっている。このような強相関電子系物質の一つとしてペロブスカイト型Mn酸化物があり、この中には、スピン完全偏極の強磁性体もあり、これを用いたスピントンネル素子では、巨大なTMR効果を示すことが期待される。この強相関スピントンネル素子を実現するには、ヘテロ構造が不可欠であり、原子スケールで制御するというトップダウンのナノ構造界面制御が必要となる。ここでは、強相関遷移金属酸化物のスピン完全偏極強磁性に焦点をあて、スピントンネル素子の構築に必要不可欠な界面磁性の直接観察と制御技術(界面エンジニアリング)について述べるとともに、強相関スピントンネル接合の作製と特性を紹介する。

講演題目

分子およびナノ磁性体の化学構築とその展開

講師

阿波賀邦夫(名古屋大学)

ナノスケールの磁性体開発を目指し、さまざまな化学的手法が検討されている。ボトムアップのアプローチとして、単分子磁石とよばれる高スピンクラスター錯体が盛んに合成された。サイズは数ナノメートルで、全てのクラスター分子は同一の化学組成と構造をもつことから、これらの単結晶をつくることもできる。超常磁性を示し、そのブロッキング温度は今のところ極低温に限られるが、すべての分子が同一の緩和時間をもつ。一方、トップダウンとアプローチとして、逆ミセル法やテンプレート法などのウェットな化学合成により、既存の無機磁性体をサブミクロン以下に形状加工する研究が盛んである。そのサイズは年々小さくなり、均一性も改善されつつある。また、中空形状など、特異な3次元構造の構築も可能である。本講演では、このような研究を概観した後、単分子磁石の物理化学から分子クラスター電池への展開、コア-シェル型無機磁性体の合成とその応用、について議論する。

講演題目

総論・グラフェンの物理と最近の発展

講師

安藤恒也(東工大)

最近,グラファイトの単原子層からなるグラフェン作製され, 電気伝導や量子ホール効果が観測された. その後,量子ホール効果の詳しい実験,磁気抵抗効果の測定,バンド間磁気光学吸収やサイクロトロン共鳴の観測,ARPES, 局所状態密度や電子密度分布の測定など,新しい実験研究が続々と報告されはじめている.さらに,2層あるいは3層グラフェンなども作られ,同様の実験が行われている.グラフェンは6角形の蜂の巣格子をもち,フェルミエネルギー付近のバンドは,第一ブリルアン域の端にあるK点とK’点付近で,波数の1次に比例する分散をもつ.その付近での電子の運動は有効質量近似では相対論的なディラック方程式で静止質量をゼロとした場合の2行2列のワイル方程式で記述される.そのため,普通の2次元電子とは異なるさまざまな興味深い性質を示すことが期待される.

更新:2007/1/1

9th International Workshop on Stress-Induced Phenomena in Metallization

詳細

2007年4月4~6日、PaRuRu Plaza Kyoto

更新:2007/1/1

セミナー:次世代ナノスケールメモリーの薄膜・ドット・界面制御

第35回 薄膜・表面物理セミナー (2007)

概要

主催

応用物理学会 薄膜・表面物理分科会

協賛

日本物理学会、日本化学会、日本金属学会、日本表面科学会、電子情報通信学会、電気学会、日本真空協会、日本顕微鏡学会(依頼中)

概要

近年半導体技術及び市場の牽引者であるメモリー製品の将来動向が注目されています.この理由として、従来の記録素子が微細化限界を迎えつつあること、次世代ナノスケールメモリーでは素子内の薄膜・ドット・界面で生じる新しい物理現象の原理的理解が急務であることなどが考えられます.本セミナーでは、微細化が急ピッチで進むフラッシュメモリーから先物メモリーまでの最新研究動向だけでなく、ナノサイズの各種材料における薄膜・ドット・界面制御の重要性を絡めて紹介いたします.

