幹事長挨拶

第53-54期幹事長 渡部 平司

2024年4月より2年間、住友幹事長のあとを引き継ぎ、53・54期の幹事長を務めることになりました。本分科会は1970年に設立され、応用物理学会の数ある分科会の中でも長い伝統と多くの会員を擁しています。これまでの分科会の発展を支えてこられた諸先輩方のご尽力に改めて感謝の意を表したいと思います。また、幹事長としての責任の重さに身が引き締まる思いです。
私自身は、学生時代に非晶質半導体の作製と評価に関する研究を通じて、薄膜工学と表面界面科学に触れました。大学院を修了後、民間企業では半導体の低損傷加工技術の研究開発に取り組みましたが、その際にも様々な半導体プロセスを学ぶ中で、薄膜技術や表面科学の重要性を感じてきました。その後、原子分子極限操作を目標に掲げたナショナルプロジェクトに加わり、市川昌和先生(33・34期幹事長)のグループで走査反射電子顕微鏡や走査プローブ顕微鏡を学び、シリコン表面の原子層酸化機構の解明や極薄酸化膜の物性解析に取り組みました。民間企業に帰任した2000年前後は、半導体集積回路の微細化においてMOSFETのゲート絶縁膜の薄層化が最も重要な技術課題であった時期と重なり、極薄酸化膜や高誘電率ゲート絶縁膜の開発と事業化に従事しました。大学に移籍後は、炭化珪素や窒化ガリウム等のワイドバンドギャップ半導体パワーデバイスの研究を続けています。このように転々と研究テーマを変えてきましたので、自身の研究歴の紹介では、以前は「専門分野を持たない」と説明していましたが、改めて考えると私のこれまでの研究活動の根幹は、薄膜工学と表面界面科学、つまり本分科会にあると再認識しています。現在、応用物理学会は、基礎から応用に亘る幅広い科学技術分野をカバーしていますが、それらの多くは薄膜工学や表面界面科学を基盤としており、本分科会と深く結びついています。従って、幹事長として応用物理学の礎となるこれらの基礎科学の発展に加えて、他の分科会や研究会との連携を通じた応用展開や実用化を見据え、分科会活動の活性化に取り組みたいと思います。
本分科会の運営では、尾浦憲治郎先生(元学会長、29・30期幹事長)のもと、分科会入会から間もなくして幹事、そして会計担当の常任幹事を仰せつかり、多くのことを学ばせていただきました。尾浦先生には学生時代にも高速イオンビームを用いた材料分析の研究で大変お世話になったご縁もあり、学会や分科会の運営について丁寧にご指導いただきました。現在、本分科会では、多くの皆様の献身的なご尽力に支えられ、学術講演会でのシンポジウムに加え、基礎講座やセミナーを継続的に企画してきました。また、数々の国際会議や研究会の主催・共催にも取り組んでいます。魅力的な企画を続けてきた歴史を誇らしく感じる一方、これらの企画が定例の行事となっていることに少し危機感を感じています。分科会幹事や常任幹事が中心となって企画するシンポジウムやセミナーは、会員の皆様や学生諸君に最新の情報や議論の場を提供することを目的としていますが、企画する側の興味や少し尖った考え、さらには所属する企業や研究室の若手の参画を促すような企画をもう少し優先しても良いように思います。私自身は、コロナ禍を経て研究者間での意見交換や、次の世代を支える若者達との交流の重要性を再認識しました。本分科会の様々な企画を通じて、企画する側(会員の皆様)が盛り上がり、その熱量を若者が感じ取ることが、当該分野の発展に繋がると信じています。分科会の会員数や予算の推移と言った指標は確かに大切ですが、初心に立ち返ってシンポジウムや研究会を楽しむことが大切です。本分科会の規模とその歴史を最大限に活用し、若い世代が運営に加わりたいと感じる組織を目指したいと思いますので、皆様のご協力をよろしくお願い致します。

渡部 平司 (大阪大学)