第4回 「薄膜・表面物理分科会 論文賞」及び「奨励賞」 受賞論文決定のお知らせ

審査の結果,以下の通り第4回「論文賞」および「奨励賞」の受賞論文が決定致しましたのでお知らせ致します。数多くの優れた論文のご推薦をありがとうございました。
尚,2020年3月の応用物理学会春季学術講演会の会場にて予定しておりました,表彰式ならびに受賞記念講演につきましては,取り扱いが決まり次第ご連絡させていただきます。

1.「薄膜・表面物理分科会 論文賞」受賞論文

⽯部 貴史(⼤阪⼤学)、 留⽥ 純希(⼤阪⼤学)、渡辺 健太郎(東北⼤学)、鎌倉 良成(⼤阪⼯業⼤学)、森 伸也(⼤阪⼤学)、成瀬 延康(滋賀医科⼤学)、⽬良 裕(滋賀医科⼤学)、⼭下 雄⼀郎(産業技術総合研究所)、中村芳明(⼤阪⼤学)

受賞論文:“Methodology of Thermoelectric Power Factor Enhancement by Controlling Nanowire Interface. ACS Applied Materials & Interfaces 10(43), 37709-37716 (2018).

受賞理由:熱を電気に変換可能な熱電材料は、次世代グリーンエネルギーとして期待されている。熱電変換効率向上には、熱電出⼒因⼦増⼤と熱伝導率低減の同時実現が必要であるが、それら の相関関係のため同時実現は⻑年の課題であった。本論⽂は、ZnO 薄膜中に、ドーパント濃度制御した界面を有するZnOナノワイヤを導⼊することで、熱電出⼒因⼦の3倍増⼤と熱伝導率の 10%低減を同時実現し、熱電研究最⼤の課題克服に成功した。これは、制御ドープ界面で高エネルギー電子の選択的輸送を可能にし、かつ界⾯でのフォノン散乱を誘発したことに基づくものである。また、透明なZnOを⽤いるため、透明ガラス等における熱回収が可能となり、熱電材料の応⽤先拡⼤が期待できる。薄膜・界⾯制御の学理・技術を基にして熱・電気・光の同時制御へと進展させ、透明熱電材料という新分野・新産業の開拓に寄与する本論⽂は、薄膜・表面物理分科会論文賞に値する。

2.「薄膜・表面物理分科会 論文賞」受賞論文

中島 秀朗(業技術総合研究所)、森本 崇宏(産業技術総合研究所)、沖川 侑揮(産業技術総合研究所)、山田 貴壽(産業技術総合研究所)、生田 美植(産業技術総合研究所)、河原 憲治 (九州大学)、吾郷 浩樹(九州大学)、岡崎 俊也(産業技術総合研究所)

受賞論文:“Imaging of local structures affecting electrical transport properties of large graphene sheets by lock-in thermography Science Advances, vol. 5, eaau3407 P.1-8 (2019).

受賞理由:二次元炭素膜グラフェンは化学気相成長法による大面積化が進められている一方、結晶粒界などの微細な欠陥により電気伝導特性が劣化し、電子デバイス応用への課題となっている。本論文では、既存のロックイン発熱解析法をグラフェンの新しい評価技術へ適用し、ジュール熱を介して大面積膜の欠陥構造を高速・高精度に「見える化」することに世界初で成功した。これにより mm サイズの膜に形成される nm スケールの欠陥(結晶粒界)の 電気伝導特性を、短時間(10 分)での可視化に成功した。本成果は、従来困難であったウエハースケールでの欠陥評価を可能とし、グラフェンデバイス開発をはじめ様々な 二次元材料の研究開発に大きく貢献する成果であり、薄膜・表面物理分科会論文賞にふさわしいものと考える。

3.「薄膜・表面物理分科会 奨励賞」受賞論文

該当なし

 

薄膜・表面物理分科会 表彰委員会
審査委員
田畑 仁(東京大、審査委員長)
市川 昌和(東京大)
一宮 彪彦(名古屋大)
越川 孝範(大阪電通大)
住友 弘二(兵庫県立大)
高桑 雄二(東北大)
繁野 雅次(日立ハイテクサイエンス)
本間 芳和(東京理科大)
武田 さくら(奈良先端大)

更新:2020/3/9