日時

平成19年7月17日(火) 10:00-17:00
18日(水) 10:00-16:50

場所

早稲田大学 小野記念講堂
(東京都新宿区西早稲田1-6-1)
http://www.waseda.jp/cac/html/access03.htm  (西早稲田キャンパスアクセスマップ)
http://www.waseda.jp/jp/culture/map.html  (キャンパス内マップ)

 

プログラム(題目をクリックすると要旨がご覧になれます)

7月17日(火)
日時 講演題目 講師
10:00-11:00 ナノスケールメモリーの将来展望とその重要性 岩井 洋
(東工大)
11:00-11:50 NAND型フラッシュメモリーの現状とその将来展望 遠藤哲郎
(東北大)
11:50-13:20 昼休憩
13:20-14:10 MONOS型メモリーの電子および正孔トラップの解析 石田 猛
(日立)
14:10-15:00 SNDMを用いたFlashメモリの蓄積電荷の可視化(MONOS型ならびにFloating-Gate型メモリセル中の電荷分布) 本田耕一郎
(富士通研)
15:00-15:20 休憩
15:20-16:10 Si系量子ドットを用いた浮遊ゲートメモリー(ナノドットへの電荷捕獲) 宮崎誠一
(広大)
16:10-17:00 Siナノクリスタルを用いた2重トンネル接合メモリー(Siクリスタルを介した電子のトンネル現象) 大場竜二
(東芝)

 

7月18日(水)
日時 講演題目 講師
10:00-10:50 MgOトンネル磁気抵抗素子の巨大TMR効果とMRAMおよびHDD磁気ヘッドへの応用 湯浅新治
(産総研)
10:50-11:40 FeRAMの最近の進展と強誘電体ゲート構造メモリ 徳光永輔
(東工大)
11:40-13:10 昼休憩
13:10-14:00 相変化メモリの動向 高浦則克
(日立)
14:00-14:50 金属/酸化物/金属構造における電気抵抗スイッチング現象 井上 公
(産総研)
14:50-15:10 休憩
15:10-16:00 カルコゲン薄膜応用ナノスケール光超解像ディスクとその応用 - SUPER-RENS 富永淳二
(産総研)
16:00-16:50 熱アシスト磁気記録用高効率近接場光発生素子の開発 松本拓也
(日立)

 

参加費

テキスト代、消費税含む

薄膜・表面物理分科会会員 * 応用物理学会会員 **
協賛学協会会員
学生 その他
15,000円 20,000円 3,000円 25,000円

* 薄膜・表面物理分科会賛助会社の方は分科会会員扱いといたします.
** 応用物理学会賛助会社の方は,応用物理学会会員扱いといたします.

現在非会員の方でも,参加登録時に薄膜・表面物理分科会 ( 年会費 A 会員: 3,000 円, B 会員: 2,200 円 ) にご入会いただければ,本セミナーより会員扱いとさせていただきます.
http://www.jsap.or.jp/ より入会登録を行い,仮会員番号を取得後,本セミナーにお申込み下さい. 入会決定後,年会費請求書をお送りいたします.(年会費をセミナー参加費と同時にお振込なさらないで下さい)

定員

100名(満員になり次第締め切ります)

参加申込締切

2007年7月3日(火) 7月12日(木)

参加申込方法

ここから参加登録してください.

参加登録完了後,下記銀行口座に参加費をご連絡いただいた期日までにお振込ください.原則として参加費の払い戻し,請求書の発行は致しません.領収書は当日会場にてお渡しいたします.

受講費振込先

三井住友銀行 本店営業部(本店も可)
普通預金 口座番号: 9474715
(社) 応用物理学会 薄膜・表面物理分科会
(シャ) オウヨウブツリガッカイハクマク・ヒョウメンブツリブンカカイ

セミナー内容問合せ先

東京大学 工学系研究科物理工学専攻
目良 裕
TEL:03-5841-6852
FAX:03-5841-6852
E-mail:mera@exp.t.u-tokyo.ac.jp

(株)東芝 LSI 基盤技術ラボラトリー
村岡 浩一
TEL: 045-770-3229
FAX: 045-770-3286
E-mail:muraoka@amc.toshiba.co.jp

参加登録問合せ先

応用物理学会事務局分科会担当
伊丹 文子
TEL:03-3238-1043
FAX:03-3221-6245
E-mail:divisions@jsap.or.jp

講演詳細

講演題目

ナノスケールメモリーの将来展望とその重要性

講師

岩井 洋(東工大)

昨年9月にSamsungより32GbitのNANDフラッシュメモリの試作成功のアナウンスがあり、一昔前までは夢物語であった、100Gbit級や更にはTbit級のメモリの実現が手に届くところに来ているということが実感されるようになった。実際Samsungは2010年には256Gbitのフラッシュメモリの実現を行なうとのアナウンスを行なっている。市場にメモリへの大容量化、高速化、低消費電力化、低コスト化の要求は毎年留まることなく増大しているが、これを満たすために新材料・新構造・新原理のナノスケールメモリーの研究開発が、この数年来大変に活発になって来ており、メモリの開発の新時代を迎えようとしている。本講演では、各種新材料・新構造・新原理のナノスケールメモリー技術に関してその重要性と将来展望を考察する。

