幹事長挨拶
第35-36期幹事長 重川 秀実
平成18年4月より2年間、市川幹事長のあとを引き継ぎ、薄膜・表面物理分科会の幹事長を務めることになりました。発足から30年以上の伝統を持つ分科会の幹事長に選出されましたことを光栄に思いますとともに、非常に大きな責任を感じています。
私が、本分科会と係わりを持ちましたのは、1991年に本分科会の設立20周年記念事業として、「Atomically Controlled Surfaces and Interfaces」をテーマとする国際会議が企画されました際、組織委員、実行委員として参加しましたことが最初の機会かと思います。その後、編集幹事、企画幹事、庶務幹事などを務めてきましたが、これら経験を通して、多くの分科会の方々と知り合うことができました。こうした出会いをもとに大きな活力を得る中で、今日の研究生活の土台を形作ることができましたことを深く感謝しておりますとともに、幹事長として、いくらかでも本分科会に恩返しができますよう、誠心誠意努力致します所存です。
私自身は、米国Brookhaven研究所にありますNSLS(National Synchrotron Light Source)で「放射光」を用いた仕事に従事しました後、当時、IBMの研究者により新しく発明されました「走査プローブ顕微鏡」の開発に携わる機会を得ました。丁度、先に述べました本分科会との記念すべき出会い?の頃になります。その後、今日に至るまで、同分野に関係する研究を進めてきました。
「表面は、非常に薄いが厚みがある」といった言葉をどこかで耳にしたことがあります。今日のナノスケールでの科学技術の進展は、多くの分野間の垣根を取り去り、異種分野の融合や新分野の創成を可能にするものと期待されますが、その主たる舞台を、表面や薄膜の(厚み、深みのある)世界が担っていると言っても過言ではないと感じます。精密科学としての薄膜・表面物理分野の確立が、今後の科学技術の進展に大きく貢献できるものと期待しています。
さて、本分科会の主な活動には、(1)春、秋の応用物理学会におけるシンポジウム、(2)「薄膜・表面物理セミナー」、(3)「薄膜・表面物理基礎講座」、(4)特別研究会や研究会、の企画と開催、及び(5)薄膜・表面物理に関する国際会議の主催、共催や協賛、などがあります。また、分科会会誌として「News Letter」を年3回発行しています。分科会活動の中心となるセミナーや基礎講座の企画では、2人の常任幹事が中心となり約1年前から案を練り、その内容を常任幹事会や幹事会で検討を進めます。また、セミナーでは薄膜・表面物理に関する最近のトピックスに関して、基礎講座では薄膜・表面物理分野の基礎となる物理や技術に関して、その分野の第1人者の先生がたに講演をお願いします。
薄膜・表面物理分科会がカバーする分野は、強誘電体薄膜、カーボン系薄膜、酸化物エレクトロニクス、薄膜新材料、表面物理、真空、プローブ顕微鏡、分子素子、触媒、生物物理・化学など、非常に広い分野にまたがっています。分科会では、こうした研究領域が萌芽する段階から新技術や新材料などの研究も積極的に取り入れる努力をしてきました。今後も基幹の分野だけでなく、新しい分野を開拓できますよう、皆様の積極的な参画をお願い致します。
最後に、会員の皆様への御願いとしまして、最近は、本分科会だけに限る話ではありませんが、分科会の会員数の減少が問題となっています。より魅力的な分科会活動により、会員であることの利点、意義を実感して頂けるよう努力しますともに、研究会やセミナーなどの開催時に、会員への勧誘を積極的に実施できればと思います。本分科会が薄膜・表面物理分野の発展に貢献するためには、本分科会会員諸氏の支援が必要不可欠です。是非とも、会員の皆様が、本分科会の活動に積極的に参加して下さいますよう、心より、お願い致します。