2023年度 「 応用物理学会 薄膜 ・ 表面物理分科会論文賞 」および 「 応用物理学会 薄膜 ・ 表面物理分科会 奨励賞」の選考結果について
2023 年度「 応用物理学会 薄膜 ・ 表面物理分科会 論文賞」および「 応用物理学会 薄膜 ・ 表面物理分科会 奨励賞」について,以下の選考結果を得ましたので ご報告致します
1.「応用物理学会 薄膜 ・ 表面物理分科会 論文賞」受賞論文
受賞者:宇佐美 雄生 (大阪大学/九州工業大学), Bram van de Ven (University of Twente), Dilu G. Mathew (University of Twente), Tao Chen (University of Twente), 琴岡 匠(九州工業大学),川島 悠哉(大阪大学),田中 悠一朗(九州工業大学),大塚 洋一(大阪大学),大山 浩(大阪大学), 田向 権 (九州工業大学), 田中 啓文(九州工業大学), Wilfred G. van der Wiel (University of Twente), 松本 卓也(大阪大学)
受賞論文: “In-Materio Reservoir Computing in a Sulfonated Polyaniline Network”, Advanced Materials 33, 2 102688 (2021).
受賞理由:本論文は、ポリアニリン薄膜に微小電極を接合することにより、ニューラルネットワークを構成し、物理リザバー計算による音声認識の将来的な可能性を報告している。本論文は、有機薄膜による物理リザバー計算の可能性を示した最初の報告として位置付けられる。非線形電気特性を高信頼に制御することができれば、本研究の成果は省エネルギーなエッジコンピューティングに将来的に寄与し得る可能性を秘めている。
2.「応用物理学会 薄膜・表面物理分科会 論文賞」受賞論文
受賞者:高城 拓也(東京大学), 秋山 了太(東京大学), Ivan A. Kibirev (Institute of Automation and Control Processes), Andrey V. Matetskiy (Institute of Automation and Control Processes), 中西 亮介(東京大学), 佐藤 瞬亮(東京大学), 深澤 拓朗(東京工業大学), 佐々木 泰祐(物質・材料研究機構), 遠山 晴子(東京大学), 樋渡 功太(東京大学), Andrey V. Zotov (Institute of Automation and Control Processes), Alexander A. Saranin (Institute of Automation and Control Processes), 平原 徹(東京工業大学), 長谷川 修司(東京大学)
受賞論文: “Soft Magnetic Skyrmions Induced by Surface State Coupling in an Intrinsic Ferromagnetic Topological Insulator Sandwich Structure Intrinsic Ferromagnetic Topological Insulator Sandwich Structure”, Nano Letters 22, 881 (2022).
受賞理由:Bi1-xSbxを含むトポロジカル絶縁体(TI)層を強磁性トポロジカル絶縁体(FMTI) で挟んだサンドウィッチ構造を考案し、組成と層厚の調節によってフェルミ準位と層表裏の表面状態の混成を制御し、 TIが1層の場合に弱磁場でスキルミオンが形成されることをトポロジカルホール効果測定から見出した.本成果は、 FMTIを用いた次世代スピントロニクス研究の発展に資すると期待される.これより、本論文は薄膜・表面物理の基礎及び応用の観点から優れた論文であると認められ,薄膜・表面物理分科会論文賞に値すると考える.
3.「応用物理学会 薄膜・表面物理分科会 奨励賞」受賞論文
受賞者:津田 泰孝(日本原子力研究開発機構)
受賞論文:“Roles of excess minority carrier recombination and chemisorbed O2 species at SiO2/Si interfaces in Si dry oxidation: Comparison between p-Si(001) and n-Si(001) surfaces”, Journal of Chemical Physics, 157, 234705 (2022).
受賞理由: SiO2/Si 界面の熱酸化速度が2つの指数関数の和で表されるとの指摘が古くからなされていたが,それに由来する2種類の反応メカニズムは不明のままであった.候補 者らは放射光を用いた光電子分光測定でSi(001) 表面酸化過程を リアルタイムで詳細に観察し, SiO2/Si界面点欠陥における多数キャリアおよび少数キャリアの捕獲により酸化反応が駆動されることを明らかにし,長年の未解決問題であった「 2種類の反応メカニズム」について,これまでの実験結果と矛盾ない形で説明できるようになった.これは,半導体プロセスで重要な熱酸化反応における長年の未解決問題を解決したものであり,薄膜・表面物理関連分野の進歩向上に寄与し,薄膜・表面物理分科会論文賞奨励賞に値すると考える.
4.「応用物理学会 薄膜・表面物理分科会 奨励賞」受賞論文
受賞者:嵐田 雄介(筑波大学)
受賞論文: “Subcycle Mid Infrared Electric Field Driven Scanning Tunneling Microscopy with a Time Resolution Higher Than 30 fs”, ACS Photonics 9, 3156 (2022).
受賞理由: 走査型トンネル顕微鏡(STM)に超短パルス中赤外光を組み合わせ,従来のTHz STMの1 psの壁を破り30 fsの時間分解能を実現した.開発した装置の性能は MoTe2のバンドリノマライゼイションの非平衡ダイナミクスを計測することで実証している.STMの高い空間分解能が併用できることから,光誘起超高速現象の解明に向けて大いなる発展が見込める手法であり,薄膜・表面起超高速現象の解明に向けて大いなる発展が見込める手法であり,薄膜・表面物理分科会奨励賞に値すると考える.
5.審査の経過について
分科会ウェブページおよび ニュースレター などを通じて、2023年度「応用物理学会 薄膜 ・ 表面物理分科会 論文賞」および「応用物理学会 薄膜・表面物理分科会 奨励賞」の公募を行ったところ,2023年9月16日の締め切りまでに 重複申請を含めて 論文賞6件,奨励賞6件の推薦があり,これらについて以下の10名の表彰委員会にて 選考を行った.それぞれの論文に対して,各委員の専門分野も勘案して審査担当を分担し書類審査を行った.審査点に基づき表彰委員会にて議論を行った結果,上記2件が論文賞に2件が奨励賞に相応しいとの合意を得た.
応用物理学会 薄膜・表面物理分科会 表彰委員会委員
渡部平司(大阪大学, 委員長) 、影島愽之(島根大学)、佐道泰造(九州大学)、清水智子(慶應義塾大学)、武田さくら(奈良先端大学)、寺本 章伸(広島大学)、中村雅一(奈良先端大学)、野平博司(東京都市大学)、吹留博一(東北大学)、渡邉孝信(早稲田大学)
更新:2023/12/8