講演題目

NAND型フラッシュメモリーの現状とその将来展望

講師

遠藤哲郎(東北大)

NAND型フラッシュメモリは、ファイルメモリとして携帯電話、デジタルカメラ、メモリカード、USBメモリなど、近年身近で使われている半導体不揮発性メモリである。このNAND型フラッシュメモリは、既存の半導体デバイスと同様に、フロッピーディスク、ハードディスク、CD-ROM、DVDなどの既存の不揮発性記憶装置と比較して、回転モータなどの機械部品を必要としないため、軽く且つコンパクトにシステムを構成することを可能にする。さらに、NAND型フラッシュメモリは、1個のMOSデバイスでメモリセルを構成する事ができ、且つそのメモリセルをコンタクトレスアレイ方式で集積化しているため、既存の半導体不揮発性メモリよりも、高集積化に優れ、安く製造することができる。これらの特徴を生かして、NAND型フラッシュメモリは、その集積度の向上と共に、文書ファイル等のファイルストレージから始まり、静止画像データを取り扱うデジタルカメラ、音楽データを取り扱うMP3プレーヤー、さらには動画データを取り扱うデジタルムービーにまで幅広く活用されるようになって来た。
本論文では、上記のような発展を実現してきたNAND型フラッシュメモリのデバイス構造からその動作原理等を、その他の半導体不揮発性メモリと比較しながら示す。そして、NAND型フラッシュメモリの半導体デバイスとしての優位性のみならず、システムから見たその特徴を明らかにすることで、NAND型フラッシュメモリの現状を示す。
最後に、NAND型フラッシュメモリの課題をデバイス的観点とシステム的観点から考察し、NAND型フラッシュメモリの将来を展望し、まとめとする。

講演題目

MONOS型メモリーの電子および正孔トラップの解析

講師

石田 猛(日立)

NROMに代表されるMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-silicon)型不揮発性メモリーはCMOSプロセス技術で製造できることから,マイコン混載用の不揮発メモリーに用いられてきた.近年はその優れたスケーラビリティを生かした大容量メモリーへの応用も進んでいる.高速書換えのためにMONOS型メモリーにChannel Hot Electron書込みBand-to-Band Tunneling-induced Hot Hole消去を用いた場合,電子と正孔は注入される位置が異なるため,書換え後に完全には再結合せず,空間的に離れて残る.これを電荷の局在と呼び,局在する電荷量は書換え回数と共に増加する.電荷が局在するとサブスレッショルド特性が劣化するため,書込み・消去時間が増加する.また,電荷が局在しているMONOS型メモリーを高温で放置すると,局在した電子と正孔がトラップ間を移動し,電荷の再分布が起こる.再分布した電子と正孔が再結合すると,リテンション特性が劣化するという問題がある.
本報告では,MONOS型不揮発性メモリーの高信頼化を目的に,MONOS構造内のトラップ分布の解析手法の確立とトラップの起源のモデル化,注入電荷の局在解消方法の提案を行う.アバランシェ注入とC-V測定を窒化膜の膜厚を変化させたMONOS構造キャパシタに行うことによって,電子及び正孔トラップの分布を解析した.その結果,電子はトップ酸化膜/窒化膜界面と窒化膜/ボトム酸化膜界面に捕獲され,正孔はこの両界面に加えて窒化膜バルク中にも捕獲されることが分かった.第一原理計算より,正孔トラップの起源は窒化膜中のSi dangling Bondであり,電子トラップの起源は3配位酸素とSiのボンドであると考えられる.電荷の局在解消方法として,窒化膜を従来のSi3N4からSi-rich silicon nitrideに置き換え,窒化膜に浅い電子トラップを導入することにより,電荷の局在が解消できる見通しを得た.

