先進パワー半導体分科会

公益財団法人 応用物理学会 ENGLISH PAGE

分科会の趣旨

趣旨/背景および目的

半導体素子の利用分野の急速な拡大とともに、従来のSiやGaAs等を中心とした比較的狭いバンドギャップを持つ半導体の性能限界を打ち破り、電子素子の耐熱化、高出力化、超高周波化や、発光素子の短波長化のために、SiC等の広いバンドギャップを持つ半導体材料による各種素子の開発と、そのための基礎研究の充実が強く望まれています。SiC半導体研究は、1960から1970年代に精力的になされたものの、当時は大型で良質の単結晶基板が得られず、実用化までには至りませんでしたが、1980年代に入り、バルク単結晶成長法やヘテロエピタキシャル成長法の開発で大型単結晶基板を得る道が開け、これを契機として、その実用化の声が再び高まり、国内外で結晶成長、素子化プロセス技術の研究が広くなされるようになりました。これを受け、我が国におけるSiC研究者間のコミュニケーションを深め、研究の進展を図るため、1984年よりSiC研究者有志が年1回程度集まり、自主的な研究会を開催してきました。その後、単結晶成長等に長足の進歩がみられ、パワー素子、高温動作素子、青色発光素子等への応用研究が一層拡大し、研究者数も大幅に増加したことから、SiCのみならず、窒化物やダイヤモンド等の各種ワイドギャップ半導体もそのスコープに加え、応用物理学会のもと1992年に「SiC及び関連ワイドギャップ半導体研究会」(本研究会の前身:以降SiC研究会と称します)を設置しました。以降20年余の長きにわたり、SiC研究会は、次代を担う情報通信、エネルギー、環境、医療エレクトロニクスの革新に向けたSiC及び関連ワイドギャップ半導体の研究開発の効率的・効果的推進と広範な普及を目指し、講演会、討論会、シンポジウム等を主催し、結晶成長、物性評価、プロセス技術、デバイス等に関する研究トレンドレビューや討論を通して、研究者間の情報・意見交換を行い、成果を幅広く発信して、当該分野の進展に寄与してきました。さらに、SiC研究会は、SiC及び関連材料に関する国際会議(International Conference on Silicon Carbide and Related Materials: ICSCRM)の日本開催時の運営母体としても精力的に取り組み、研究者の国際的交流の牽引役としても重要な役割を果たし、当該分野のグローバルな発展に大きく貢献してきました。

近年、電力系統や家電製品、産業用機器・情報通信機器電源、電鉄運転制御システム、カーエレクトロニクス等における電力変換器(インバータ)の高効率化、小型化、高信頼化、及び新規大量導入が省エネの観点から大きく期待され、それらの電力制御を扱う技術分野としてパワーエレクトロニクスが注目されています。その中でキーコンポーネントとなるのが、低損失のスイッチング素子であり、SiCやGaN等を用いたワイドギャップ半導体素子が世界中で研究されています。最近では、スイッチング素子の性能が著しく伸展していることに加え、変換回路集積・統合化、モジュール化するための統合設計技術、回路実装技術の重要性が指摘され、システムとしての電力制御技術の研究も開始されました。我が国でも、省エネ・省資源の推進に加え、再生可能エネルギーの導入・普及促進に向けた機運の高まりを受け、産学官でワイドギャップ半導体高品質ウェハ、デバイス、システムの研究開発が精力的に進められており、学会レベルでも、応用物理学会アカデミックロードマップにおいて、環境・エネルギーの観点からワイドギャップ半導体に関する今後の技術開発が取りまとめられています。

このような状況下、パワーデバイスの高出力化などワイドギャップ半導体の本来の特性を活かすための物性解明、物性制御やワイドギャップ半導体に適した材料デバイスプロセスの基礎研究の重要性があらためて認識されています。SiC研究会においても、パワーエレクトロニクス応用を見据えた結晶、プロセス、デバイス技術に関する議論が盛んに行われるようになり、SiCに加え、GaN、ダイヤモンドを用いたパワーデバイス関連やSiデバイスとのハイブリッド化等に関する講演が増加してきました。そこで、SiC研究会は、これまでの活動を更に拡幅・発展させ、社会のニーズに応えるべく、パワーエレクトロニクスに革新をもたらす半導体及び関連材料の技術的課題の解決を中軸に議論すべきと考え、2013年「先進パワー半導体研究会」へ改組を行い、分科会新設に向けた検討を重ねて準備を進め、今般「先進パワー半導体分科会」を設立いたしました。

本分科会では、SiC及び窒化物、ダイヤモンド等のワイドギャップ半導体研究者のみならず、実用パワーデバイスの中核を担うSi系半導体の研究者等の参加を得、先進パワー半導体に係る幅広い分野の研究者が一堂に会する講演会や個別テーマ毎の討論会等を主催するとともに、チュートリアル等の若手人材育成・支援事業等を適宜実施し、これらの活動を通して、先進パワー半導体の結晶成長、結晶・物性評価、素子化プロセス、素子作製・評価、システム開発等の各分野に横たわる基礎的問題を解決して実用化への道を切り開き、パワーエレクトロニクス分野の進展とこれを活用した超省エネエコ社会の構築、低炭素化社会の実現に大きく寄与することを目指してまいります。

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