幹事長挨拶

第49-50期幹事長 田畑 仁

tabata

この度、第49−50期の幹事長の任を拝命致しました。本分科会は、応用物理学会の中でも歴史が長く規模も大きく、その責務の重さに身が引き締まる思いをしております。
私と薄膜との出会いは、卒業研究に遡ります。当時フィーバーを呈していた酸化物高温超伝導体の中で、転移温度が液体窒素温度を初めて超えたY系銅酸化物が卒論対象となり、その薄膜結晶成長のためにスパッタリング装置に初めて触れました。以来真空工学、薄膜工学をはじめ、原子・分子レベルでの薄膜結晶成長、表面計測など30年以上に亘り、薄膜・表面関連の研究、技術開発に携わっております。
薄膜・表面物理分科会はその名が示す通り、薄膜および表面の物理、科学・技術に関心を持つ研究者・技術者の集まりで、当該分野の発展に寄与することを目的として1970年に設立されました。MOS-TFT(薄膜電界トランジスタ)に代表されるように、薄膜化することで実用デバイスが生まれ、その表面・界面特有の物性が、我々に多大な恩恵を与えてくれる、基礎・応用両面において、非常に魅力的かつ重要な学問分野、技術領域だと思われます。
本分科会は各種研究会のほか、基礎講座、基礎セミナー、シンポジウム、表彰事業等を毎年の定例活動としており、これに加えていくつかの国際会議を主催して参りました。しかし一昨年度より学会における人事、予算方針が大きく変換し、それに伴い分科会運営も変革の必要性に直面しております。その背景には学会・分科会員数の漸減という世の中の大きな傾向があります。それに対応すべく、如何に会員の皆様に魅力的に感じて頂ける情報・サービスを提供できるか、また公益社団法人の枠内で如何にサステナブルな財務構造を構築するのかが喫緊の課題であります。
さらに現在世界規模でウィルス感染症の問題に直面し、これまで当たり前のように開催してきた研究会、セミナーや基礎講座、幹事会などのオンライン対応など、ニュースタイルでの分科会の在り方が求められております。
この未曽有の困難をチャンスに変え、分科会のさらなる発展を目指すとともに、薄表分科会員の皆様にとって有益な分科会になるよう務める所存です。皆様何卒、お力添えご指導をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

2020年4月
田畑 仁 (東京大学)