講演題目

SNDMを用いたFlashメモリの蓄積電荷の可視化
(MONOS型ならびにFloating-Gate型メモリセル中の電荷分布)

講師

本田耕一郎(富士通研)

フラッシュメモリでは,“0”と“1”の記憶状態はトランジスタの閾値電圧(Vth)の高低によるトランジスタの“off”と“on”に対応する.このVthの高低を引き起こすのがメモリセルに蓄積された電荷である. したがってフラッシュメモリでは記憶は電荷で蓄積される. 浮遊ゲート型では電荷はFGに蓄積されるが, MONOS型はFGを持たず,ゲートのONO膜中に電荷を蓄積する. この場合MONOSトランジスタのONO膜中のソースとドレインに隣接した2箇所に,独立に電荷を蓄積することが出来るため,1Trで2ビット分の記憶保持が可能となる. このようにMONOS型では, FGが無いため製造プロセス工程数が少なく,かつ2ビット/1Trであるため高集積化が容易であり,コストダウンが可能である.
MONOS型では,FG型と同様にチャンネルホットエレクトロン注入で書き込みを行なうが,消去動作はまったく異なり, band-to-bandのトンネルによるホール注入により,先に書き込まれた電子を電気的に中和することで記憶を消去する. このようにMONOS型フラッシュメモリは注入電荷を利用してメモリ動作させるため,電荷の蓄積位置を明らかにすることは,このデバイスの動作原理,記憶保持および書き込み-消去のサイクリング劣化機構を理解するのに重要である. したがって,蓄積された電荷を直接観察する方法の開発が期待される.
この電荷の可視化手段として, 非線形誘電率顕微鏡法(Scanning Nonlinear Dielectric Microscopy: SNDM)はきわめて有効な手段である. SNDMはマイクロ波顕微鏡技術の一種である. 電極と試料の間に交替電場E cos &omega p (E = V/d, Vは電圧振幅, dはサンプル厚,&omega pは角周波数) が印加されるとき,針下の試料表面の非線形誘電応答から生じる容量Cs(t)変化がLC共振回路の共振周波数における変化として検出される.AFMのカンチレバーを探針として,試料表面を走査して検出することにより高感度の誘電応答の分布が得られる.
SNDMはこれまで強誘電体の分極分布の観測に適用されてきた.強誘電体薄膜の場合,分極の方向は, Cs(t)変化から計算される非線形誘電率から決定できる. この方法によるLiTaO3の分極分布,PZTの分極壁の厚さ観察,ナノドメインを用いた強誘電体メモリの記憶再生への応用などが報告されている.また高真空中での高分解能観察により, Si清浄表面の7×7構造が検出可能な第5番目の顕微鏡として注目されている.
私たちはSNDMにより,どのように固定電荷の電子とホールを検出することができるかを説明する.またSNDMを応用した, MONOS型メモリの蓄積電荷の存在位置,サイクリング後の電荷の分布にならびに,従来のFG型メモリ中の電荷分布の観察例もあわせ報告する.

講演題目

Si系量子ドットを用いた浮遊ゲートメモリー(ナノドットへの電荷捕獲)

講師

宮崎誠一(広大)

ナノメートル寸法のSi量子ドットでは,チャージングエネルギー及び量子化エネルギーが室温の熱エネルギーより大きいため,離散化した帯電状態が顕在化する.この特性を活用すべく,Si量子ドットを電荷保持ノードとしてMOS トランジスタのフローティングゲートに応用すると, Si量子ドットへ注入する電荷量を段階的に制御でき,MOSFETのしきい値電圧を離散的にシフトさせることができる.すなわち,Si量子ドットを荷電特性の理解と制御が,室温で低電圧・安定動作するSi量子ドット多値メモリの開発の鍵となる.
本講演では,先ず,SiO2膜上に形成した個々のSi量子ドットにおいて,電子(正孔)注入および放出後の荷電状態を表面電位変化から定量評価できることを紹介する.加えて,Geコアを導入したSiドットでは,電子はSiクラッドに,正孔はGeコアに安定保持されることを示すと共に,P(およびB)をデルタドーピングした場合は,イオン化ドナー(およびイオン化アクセプター)に起因して,正帯電状態(および負帯電状態)が,極めて安定であることを示す.さらに,仕事関数制御の観点からより深いポテンシャル構造が期待できるNiシリサイドドットにおいて,Si量子ドットに比べて電荷保持特性に格段に優れていることを示す.次に,ゲートSiO2膜中にSi量子ドットを埋め込んだp型およびn型Si基板MOSキャパシタの容量-電圧(C-V)特性および過渡変位電流-電圧(I-V)特性から、Si量子ドットが電子および正孔の保持ノードとして機能すること示す。特に、AlゲートMOSキャパシタにおいて、光照射下でC-V, I-V特性を測定することによって、反転領域側での電荷注入・放出特性が評価できることを示す。これにより、トランジスタ構造に仕上げる前に、電荷保持に最適なバイアス条件の設定・絞込みが可能となる。最後に,Si量子ドットフローティングゲート nMOSFETにおいて特徴的な多段階電子注入・放出特性を調べた結果について紹介する.一定ゲート電圧下でのドットへ電子注入・放出が,準安定状態を経て段階的に進行することを明らかにすると共に,準安定状態において,ドットフローティングゲート内で電子間のクーロン反発を緩和するように電子分布の再配置が起こっていることを示す。

講演題目

Siナノクリスタルを用いた2重トンネル接合メモリー
(Siクリスタルを介した電子のトンネル現象)

講師

大場竜二(東芝)

ナノメートルスケールの導電性微小粒子を、薄いトンネル抵抗で挟んだ構造を、単電子トンネルを扱う分野では「二重接合」と言います。このような二重接合構造を浮遊ゲート型メモリ素子のトンネル膜に応用することで、通常のトンネル酸化膜よりも優れた特性を実現することができます。浮遊ゲート型メモリ素子のトンネル膜部に、薄いシリコン酸化膜に挟まれたSiナノ微結晶膜を有する構造を作製すると、情報電子は、Siナノ微結晶を介した二重接合トンネルにより電荷蓄積部とチャネルの間を出入りします。この時Siナノ微結晶での量子閉じ込め効果とクーロンブロッケイド効果によりエネルギーバリアが形成されるため、記憶保持時の情報電荷リークが抑制されます。また一方、適切な書込消去電圧印加により、エネルギーバリアの影響を無くした、薄いトンネル酸化膜のみを介する高速書込消去が可能になります。このように二重接合トンネル膜は、長時間記憶保持と高速書込消去の両立させるに当たって極めて有利なものになります。我々はこれまで様々な二重接合トンネル膜を有する浮遊ゲート型メモリ素子を作製し、実測してきました。これらを紹介しつつ、トンネル膜中のSi微結晶のナノサイズ効果により、記憶保持と書込消去のトレードオフの優位性が実現できることを実証します。またバルク・プラーナ構造のメモリ素子において、最短25nmの微細ゲート長でも良好なメモリ素子特性が実現できることも示します。

講演題目

MgOトンネル磁気抵抗素子の巨大TMR効果とMRAMおよびHDD磁気ヘッドへの応用

講師

湯浅新治(産総研)

極薄の絶縁体層(トンネル障壁)を2枚の強磁性金属層で挟んだ磁気トンネル接合(MTJ)素子はスピン依存トンネル伝導に起因した磁気抵抗(TMR効果)を示す.つまり,2枚の強磁性電極の磁化の向きが平行,反平行な場合で,素子のトンネル抵抗が変化する.このトンネル抵抗の変化率を百分率で表したものが磁気抵抗比(MR比)であり,MTJ素子の重要な性能指数となる.1995年に室温でTMR効果が実現されて以来,トンネル障壁にアモルファス酸化アルミニウム(Al-O)を用いたMTJ素子の研究が精力的に行われてきたが,室温で約70%のMR比しか得られないことが応用上深刻な問題となっていた.例えば,大容量MRAMを実現するに室温で200%を越えるような巨大なMR比が切望されていた.Al-O障壁MTJ素子の性能限界は,アモルファスAl-O障壁のインコヒーレントなトンネル伝導過程に起因したものである.これに対して,(001)面配向した結晶性の酸化マグネシウム(MgO)をトンネル障壁に用いたエピタキシャルMTJ素子に関して2001年に第一原理計算が成され,1,000%を越える巨大なMR比が理論的に予測された.これは,結晶MgO(001)障壁のコヒーレントなトンネル伝導に起因するものである.実験的にも2004年に,MgO(001)障壁MTJ素子において室温で巨大なTMR効果が実現され,現在までに室温で500%のMR比が得られている.現在,MgO障壁MTJ素子を用いたスピン注入MRAMやハードディスク磁気ヘッドの開発が進められており,さらにマイクロ波発振・検波素子やスピントランジスタなどの新規デバイス応用の研究も始まっている.セミナーでは,MgOトンネル磁気抵抗素子の巨大TMR効果の物理機構およびデバイス応用,今後の展望などについて概論する.

講演題目

FeRAMの最近の進展と強誘電体ゲート構造メモリ

講師

徳光永輔(東工大)

不揮発性メモリとして近年多様な材料と方式が検討されているが、強誘電体メモリ(FeRAM: Ferroelectric Random Access Memory)は、高速、高耐久性、高密度、低消費電力を実現する不揮発性RAMとして比較的早くから開発が進められ、1Mb程度の小規模なものはすでに製品化されている。また乗車券等のスマートカード等に用いる低消費電力の不揮発性メモリとしてすでに実績がある。本講演では、FeRAMの2つのタイプ(キャパシタ型とトランジスタ型)について、その動作原理を解説するとともに最近の進展を紹介し、さらに有機強誘電体やBiFeO3等の最近の話題を紹介する。
最初にFeRAMに使用されている強誘電体材料の物性と薄膜の形成例を紹介し、キャパシタ型FeRAM、トランジスタ型FeRAMそれぞれについて、強誘電体材料に要求される特性を述べる。また、キャパシタ型FeRAM製品の例、学会レベルでの研究・開発の現状を紹介する。次にトランジスタ型FeRAMについて、その動作原理を紹介して問題点を明らかにし、最近の開発状況を概観する。特にトランジスタ型では近年長い記憶保持時間が得られるようになってきており、今後の展開が期待される。最後に新しい潮流として、巨大な分極量を有するBiFeO3薄膜の作製例と物性、酸化物半導体をチャネルに用いた強誘電体ゲート薄膜トランジスタ、低温で形成可能であり近年薄膜化も達成された有機強誘電体の作成例とメモリデバイスへの応用、走査型プローブ顕微鏡技術を用いたナノドメインの形成等について、最近の報告例を紹介する。

講演題目

相変化メモリの動向

講師

高浦則克(日立)

相変化メモリは、相変化材料を非晶質と結晶の間で相転移させて情報を記録する不揮発メモリである。相変化メモリには、書換え可能光ディスクで培われたカルコゲナイド相変化材料が記録膜として用いられるが、光ディスクは非晶質と結晶の屈折率の違いで記録するのに対して、電気的相変化メモリは抵抗値の違いを利用する。相変化メモリ素子はGe-Sb-Te(ゲルマニウム-アンチモン-テルル)系相変化材料を採用することによりその書換え特性再現性が大幅に改善した。高速性、低消費電力性、スケーラビリティに優れた不揮発メモリとして、実用化への歩みが着実になっており、その用途は大容量stand-aloneメモリに加えて混載メモリまで拡大することが期待される。
相変化メモリの最重要課題のひとつは、リセット電流の低減である。セル面積低減による高集積・大容量化を実現するため、相変化メモリのリセット電流低減に関しては、数多くの研究成果が報告されている。例えばセル構造技術として下部電極と相変化材料の接触面積を小さくし、ジュール発熱効率を高める方法が検討されている。また、可変抵抗素子構造をプレート型からピラー型にすることで、無駄な発熱領域をなくす技術も開示されている。さらに、下部電極への放熱防止などを目的に界面層を用いる技術が提案されており、TiON半金属やTaO絶縁膜の適用が効果を上げている。本セミナーでは上記の相変化メモリの動作原理、用いられる材料、最新研究動向と課題までをまとめて紹介する。

講演題目

金属/酸化物/金属構造における電気抵抗スイッチング現象

講師

井上 公(産総研)

酸化物を金属電極で挟んだ単純なコンデンサ構造を用意し、これに大きな電界をかけると絶縁破壊が起こる。過度な電流が流れないようにしてこの絶縁破壊を「ソフト」なものに抑えておくと(これを「フォーミング」と呼ぶ)、ある種の素子の場合、電流–電圧特性に大きな履歴現象、つまり「電気抵抗のスイッチング」現象が出現するようになる。40年以上前から多くの研究がなされてきたが、この数年、この現象を用いた不揮発性抵抗変化メモリー素子の開発機運が高まり、競争が一気に加速して来た。
まず誰もが疑問に思うことは「フォーミングで何が起こっているのか」ということであろう。最近、素子の微細化を進めるとフォーミングが不要になること、ポイントコンタクト的な素子もフォーミングなしに動作することなどが明らかになってきている。つまり電気抵抗スイッチング現象は素子のどこか非常に「小さい部分」で起こっていて、フォーミングというのは大きい素子の中にその「小さい部分」をこしらえる作業なのである。したがってもともと素子が十分に小さければフォーミングは不要になる。そもそもこの「小さい部分」さえあれば素子の残りの部分も不要なのかもしれない。
「小さい部分」を我々はフォセットと呼ぶことにした。水道の蛇口である。フォセットはどうやら電極と酸化物の界面に形成されることもわかってきた。フォセットが開いているとき、つまり抵抗が低い状態の時、そこには電流が集中する。電流が過度に集中すると、(1)温度が急上昇する、(2)酸素やカチオンの移動が起こる(エレクトロマイグレーション)、そして、(3)非平衡状態になる。そのような状況下に陥ると実際に何が起こるのか断定するのは難しいが、それによってフォセットが閉じる(絶縁体になる、あるいは消失する)のは確かである。
講演では、我々の作製している素子について、酸化物と金属電極の組み合わせで電気抵抗スイッチングの振る舞いがどう変化するかを紹介し、フォセットの開閉について考えられるメカニズムを取り上げて議論してみたい。
本研究は、産総研、東大、シャープ、アルバック、阪大、パリ南大、アルゼンチンCABの共同研究によってなされました。

講演題目

カルコゲン薄膜応用ナノスケール光超解像ディスクとその応用 - SUPER-RENS

講師

富永淳二(産総研)

DVDを代表とする光ストレージは、赤色レーザーから青色レーザー仕様へと進展し、現在25GB容量をもつブルーレイディスクが市場に投入されている。ブルーレイディスクまでの光ディスクの大容量化は、回折限界と呼ばれる光学原理に基づいて設計され、記録読み出しレーザー波長の短波長化と高解像度レンズの組み合わせによって成し遂げられてきた。しかし、青色レーザー以後の短波長レーザーではディスク基板やレンズの光吸収の影響等が問題となり、回折原理に基づく開発指針ではこれ以上の高密度化は望めない状況にある。この状況を打破する目的として、集光レンズと記録薄膜との間に光機能膜を設置し、この機能膜を熱的に作動させることで、レーザービーム径をさらに1/10以下に絞り込み、その絞りから発生する近接場光を利用して超高密度光記録再生を行うことを目的とした光ディスクが1998年に開発された。開発当時は、信号強度もずっと低く「科学」の領域にあったが、共同研究企業との共同開発によって現在、75ナノメートルピットからなるランダム信号を実用レベルの信号強度で、しかも高速に記録読み出しすることが可能な「技術」となった。これを「スーパーレンズ – SUPER-RENS」と呼ぶが、スーパーレンズの機能はたった10ナノメートルの薄膜であり、ディスクの高速回転と共に光を絞るための機能部分が移動してゆく。このようなダイナミックな薄膜特性の応用は、光ディスクではすでに一般的なものとなっているが、「科学」の領域では未だに材料が固定されたままでの研究が主流のままである。セミナーではダイナミックな薄膜の織りなす光の集光現象についての話題を提供する。

講演題目

熱アシスト磁気記録用高効率近接場光発生素子の開発

講師

松本拓也(日立)

ハードディスク装置の高密度化の際問題となる熱揺らぎ限界を解決し,1Tb/in2以上の記録密度を実現する方法として,熱アシスト磁気記録方式が注目されている。磁気記録において,熱揺らぎの影響を小さくするには媒体の保磁力を大きくする必要があるが,従来の記録ヘッドで発生できる磁界は限界に近づきつつあり,このような高保磁力媒体への記録は困難となる。そこで,熱アシスト磁気記録方式では記録の瞬間に光を照射することにより媒体を加熱し,媒体の保磁力を瞬間的に小さくする。これにより,高保磁力媒体への記録が可能になる。  この記録方式において,隣接トラックの加熱を防ぐためには,数10nm以下の微小領域を光加熱する必要がある。そのためには近接場光の利用が必要であるが,従来の微小開口を用いた近接場光発生素子では,近接場光発生効率の低さが問題であった。そこで,我々は,金属プレートを利用した新しい近接場光発生素子を開発した。先鋭化された頂点を持つ金属プレートに光を照射すると,プレート中にプラズモンが励起され,頂点に強い近接場光が発生する。計算の結果,20nm以下の光スポットを15%以上の効率で発生させることが出来ることが分かり,また実際に相変化媒体を利用した記録実験を行ったところ,径40nmのマークを書き込むことが出来た。

更新:2007/1/1